「データベースのセキュリティ対策って本当に必要なのだろうか」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
不正アクセスや情報漏えいのリスクを考えると、データベースにおいてもしっかりとしたセキュリティ対策が欠かせません。データベースセキュリティの重要性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、データベースセキュリティの概要から必要性、解決策まで詳しく解説します。
1. データベースセキュリティとは
データベースセキュリティとは、データベース内の情報を不正アクセスや情報漏えいから守るための技術や対策を指します。企業や組織にとって顧客情報や業務データは非常に重要な資産であり、その保護は不可欠です。データベースセキュリティを適切に実施することで、情報漏えいによる信用失墜や法的リスクを回避できます。
データベースは膨大なデータを効率的に管理・検索するためのシステムであり、多くの企業が業務の中核として利用しています。しかし、インターネットを介したアクセスが増加する中で、SQLインジェクションや内部不正などによるデータベースへの不正アクセスが発生すると、甚大な被害を受けるかもしれません。そのため、データベースセキュリティは企業のIT戦略において重要な位置を占めているわけです。
■データベースとは
データベースとは、情報を効率的に管理し、必要なときに迅速にアクセスできるようにするためのシステムを指します。例えば、顧客情報や製品・在庫数、販売履歴などがデータベースに保存されることが一般的です。
データベースにはいくつかの種類がありますが、最も一般的なのは関係データベースです。これは、テーブル形式でデータを管理し、異なるテーブル間の関係を定義することで、複雑な情報を整理します。
また、データベース管理システム(DBMS)というソフトウェアを利用して、データの追加や更新、削除、検索を行います。
企業のデータベースには情報資産が大量に保存されているため、悪意のある第三者から狙われやすく、不正アクセスされると甚大な被害に繋がる恐れがあるわけです。
2. データベースセキュリティが必要な理由
データベースセキュリティが必要な理由は以下の4つです。
- サイバー攻撃の対象になりやすい
- 甚大な被害につながる恐れがある
- 内部不正によるリスクがある
- ゼロトラストセキュリティ対策にもなる
それぞれの理由について詳しく解説します。
■サイバー攻撃の対象になりやすい
データベースセキュリティが必要な1つ目の理由は、サイバー攻撃の対象になりやすいことです。データベースは、企業や組織にとって非常に重要な情報資産が格納されています。攻撃者はデータベースに保存されている顧客情報や機密データを狙い、不正に取得しようとするわけです。
データベースの脆弱性を突いて不正アクセスを試みるサイバー攻撃には、SQLインジェクションやフィッシング、ランサムウェア攻撃などがあります。例えば、SQLインジェクションは、ウェブサイトの入力フォームなどを介して不正なSQL文を実行し、データベースにアクセスする手法です。
サイバー攻撃からデータベースを守るためには、適切なセキュリティ対策が欠かせません。データベースのアクセス権限を最小限に設定し、定期的なセキュリティパッチの適用や監査ログの確認を行うことで、攻撃のリスクを軽減できます。また、データベースを外部から隔離し、内部ネットワークでのみアクセス可能にすることも有効です。
■甚大な被害につながる恐れがある
データベースセキュリティが必要な2つ目の理由は、甚大な被害につながる恐れがあることです。
企業や組織の多くの情報がデータベースに集約されており、不正にアクセスされて情報が盗まれると、企業の信用や業務運営に大きな影響を及ぼします。例えば、顧客情報が漏えいした場合、法的な責任を問われ、巨額の賠償金を支払うことになるかもしれません。また、競合他社に対してビジネス上の機密情報が流出すれば、競争力を失うリスクもあります。
さらに、データベースが攻撃されると、業務が停止することも考えられます。金融機関や医療機関など、データの即時性が求められる業種では、業務の停止は致命的な影響を及ぼします。顧客からの信頼を失い、長期的なビジネスの存続が危ぶまれることもあるでしょう。
このように、データベースが攻撃されると多方面で甚大な被害を被る可能性があるため、データベースセキュリティの強化は企業の存続において必要とされているわけです。
