インシデントとヒヤリハットの違いがよく分からないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。どちらも職場での安全対策を考えるうえで重要な概念ですが、その違いや具体的な事例を知ることで、より効果的な対策を講じることができます
インシデントとは、事故には至らなかったものの、事故につながる可能性のあった出来事を指します。一方、ヒヤリハットは、実際に事故にはならなかったけれども、ヒヤリとしたりハッとしたりした瞬間を指します。これらをしっかりと理解し、職場での安全意識を高めることで、事故を未然に防ぐための第一歩となるわけです。
本記事では、インシデントとヒヤリハットの違いについて、具体的な事例と効果的な安全対策の方法を解説します。
1. インシデントとヒヤリハットの違い
インシデントとヒヤリハットは、どちらも事故やトラブルを未然に防ぐための重要な概念です。インシデントは、実際に発生した問題で、業務や安全に影響を及ぼす可能性がある事象を指します。一方、ヒヤリハットはもう少しで事故になりかけた状況を指し、実際には問題が発生しなかったものの、リスクが存在したことを示します。例えば、病院では患者の投薬ミスがインシデントに該当し、ミスを未然に防いだ状況がヒヤリハットです。
インシデントは、具体的な損害や影響が発生した事象であり、報告書の作成や対策が求められます。一方、ヒヤリハットは、問題が未然に防がれたケースですが、潜在的なリスクを明らかにするために報告書の作成が推奨されています。
また、インシデントとヒヤリハットの報告書には、記載内容や目的に明確な違いがあります。インシデント報告書は、実際に発生した事故や問題を詳細に記録し、原因究明や再発防止策を講じるために作成されます。一方、ヒヤリハット報告書は、事故には至らなかったものの、潜在的に危険があった状況を記録します。
報告書のフォーマットも異なることが多く、インシデントは詳細な情報を求められるのに対し、ヒヤリハットは簡易的な記述で済む場合があります。
2. 医療現場におけるヒヤリハットとインシデントの違い
医療現場では、ヒヤリハットとインシデントの報告が安全対策の基盤となります。ヒヤリハットの報告は、潜在的なリスクを早期に発見し、事故を未然に防ぐために重要です。インシデントの報告は、事故の原因を分析し、再発防止策を講じるために不可欠です。これらの報告を通じて、医療機関全体での安全文化の向上が期待されます。
例えば、薬の投与ミスがヒヤリハットとして報告されることで、投薬手順の見直しが行われ、実際のインシデントを防ぐことができます。
■医療現場におけるヒヤリハット事例
医療現場におけるヒヤリハットは、患者の安全を確保するために非常に重要な概念です。これらは、重大な事故には至らなかったものの、潜在的なリスクを示す出来事を指します。医療従事者が日常業務で遭遇する「ヒヤリ」とした瞬間を記録し、共有することで、同様の事例が再発しないよう対策を講じます。
医療現場におけるヒヤリハット事例① PCAポンプを使用せずに持続皮下注射を行った
受け持ち時主治医からオキシコドンの投与指示があったが、持続皮下注射にはPCAポンプを使用しなければならないことが発覚。オキシコドンの時間当たりの投与量は変わっていなかったため、患者への影響はなかった。
医療現場におけるヒヤリハット事例② 心電図モニター・SpO2モニターの装着を忘れた
看護指示に「心電図モニター確認」の指示があったが、詰所にモニター画面に名前がないことのみ確認し、指示簿を確認しなかった。
指示簿に「心電図モニター、SpO2モニター装着」の指示があることに気付き、すぐに心電図モニター、SpO2モニターを装着した。
医療現場におけるヒヤリハット報告は、医療機関内でのコミュニケーションを促進し、スタッフ間の協力を強化します。結果として、患者の安全性が向上し、医療現場全体のリスク管理が強化されるのです。このように、ヒヤリハットの報告と分析は、医療現場の安全文化を支える柱となっています。
参考資料:事例検索「医療事故情報収集等事業」
■医療現場におけるインシデント事例
医療現場におけるインシデントは、患者の安全を脅かす可能性のある出来事として、医療従事者が特に注意を払うべき重要な要素です。具体的には、患者に直接的な被害が及ぶ前に発見された問題を指します。
医療現場におけるインシデント事例
- トプシムスプレーLの処方に、トプシムローションで調剤し、交付する。
- 配膳車を押していて、携帯酸素で歩行中の患者に配膳車があたった。
- 食事後の与薬で他の患者の配薬容器と取り間違い与薬してしまった。
