個人情報保護研修とは?目的や実施内容について解説

「個人情報保護研修は本当に必要なのか」と感じている方もいるのではないでしょうか。

個人情報の管理がますます重要視される現代において、従業員が適切な知識とスキルを身につけていることは企業として欠かせない要素です。

従業員に個人情報保護研修を実施することで、自社のビジネスにおける情報管理の質を向上させ、情報漏えいリスクを未然に防ぎ、信頼性を高めることができます。

本記事では、個人情報保護研修の目的や実施内容について詳しく解説します。

1. 個人情報保護研修とは

個人情報保護研修とは、企業や組織が個人情報を適切に取り扱うための知識とスキルを従業員に提供する研修です。個人情報の定義や関連する法律、マイナンバー法の理解を深め、個人情報漏えいのリスクを低減することを目的としています。個人情報の漏えいは、企業の信頼を損ない、法的な責任を追及されることもあるため、研修を通じて従業員の意識を高めることは非常に重要です。

個人情報保護研修が必要とされる理由は、情報漏えいによる企業への影響が甚大だからです。情報漏えいが発生すると、顧客の信頼を失うだけでなく、企業の評判が大きく損なわれる可能性があります。さらに、法的な制裁や罰金が科されることもあり、企業経営に大きなダメージを与えることになります。そのため、従業員が個人情報保護に関する正しい知識を持ち、日常業務で適切に対応できるようにすることが重要です。

 

■個人情報とは

個人情報とは、単独または他の情報と組み合わせることで、特定の個人を識別できる情報です。具体的には、氏名や住所、生年月日、電話番号、メールアドレスなどが該当します。

個人情報の保護は、個人のプライバシーを守るために非常に重要です。もし個人情報が不正に利用されれば、詐欺被害やプライバシーの侵害といった深刻な問題が発生する可能性があります。そのため、企業は個人情報の取り扱いに細心の注意を払う必要があるわけです。

 

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■個人情報保護法とは

個人情報保護法とは、個人情報の適切な取り扱いを確保するために定められた法律で、企業が個人情報を扱う際の基本的なルールを規定しています。2003年に施行され、以降何度か改正が行われています。個人情報保護法の目的は、個人の権利や利益を保護しつつ、個人情報の有効な活用を促進することにあります。

個人情報保護法で規定されているのは、個人情報の取得や利用、提供、管理、開示、訂正、利用停止などです。例えば、企業が個人情報を取得する際には、その利用目的を明示しなければならないという規定があります。また、個人情報を第三者に提供する際には、原則として本人の同意が必要です。さらに、個人情報を適切に管理するための安全管理措置を講じることが求められています。

 

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■マイナンバー法とは

マイナンバー法とは、正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といい、国民一人ひとりに割り当てられる12桁の番号、いわゆる「マイナンバー」を管理するための法律です。マイナンバーは、社会保障や税、災害対策の分野で効率的な行政手続を実現するために利用されます。個人情報の適切な管理と保護を目的としており、マイナンバーの漏えいを防ぐための厳格な規制が設けられています。

マイナンバー法が制定された背景には、行政の効率化と国民の利便性向上があります。行政サービスを受ける際に必要な手続きが簡略化され、時間や手間を大幅に削減することが可能です。

具体的には、マイナンバーの収集や保管、利用、提供に関するガイドラインが設けられており、企業や行政機関がマイナンバーを取り扱う際には、十分な安全管理措置を講じることが求められています。

 

 

2. 個人情報保護研修の目的

個人情報保護研修の目的は以下の3つです。

  • 情報漏えいリスクの低減
  • 個人情報保護に対する意識の向上
  • 個人情報に関する知識・スキルの向上

それぞれの目的について詳しく解説します。

 

■情報漏えいリスクの低減

個人情報保護研修の1つ目の目的は、情報漏えいリスクの低減です。

漏えいが発生すると、顧客や取引先の信頼を失うだけでなく、法的な責任を問われる可能性もあります。たとえば、メールの誤送信やパスワードの管理不備、社内システムのセキュリティホールなど、さまざまな要因が漏えいの引き金となります。

情報漏えいのリスクを低減するためには、従業員一人ひとりが個人情報の重要性を理解し、適切な取り扱い方法を身につけることが重要です。例えば、パスワードの設定や管理、メールの送信時の注意点など、日常的に行う作業でも注意が欠かせません。また、情報を取り扱う際の基本的なルールを再確認し、定期的に見直すことも重要です。

さらに、情報漏えいが発生した場合の対応方法を事前に決めておくことで、被害を最小限に抑えることができます。具体的には、漏えいが発覚した際の報告ルートや、関係者への連絡方法を明確にしておくことが挙げられます。こうした準備をしておくことで、万が一の事態にも迅速に対応できる体制を整えることが可能です。

個人情報保護研修を通じて情報漏えいリスクを低減するための具体的な対策を学び、実践することで、企業の信用を守り、安心して業務に取り組むことができる環境を構築できます。