■内部不正によるリスクがある
データベースセキュリティが必要な3つ目の理由は、内部不正によるリスクがあることです。
データベースに対する不正アクセスは、外部からの攻撃だけでなく、内部の従業員によっても引き起こされることがあります。実際、従業員が意図的に機密情報を流出させるケースは少なくありません。アクセス権限の管理が不十分な場合、重要なデータが不正に利用されるリスクが高まります。
内部不正を防ぐためには、アクセス権限の適切な管理が不可欠です。各従業員に必要最低限の権限のみを付与し、不必要なデータへのアクセスを制限することが効果的です。また、定期的な監査を行い、アクセス履歴を確認することで、不正行為を早期に発見することができます。さらに、従業員へのセキュリティ教育も重要です。セキュリティ意識を高めることで、内部不正のリスクを大幅に減少させることができるでしょう。
■ゼロトラストセキュリティ対策にもなる
データベースセキュリティが必要な4つ目の理由は、ゼロトラストセキュリティ対策にもなることです。
ゼロトラストとは、全てのアクセスを疑い、信頼しないというセキュリティモデルです。外部からの攻撃だけでなく、内部からの脅威にも対応するためにゼロトラストが開発されました。
ゼロトラストの考え方では、データベースへのアクセスも厳しく制限されます。具体的には、アクセスする際に多要素認証を求めたり、ユーザーの行動を監視して不正アクセスを検出したりする仕組みが導入されます。仮に認証情報が漏えいしたとしても、不正アクセスを未然に防ぐことが可能です。
また、ゼロトラストセキュリティは、データベースの暗号化とも密接に関連しています。データが暗号化されていれば、たとえデータベースが攻撃されたとしても、情報が簡単に流出するリスクを低減できます。
ゼロトラストは、データベースセキュリティを強化し、企業の情報資産を包括的に守るために不可欠なアプローチです。ゼロトラストセキュリティを導入することで、企業はより安全なデータ管理を実現できます。
3. データベースにおけるセキュリティ対策
データベースにおけるセキュリティ対策は以下の5つです。
- 暗号化技術の活用
- 多要素認証の導入
- セキュリティポリシーの策定
- アプリケーションの防御
- アクセス制御の強化
それぞれの対策について詳しく解説します。
■暗号化技術の活用
データを暗号化することで、万が一データが不正に取得された場合でも、内容を読み取ることができなくなり、情報漏えいのリスクを大幅に低減できます。
暗号化では、AES(Advanced Encryption Standard)やRSA(Rivest-Shamir-Adleman)といったアルゴリズムを使ってデータを変換する方法が用いられます。暗号化により、データは暗号解読用の鍵を持つ者だけが復号できる形になります。
ただし、暗号化だけに頼るのは危険です。鍵が漏えいすると暗号化の効果が失われるため、暗号解読用の鍵を慎重に管理する必要があります。
■多要素認証の導入
多要素認証とは、ユーザーがシステムにアクセスする際に、複数の確認手段を用いて本人確認を行う仕組みのことです。近年のサイバー攻撃は巧妙化しており、パスワードだけでは防ぎきれないケースも増えています。このような背景から、セキュリティ対策のひとつとして多要素認証を導入する企業が増加しているわけです。一般的には、パスワードに加えて、スマートフォンに送信される確認コードや指紋認証などを組み合わせます。
多要素認証の導入により、万が一パスワードが漏えいした場合でも、他の確認手段が必要となるため、不正アクセスのリスクを大幅に減少させることが可能です。
導入に際しては、ユーザーの利便性を考慮する必要があります。過度に複雑な認証手段はユーザーの負担となり、結果としてセキュリティ意識の低下を招く恐れがあるため、直感的で使いやすい認証手段を選ぶことが重要です。
■セキュリティポリシーの策定
セキュリティポリシーとは、情報資産をどのように保護し、管理するかを定めたルールやガイドラインのことを指します。セキュリティポリシーの策定により、データの機密性・完全性・可用性が確保でき、リスクを最小限に抑えることが可能です。
セキュリティポリシーを策定する際には、情報資産の重要性やリスクを評価することが欠かせません。どのデータが最も重要か、どのようなリスクが存在するのかを明確にすることで、具体的な対策を講じることができます。次に、アクセス権限の設定を明確にし、誰がどのデータにアクセスできるかを厳格に管理する必要があります。
