特定の企業だけに取引を集中させている場合、取引相手が倒産したりトラブルが発生したりすることで自社も大きな影響を受けるリスクがあります。1社だけに依存するのではなく、複数の企業と取引してリスクを分散することが重要です。
本記事では、リスク管理における取引先分散のメリット・デメリットについて解説します。
1. 取引先の分散とは
取引先の分散とは、自社が取引を行う企業を1社だけに限定せず、複数の企業と取引することです。
取引先には、自社が販売する商品の販売先だけでなく、商品を製造する際に必要な資源の調達先、商品を配送するための物流会社、業務の委託する委託先なども含まれます。
2. 取引先を分散させるメリット
取引先を分散させるメリットは以下の2つです。
- 取引先で発生したリスクの影響が少なくなる
- 競争力が向上する
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
■取引先で発生したリスクの影響が少なくなる
取引先を分散させる1つ目のメリットは、取引先で発生したリスクの影響が少なくなることです。
製造する商品を納品する企業の場合、納品先が倒産してしまうと商品を納品できなくなり、資金を回収できなくなります。納品できないことで商品を保管する場所を新たに確保したり、別の納品先を探したりするといった対応も必要です。納品先が1社だけの場合、連鎖倒産に繋がる可能性もあります。このようなリスクは、納品先だけでなく資源の調達先や商品の配送を依頼する会社、業務の委託先などにも当てはまるリスクです。
一方、複数の取引先と取引している場合、取引先でなんらかのトラブルが発生した場合においても、自社への影響を最小限に抑えることができます。取引先が多いほど、取引先で発生したリスクの影響は少なくなるわけです。
■競争力が向上する
取引先を分散させる2つ目のメリットは、競争力が向上することです。
納品先が1社だけの場合、営業担当者は新規取引先を探す必要がなく、納品先との取引だけに専念することができます。しかし、取引を継続してもらうことだけを意識していると、新たな製品の開発や新規分野の開拓などがおろそかになり、いつのまにか競争力が低下する恐れがあります。
一方、複数の企業と取引するためには、取引先からの要望に応えられるだけの技術力や販売力を身に付けることが必要です。その過程で企業としての競争力が向上するため、事業の存続・拡大に繋がります。
3. 取引先を分散させるデメリット
取引先を分散させるデメリットは以下の2つです。
- スケールメリットが減少する
- 業務効率が低下する
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
■スケールメリットが減少する
取引先を分散させる1つ目のデメリットは、スケールメリットが減少することです。
仕入先が1社だけの場合、複数の取引先から仕入れる場合より仕入れる量が増加するため、仕入単価が低下します。他の企業と取引していないことを理由に、有利な条件を提示されることもあるでしょう。
一方、複数の取引先から仕入れる場合だと、将来的に取引金額が増加する可能性が低く、シェア率が高くなる見込みも少ないため、厳しい条件が提示される場合があります。
■業務効率が低下する
取引先を分散させる2つ目のデメリットは、業務効率が低下することです。
取引先を分散させる場合、取引先が1社の場合と比べて経理や営業担当者の負担が大きくなり、業務効率の低下に繋がります。
4. 取引先を分散させるポイント
取引先を分散させるポイントは以下の2つです。
- 取引先ごとの利益貢献度を確認する
- 取引先のリスク管理を行う
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
■取引先ごとの利益貢献度を確認する
取引先を分散させる1つ目のポイントは、取引先ごとの利益貢献度を確認することです。
取引先ごとの利益貢献度は、相乗積を活用することで確認できます。
相乗積の計算式は以下の通りです。
相乗積(%)=売上高比率×粗利益率
取引先 |
売上高比率 |
粗利益率 |
相乗積 |
---|---|---|---|
取引先A |
50% |
6% |
3% |
取引先B |
30% |
20% |
6% |
取引先C |
20% |
30% |
6% |
上記の例の場合、取引先Bと取引先Cは取引先Aと比べて相乗積が倍になっており、利益貢献度が高いことが分かります。
売上高の割合が高くても利益貢献度が低い場合には、新規取引先を増やす方が利益を確保しやすくなります。
■取引先のリスク管理を行う
取引先を分散させる2つ目のポイントは、取引先や委託先のリスク管理を行うことです。
取引先や委託先のリスク管理においては、自社だけでなく取引先で発生するリスクを管理することも重要となります。不正アクセスやコンプライアンス違反、製品の不備、ハラスメントといった、委託先で発生したトラブルによって自社の経営が悪化したり倒産したりしないようにする必要があるからです。
取引先で発生する主なリスクは以下の通りです。
- コンプライアンスリスク
- レピュテーションリスク
- セキュリティリスク
- 事業継続リスク
- オペレーショナルリスク
上記のリスクが発生する可能性がどのくらいあるのか、発生した場合にどのくらい影響を受けるのかを分析し、リスクが発生した後にどのような対応をすべきなのか事前に計画を立案します。
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5. まとめ
今回は、リスク管理における取引先分散のメリット・デメリットについて解説しました。
仕入や販売、物流、業務委託などを特定の取引先に依存しすぎていると、取引先で倒産や廃業、不正アクセスなどが発生した際に、自社が大きな影響を受けてしまいます。
取引先を分散するメリット・デメリットを理解したうえで、意図的に取引先を分散することも検討してみましょう。
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