インシデント対応とは?効率的なインシデント対応のポイントを解説

発生したインシデントに対して適切に対応することで、企業や組織の信頼性を守り、被害を最小限に抑えることができます。インシデント対応のポイントを押さえておくことで、いざという時に慌てずに行動することが可能です。

 

本記事では、インシデント対応の重要性やプロセス、効率的なインシデント対応のポイントについて解説します。

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1. インシデント対応とは

インシデント対応とは、企業や組織が日常的に直面する様々な問題や障害に対して迅速かつ効果的に対応するプロセスです。特にITシステムやセキュリティの分野では、業務の中断を最小限に抑え、事業の継続性を確保するためにインシデント対応の重要性が増加しています。

インシデント対応が重要なのは、ビジネスに与える影響を最小限に抑えるためです。インシデントが長引くと、顧客の信頼を失ったり、経済的な損失を被ったりする可能性があります。また、適切なインシデント対応を行うことで、同様の問題が再発することを防ぎ、組織全体のリスク管理能力を向上させることができます。

例えば、システム障害が発生した際に、迅速に原因を特定し、影響範囲を限定することで、業務への影響を最小限に抑えることが可能です。また、インシデント対応のプロセスを通じて得た教訓を活かし、再発防止策を講じることで、組織全体のセキュリティ強化にもつながります。

 

■そもそもインシデントとは

インシデントとは、システムやサービスの通常の運用を妨げる予期せぬ出来事のことを指します。具体的には、システムの障害やセキュリティの侵害、データの損失などがこれに該当します。これらのインシデントは、ビジネスの継続性に直接影響を及ぼすため、迅速かつ適切な対応が必要です。

インシデントは発生するタイミングや影響の範囲が予測できないため、多くの企業にとってリスク管理の一環として重視されています。特にITシステムにおけるインシデントは業務の効率を大きく左右するため、事前の準備と対応が不可欠です。インシデントが発生した際には、問題の特定と影響範囲の評価を迅速に行い、適切な対策を講じることが求められます。

また、インシデントの種類や原因は多岐にわたるため、インシデントの特性を理解し、適切な対応策を準備しておくことが重要です。インシデント対応のプロセスを整備することで、被害を最小限に抑え、迅速な復旧を実現することができます。

 

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■インシデント対応の重要性

インシデント対応は、ビジネスの継続性と信頼性を維持するために欠かせません。なぜなら、インシデントが放置されると、システムの停止やデータの損失、さらには顧客の信頼を失う可能性があるからです。

 

インシデント対応の重要性が高まっている背景には、デジタル化の進展があります。企業の多くがITシステムに依存しており、システムの安定性が企業活動の根幹を支えています。インシデント対応が遅れると、業務の停止や顧客への影響が避けられません。特に、顧客情報が関わるセキュリティインシデントでは、法的な問題に発展することもあります。

 

インシデント対応を効果的に行うためには、事前の準備と組織的な対応が不可欠です。具体的には、インシデント発生時の対応手順を明確にし、関係者間のコミュニケーションを円滑にする仕組みが求められます。また、定期的な訓練や見直しを行うことで、インシデントへの対応力を向上させることが可能です。

 

■インシデント対応とインシデント管理の違い

インシデント対応とインシデント管理は混同されがちですが、それぞれ異なる役割を持っています。

インシデント対応とは、システムやサービスに問題が発生した際に、その問題を迅速に解決するための具体的な行動や手続きを指します。迅速な初動対応が求められ、影響を最小限に抑えるための即時的な判断が重要です。

一方、インシデント管理は、インシデントの発生を未然に防ぐためのプロセス全体を指し、計画的な予防策や改善策の策定を含みます。発生したインシデントの記録や分析を行い、再発防止策を講じることに焦点を当てることで、組織全体でのリスクを低減し、長期的な視点での安全性を確保します。

インシデント対応が「その場の火消し役」であるのに対し、インシデント管理は「未来の火事を防ぐ役割」と言えるでしょう。

 