また、セキュリティポリシーは一度策定したら終わりではありません。サイバー攻撃の進化や新たな脅威に対応するために、定期的な見直しと更新が求められます。
■アプリケーションの防御
アプリケーションを通じてデータベースにアクセスする場合、アプリケーションのセキュリティが脆弱であれば、攻撃者にとって格好の標的となります。そのため、アプリケーションのセキュリティ対策を強化する必要があります。
アプリケーションのセキュリティ対策では、アプリケーションのコードレビューを定期的に行い、脆弱性を早期に発見し修正することが重要です。特にSQLインジェクションなどの攻撃手法はアプリケーションのセキュリティホールを突くため、コードの安全性を確保することが求められます。また、アプリケーションレベルでの入力検証を徹底し、不正なデータがデータベースに送信されないようにすることも効果的です。
さらに、アプリケーションのアップデートを怠らないことも重要です。セキュリティパッチが提供された際には速やかに適用し、最新のセキュリティ対策を維持しましょう。
■アクセス制御の強化
誰がデータベースにアクセスできるかを厳密に管理することで、内部からの不正アクセスを防ぐことが可能です。具体的には、ユーザーごとに適切な権限を設定し、必要以上のアクセスを制限することが求められます。
定期的なアクセス権の見直しを行うことも重要です。役職や業務内容が変わった場合には、その都度権限を見直し、適切なアクセス権を付与することで、セキュリティを維持することができます。
また、アクセスログの監視も効果的です。どのユーザーがいつ、どのデータにアクセスしたのかを記録し、異常なアクセスがないかを確認することで、問題が発生した際の迅速な対応が可能になります。
4. データベースセキュリティを行う際の注意点
データベースセキュリティを行う際の注意点は以下の2つです。
- 予防的統制と発見的統制のバランス
- 費用対効果を考慮した対策
それぞれの注意点について詳しく解説します。
■予防的統制と発見的統制のバランス
データベースセキュリティを強化する際、予防的統制と発見的統制のバランスを取ることが重要です。予防的統制は、データベースへの不正アクセスを未然に防ぐための対策を指します。具体的には、パスワードポリシーの厳格化やアクセス権限の適切な設定などが該当します。一方、発見的統制は、すでに発生している不正行為を検知し、迅速に対応することです。具体的には、ログの監視や不正アクセスのアラートシステムなどが該当します。
完全なセキュリティは存在せず、常に新しい脅威が生まれているため、予防的統制と発見的統制のバランスを意識し、データベースセキュリティの強化を図ることが重要です。
■費用対効果を考慮した対策
セキュリティ対策には多くの選択肢がありますが、費用対効果を無視して導入するのは現実的ではありません。限られた予算で運営している企業にとっては、どの対策を優先すべきか頭を悩ませることもあるでしょう。
重要なのは、自社のデータベースがどのような脅威にさらされているのかを把握することです。例えば、内部不正のリスクを考慮するなら、アクセス制御を強化することで、特定のデータにアクセスできる人を制限し、不正行為を未然に防ぎます。また、サイバー攻撃によるデータ漏えいリスクが高い場合、暗号化技術や多要素認証の導入が効果的です。
さらに、コストを抑えつつ効果的な対策を講じるためには、無料または低コストで利用できるセキュリティソフトやサービスを活用するのもよいでしょう。オープンソースのセキュリティツールなどは、費用を抑えつつ必要な機能を提供してくれます。
結論としては、自社のニーズに合わせたセキュリティ対策を選び、定期的に見直すことが重要です。限られた予算でも効果的なセキュリティを実現するために、慎重な選択と計画的な運用を心がけましょう。
5. まとめ
今回は、データベースセキュリティの概要から必要性、解決策まで詳しく解説しました。
データベースセキュリティは、情報漏えいや不正アクセスから顧客情報や機密データを守るために欠かせない要素です。
本記事で解説したデータベースセキュリティ対策や注意点を参考に、現状のセキュリティ対策を見直し、必要な改善点を明確にすることから始めましょう。
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