 

■個人情報保護に対する意識の向上

個人情報保護研修の2つ目の目的は、個人情報保護に対する意識の向上です。

従業員一人ひとりの意識が高まることで、組織全体として個人情報の適切な取り扱いが促進されます。すべての従業員が情報漏えいのリスクを理解し、日々の業務で注意を払うことが重要です。

個人情報保護研修で具体的な事例を通じて情報漏えいがどのように発生するのか、どのような影響があるのかを学ぶことで、従業員の意識を向上させることができます。

 

■個人情報に関する知識・スキルの向上

個人情報保護研修の3つ目の目的は、個人情報に関する知識・スキルの向上です。

適切な知識とスキルがなければ、個人情報の取り扱いにおいて誤った判断をしてしまうかもしれません。 個人情報保護研修で個人情報とは何か、どのように適切に取り扱うべきかを学ぶことで、法令に基づいた適切な対応ができるようになります。

また、個人情報漏えいのリスクを理解し、どのように防ぐかを学ぶことも重要です。情報漏えいが発生すると、企業の信頼性が損なわれるだけでなく、法的な責任を問われることもあります。そのため、日常業務での注意点や情報漏えいが発生した場合の対応方法についても知識を深める必要があります。

 

 

3. 個人情報保護研修の実施内容

個人情報保護研修の主な実施内容は以下の4つです。

  • 個人情報保護法の基礎知識
  • 個人情報漏えいの原因
  • 個人情報漏えい時の対応方法
  • 個人情報漏えいに関する事例の確認

それぞれの内容について詳しく解説します。

 

■個人情報保護法の基礎知識

個人情報保護法は、個人情報を取り扱う事業者が守るべき基本的なルールを定めており、個人の権利を保護することを目指しています。2003年に制定され、2017年には改正が行われました。改正により、個人情報の定義が明確化され、個人情報データベースの取り扱いについても詳細が追加されています。

個人情報保護法で規定されている内容を理解することは、情報を適切に管理し、漏えいリスクを減少させるために重要です。法令に基づいた取り扱いを心掛けることで、組織全体の信頼性を高めることができるでしょう。

 

■個人情報漏えいの原因

個人情報漏えいの原因は多岐にわたりますが、主にヒューマンエラー、技術的な脆弱性、不正アクセスの3つが挙げられます。ヒューマンエラーとは、従業員の不注意や誤操作によって情報が外部に漏れることです。例えば、誤ってメールで顧客情報を他の顧客に送信してしまうケースが該当します。

次に、技術的な脆弱性とは、システムやソフトウェアのセキュリティホールを指します。これを悪用されると、外部からの攻撃によって情報が盗まれるリスクが高まります。特に、古いバージョンのソフトウェアを使い続けている場合、アップデートを怠ると脆弱性が放置されることになります。

最後に、不正アクセスは、悪意のある第三者が意図的に情報を盗む行為です。これは、内部不正によるものと外部からの攻撃の両方が考えられます。パスワードの使い回しや簡単なパスワードの利用は、不正アクセスのリスクを高めます。

個人情報保護研修でこれらの原因を理解し、対策を講じることで、個人情報漏えいのリスクを低減することができます。

 

■個人情報漏えい時の対応方法

個人情報の漏えいが発生した場合には、事実確認を行い、どのような情報がどの程度漏えいしたのかを迅速かつ適切に把握することが重要です。

次に、社内の関係部門や上司に速やかに報告し、対応策を協議します。この際、情報の流出が第三者に影響を及ぼす可能性がある場合は、影響を受ける可能性のある本人に通知し、適切な対応を取ることが必要です。また、個人情報保護委員会への報告義務もあるため、速やかに必要な手続きを行いましょう。

さらに、漏えいの原因を究明し、情報管理体制の見直しやシステムのセキュリティ強化、従業員への再教育といった再発防止策を講じることも欠かせません。

 

■個人情報漏えいに関する事例の確認

個人情報漏えいに関する事例の確認は、個人情報保護研修において非常に重要なステップです。具体的な事例を通じて、どのような状況で情報漏えいが発生するのかを理解することができます。例えば、過去には企業の従業員が誤ってメールで顧客情報を外部に送信してしまったケースや、USBメモリを紛失し、その中に保存されていた個人情報が漏えいした事例があります。

個人情報保護研修で個人情報漏えいに関する事例を確認することで、従業員は情報漏えいがどのように起こるかを具体的にイメージでき、リスクを回避するための意識が高まります。また、事例を分析することで、同じ過ちを繰り返さないための教訓を得ることができます。

 

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4. まとめ

今回は、個人情報保護研修の目的や実施内容について詳しく解説しました。

情報漏えいのリスクが増大する中で、従業員が個人情報保護に関する知識とスキルを身につけることが求められています。本記事で解説した個人情報保護研修の目的や実施内容を参考に、個人情報保護研修を実施しましょう。

 

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