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2. インシデントの種類と特徴

インシデントの種類と特徴を理解することは、適切な対応策を講じるために欠かせません。インシデントには様々な種類があり、それぞれの特徴を把握することで、事前の予防策や迅速な対応が可能になります。特にITシステムやセキュリティに関するインシデントは企業の業務継続に直結するため、具体的な事例を知ることが重要です。

 

インシデントの種類は多岐にわたりますが、大きく分けるとITシステムに関連するものとセキュリティに関連するものがあります。ITシステムにおけるインシデントには、システム障害やデータ損失などが含まれ、一方でセキュリティインシデントには、情報漏えいや不正アクセスなどが挙げられます。これらのインシデントは、企業の信頼性や業務効率に大きな影響を与えるため、各インシデントの特性を理解し、適切な対応を行うことが求められます。

以下で詳しく解説していきます。

 

■ITシステムにおけるインシデント

ITシステムにおけるインシデントは多岐にわたりますが、主にシステム障害、ネットワーク障害、データベース障害などが挙げられます。システム障害はサーバーやアプリケーションの不具合によって発生し、サービスが正常に提供できなくなる状況を指します。ネットワーク障害は、通信回線の断絶や遅延によって、データの送受信が困難になる問題です。データベース障害は、データの破損やアクセス不能が原因で、業務に必要な情報が取得できなくなる状況を指します。

このようなITシステムにおけるインシデントの影響を避けるためには、システム監視ツールを用いて異常を早期に検知し、適切な部署が迅速に対応する体制を整えることが重要です。さらに、定期的なバックアップや冗長化を行うことで、インシデント発生時の影響を最小限に抑えることができます。

 

■セキュリティインシデント

セキュリティインシデントとは、情報システムやネットワークに対する不正なアクセスや攻撃、データの漏えい、サービスの妨害などを指します。これらのインシデントは企業や組織の情報資産に直接的な影響を与えるため、迅速かつ適切な対応が求められます。具体的な種類としては、フィッシング詐欺やマルウェア感染、DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)、内部不正などがあります。

これらのセキュリティインシデントに対処するためには、事前の予防策と迅速な対応が欠かせません。インシデント発生時には、被害を最小限に抑えるための体制を整えておくことが重要です。

 

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3. インシデント対応の課題

インシデント対応の課題として挙げられるのは、初動対応の遅れです。インシデントが発生した際、適切な担当者が迅速に対応できないと、被害が拡大する可能性があります。例えば、夜間や休日にインシデントが起きた場合、対応が遅れることがあるかもしれません。次に、情報共有の不足もインシデント対応の課題です。関係者間での情報がスムーズに伝わらないと、対応が遅れたり、誤った判断が下されるリスクがあります。

 

さらに、対応チームのスキル不足も見逃せない課題のひとつです。インシデント対応には専門的な知識が求められるため、チームのスキルが不足していると対応が不十分になる恐れがあります。また、対応マニュアルの不備もインシデント対応の課題です。マニュアルが具体的でない場合、現場での対応が混乱することがあります。

 

これらの課題を解決するためには、迅速な初動対応を可能にする体制を整えることが重要です。例えば、24時間体制のサポートを設けることで、いつでも対応できる環境を整えることができます。また、情報共有のためには、専用のコミュニケーションツールを活用することが効果的です。スキル不足については、定期的な研修やトレーニングを通じて、チームの能力を向上させることができるでしょう。

このように、インシデント対応の課題を具体的に把握することで、適切な対策を講じることができます。

 

 

4. インシデント対応のプロセス

■インシデントの検知と初動対応

インシデントの検知と初動対応は、インシデント対応のプロセスにおいて最も重要なステップです。

ネットワークの遅延やデータの不整合などに備えるためには、監視ツールやログ分析を活用して異常を検知する仕組みを整える必要があります。

初動対応では、インシデントの影響範囲を把握し、関係者への通知を行います。その後、問題の原因を特定し、可能な限り早急に暫定的な対策を講じます。この際、対応の優先順位を決定するためのトリアージが重要になります。トリアージとは、インシデントの緊急度や影響度に基づいて対応の優先度を決めるプロセスです。