これに対してヒヤリハットは、実際には被害が発生しなかったものの、発生し得た危険な状況を指し、事前にリスクを未然に防ぐための重要な指標となります。医療現場では、これらの報告を通じて、リスク管理の体制を強化し、再発防止策を講じることが求められています。特に報告書の作成においては、事実を正確に記録し、問題点を明確にすることで、組織全体での改善に繋げることが可能です。
参考資料:重要事例集計結果「厚生労働省」
3. 介護現場でのヒヤリハットとインシデントの違い
介護現場では、ヒヤリハットとインシデントの違いを理解し、適切に対応することが重要です。違いを正しく理解することで、介護の質を向上させ、利用者の安全を確保することができます。
例えば、介護施設で利用者が転倒しそうになったものの、実際には転倒しなかった場合はヒヤリハットとして報告されます。しかし、実際に転倒した場合はインシデントです。
■介護現場でのヒヤリハット事例
介護現場でのヒヤリハットは、日常的に発生し得るインシデントの予兆として重視されています。介護現場では、高齢者や身体の不自由な方が多く、ちょっとしたミスが重大な事故につながる可能性があります。そのため、ヒヤリハットを見逃さずに記録し、報告することが求められます。
介護現場でのヒヤリハット事例
- 車いすが段差に引っかかり転落しそうになった
- 脱衣所で転倒しかけた
- 他の入居者の薬を間違えて飲ませかけた
これらの事例を報告し、職員間で共有することで、再発防止策を講じることができます。また、ヒヤリハット報告書は、職員の意識向上にもつながり、現場全体の安全性が高まります。介護施設では、定期的な研修会やミーティングを通じて、ヒヤリハットの重要性を再確認し、具体的な対応策を検討することが不可欠です。こうした取り組みが、利用者の安全を守るための第一歩となります。
■介護現場でのインシデント事例
介護現場でのインシデントは、施設利用者の安全を脅かす出来事として注目されています。
介護現場でのインシデント事例
- ご利用者の後ろから声をかけたら転倒してしまった
- 食事介助中、一旦落ち着いたむせ込みが、激しくなった
- ご利用者が、送迎車のステップを踏みはずし転倒した
これらはヒヤリハットと異なり、実際に事故や健康被害が発生している点が特徴です。発生したインシデントについては、速やかに報告書を作成し、事例を共有する必要があります。
4. IT分野におけるヒヤリハットとインシデントの違い
IT分野におけるヒヤリハットとインシデントは、どちらも企業や組織の安全性を維持するために重要な概念です。
IT分野では、ヒヤリハットを見逃さずに報告し、分析することで、インシデントやアクシデントに発展することを未然に防ぐことができます。なぜなら、ヒヤリハットは重大なインシデントに発展する前兆であることが多いためです。
例えば、メールの誤送信や不審なアクセスの試みなどがヒヤリハットとして報告されることがあります。これらの事例が報告されることで、適切なセキュリティ対策の必要性が検討されるようになるわけです。
ヒヤリハットとインシデントを積極的に管理することで、潜在的なリスクを早期に発見し、未然に防ぐことが可能となります。また、組織内での意識向上や教育も、リスク軽減に寄与します。
■IT分野におけるヒヤリハット事例
IT分野におけるヒヤリハットは、重大なインシデントには至らないものの、潜在的なリスクを示す重要な警告です。これらの事例を把握し、対策を講じることで、情報漏えいやシステム障害の未然防止につながります。例えば、パスワードの設定ミスや不適切なファイル共有、未遂に終わったフィッシング攻撃の検知などがヒヤリハットに該当します。これらを報告し、改善策を講じることが、情報セキュリティの強化に欠かせません。組織内でのヒヤリハットの共有は、セキュリティ意識の向上にも寄与します。日常業務の中で見過ごされがちな小さなミスを見逃さず、継続的なセキュリティ教育とトレーニングを通じて、組織全体のリスク管理能力を高めることが求められます。
■IT分野におけるインシデント事例
IT分野におけるインシデントは、システムの脆弱性を突かれた不正アクセスやデータの漏えい、サプライチェーン攻撃といった具体的な事象を指します。これらのインシデントは、企業の信頼を損ない、法的な責任を問われることもあります。そのため、早期発見と対応が求められます。
5. まとめ
安全対策を考える上で、インシデントやヒヤリハットの違いを理解することは非常に重要です。本記事で紹介した事例を参考に、職場での安全意識をさらに高め、実際の対策に役立てください。
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