初動対応の成功は、後続の対応や復旧作業の効率化に直結します。したがって、事前に対応手順を明確にし、関係者間で共有しておくことが重要です。これにより、インシデント発生時の混乱を最小限に抑え、迅速な対応が可能になります。

 

■トリアージとリソースの動員

トリアージとは、インシデントの優先順位を決定し、限られたリソースを効果的に配分することを指します。トリアージにより緊急度の高い問題から順に対応でき、ビジネスへの影響を最小限に抑えることが可能です。

次に、トリアージ結果に基づき、適切な人材や技術を迅速に動員します。例えば、技術チームは技術的な問題解決に集中し、広報チームは情報発信に専念することで、効率的な対応が可能となります。

 

■対応後の学習と予防策

インシデント対応のプロセスにおいては、対応後の学習と予防策も欠かせません。なぜなら、インシデントが発生した後の対応が、同様の問題の再発を防ぐ鍵となるからです。インシデント対応後には必ず振り返りを行い、何が原因でインシデントが発生したのかを詳細に分析します。このプロセスは、単なる問題の後始末ではなく、組織全体の知識を深める機会と捉えるべきです。

次に、分析結果を基に、具体的な予防策を策定します。例えば、システムの脆弱性が原因であれば、セキュリティパッチの適用やシステムのアップデートを迅速に行うことが必要です。また、人的ミスが原因の場合には、社員教育の強化や作業手順の見直しが求められます。

最後に、これらの情報を組織全体で共有することが重要です。社内での情報共有の仕組みを整え、インシデントの教訓を活かした改善策を全員で理解し実践することで、組織全体の対応力が向上します。

 

 

5. 効率的なインシデント対応のポイント

インシデント対応のポイントは以下の3つです。

  • 対応部署の明確化と役割分担
  • インシデント管理ツールの活用
  • セキュリティポリシーの策定

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

 

■対応部署の明確化と役割分担

インシデント対応の1つ目のポイントは、対応部署の明確化と役割分担です。

インシデント発生時に誰が何をするのかを明確にすることで、迅速な対応が可能になります。例えば、IT部門がシステムの復旧を担当し、広報部門が外部への情報発信を行うといった役割分担を事前に決めておくことが重要です。

また、役割分担をする際には、各部署の専門性やリソースを考慮することが求められます。例えば、セキュリティインシデントの場合、セキュリティ専門の部署が中心となり、他の部署と連携して対応することが効果的でしょう。こうした役割分担により、各部署が自分の役割に集中でき、全体としての対応力が向上します。

 

■インシデント管理ツールの活用

インシデント対応の2つ目のポイントは、インシデント管理ツールの活用です。

インシデント管理ツールは、インシデントの発生から解決までのプロセスを一元管理し、迅速な対応を可能にします。具体的には、インシデントの記録、進捗の追跡、関係者への通知など、多くの機能を備えています。インシデント管理ツールの選定においては、自社の業務プロセスや規模に適したものを選ぶことが重要です。

 

■セキュリティポリシーの策定

インシデント対応の3つ目のポイントは、セキュリティポリシーの策定です。

セキュリティポリシーとは、組織が情報セキュリティを維持するための基本方針を示すもので、全社員が従うべきルールを明文化したものを指します。具体的には、セキュリティポリシーには情報の取り扱い方、アクセス権限の管理、データの保護方法などが含まれます。セキュリティポリシーを策定することで統一された基準に基づいて行動できるため、インシデント発生時に迅速かつ適切な対応ができるわけです。

 

 

6. まとめ

今回は、インシデント対応の重要性やプロセス、効率的なインシデント対応のポイントについて解説しました。

インシデント対応は、企業や組織の安定運営に欠かせない重要なプロセスです。適切な対応を行うことで、被害を最小限に抑え、迅速な復旧を可能にします。本記事で解説した効率的なインシデント対応のポイントを参考に、強固なインシデント対応体制を築きましょう。

 

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