情報セキュリティ管理とは?目的やプロセスを解説

「最近、情報セキュリティの脅威が増しているけれど、うちの会社の対策は大丈夫かな」と心配になる方も多いのではないでしょうか。情報漏えいやサイバー攻撃のニュースを目にするたびに、自社の情報セキュリティ対策が十分なのか不安になることもあるでしょう。

情報セキュリティ管理は、ただの技術的な問題だけではなく、経営にも大きな影響を及ぼす重要な課題です。

 

本記事では、情報セキュリティ管理の目的やプロセスについて詳しく解説します。

1. 情報セキュリティ管理とは

情報セキュリティ管理とは、企業や組織が持つ情報資産を保護するための一連のプロセスや手法を指します。情報の漏えいや不正アクセスからデータを守ることが主な目的で、企業の信頼性を確保し、業務の円滑な運営を支える重要な要素です。

情報セキュリティ管理が重要視される理由は、デジタル化が進む現代において、情報が企業の競争力を左右する資産であるからです。情報が漏えいすると、企業の信用が失墜し、法的責任を問われる可能性もあります。また、サイバー攻撃による被害は経済的損失だけでなく、顧客との信頼関係を損なうリスクも伴います。

 

具体的な情報セキュリティ管理の内容は以下の4つです。

  • ハードウェア管理:物理的なセキュリティ対策
  • ソフトウェア管理:最新のセキュリティパッチの適用・脆弱性の低下
  • サイバー攻撃対策:ファイアウォールやアンチウイルスソフトの導入
  • ネットワーク防御:暗号化技術の活用

それぞれの内容について詳しく解説します。

 

■ハードウェア管理

ハードウェアとは、コンピュータやサーバー、ルーターなどの物理的な機器のことを指します。ハードウェアが適切に管理されていないと情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まるため、定期的な点検や更新、適切な保管が必要です。

サーバーやルーターは、アクセスが制限された場所に設置することで、不正な物理的アクセスを防ぐことができます。また、温度や湿度の管理も重要です。適切な環境で機器を運用することで、故障や誤作動を防ぎます。

さらに、ハードウェア用のソフトウェアの更新やハードディスクの健康状態のチェックなど、定期的なメンテナンスも欠かせません。

また、ハードウェアの廃棄時には、データの消去が必要です。データが残ったまま廃棄すると情報漏えいのリスクが伴うため、適切な方法でデータを消去することで、情報の安全性を確保します。

 

■ソフトウェア管理

ソフトウェアは企業や組織の情報システムの中核を成すため、そこに脆弱性があると、サイバー攻撃の標的となる可能性が高まります。

ソフトウェア管理においては、ソフトウェアの定期的なアップデートで実施されるセキュリティパッチの適用により、既知の脆弱性を修正することが重要です。

また、使用しているソフトウェアのライセンス管理も欠かせません。正規のライセンスを持たないソフトウェアは、サポートを受けられず、セキュリティリスクが高まるからです。さらに、不要なソフトウェアを削除し、使用するソフトウェアを最小限に抑えることで、管理の手間を減らし、リスクを低減できます。

ソフトウェア管理におけるもうひとつのポイントは、アクセス権限の管理です。ソフトウェアを利用するユーザーの権限を適切に設定し、不必要な権限を持たせないようにすることで、内部からの情報漏えいや誤操作によるトラブルを防ぐことができます。

 

■サイバー攻撃対策

サイバー攻撃とは、インターネットを通じて行われる悪意ある行為で、個人情報の盗難や企業データの破壊を目的としています。サイバー攻撃に対抗するためには、攻撃の種類を把握することが重要です。代表的なサイバー攻撃には、フィッシング攻撃やマルウェア攻撃、DDoS攻撃などがあります。サイバー攻撃は日々進化し巧妙化しているため、常に最新の情報を収集し続けることが求められます。

具体的な対策として、ウイルスやマルウェアの侵入を防ぐことができる、セキュリティソフトウェアの導入が挙げられます。また、ファイアウォールを利用することで、不正アクセスを未然に防ぐことも可能です。

 

■ネットワーク防御

ネットワークは企業や個人の情報がやり取りされる場であり、ネットワークに脅威が及ぶと情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。ネットワーク防御を強化するためには、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS)の導入が必要です。ファイアウォールは外部からの不正なアクセスを遮断し、IDSは異常な通信を検知して警告を発します。

さらに、無線LANのセキュリティも見逃せません。無線LANは便利ですが、セキュリティ設定が甘いと第三者が勝手にアクセスする恐れがあります。暗号化方式を強化し、定期的にパスワードを変更することで、無線LANの安全性を高めましょう。

 

 

2. 情報セキュリティ管理の目的

情報セキュリティ管理の目的は、情報の機密性・完全性・可用性の3つを維持することです。

機密性は情報が許可された者だけにアクセスされることを保証し、完全性は情報の正確さと信頼性を維持することを指します。可用性は必要なときに情報へアクセスできる状態を確保することです。これらを維持することで、情報の価値を守り、業務の継続性を確保することが可能です。

 

■機密性とは

機密性とは、許可された人だけが情報にアクセスできる状態です。許可されていない第三者が情報にアクセスすると、個人情報の流出や企業の機密情報が外部に漏れるといったリスクが生じる可能性があります。

機密性を確保するためには、パスワードの強化や多要素認証の導入、アクセス権限の適切な管理などにより、情報へのアクセス制御を厳格に行うことが重要です。情報への不正なアクセスを防ぎ、認可されたユーザーだけが必要な情報にアクセスできるようにします。

また、データの暗号化も機密性を保つための有効な手段です。データを暗号化することで、たとえ情報が外部に流出したとしても、解読されるリスクを大幅に減らすことができます。

 

■完全性とは

完全性とは、情報が正確であり、改ざんされていない状態です。情報が不正に変更されると、業務プロセスに大きな支障をきたし、信頼性を損なう可能性があります。

完全性を維持するためには、データのバックアップを定期的に行うことが重要です。バックアップを取ることで、万が一データが改ざんされた場合でも、元の状態に復元することができます。また、アクセス制御を強化することも重要です。アクセス制御により情報にアクセスできる人を限定し、不正な変更を防ぐことができます。さらに、デジタル署名やハッシュ関数を活用することで、データの改ざんを検出することが可能です。

 

■可用性とは

可用性とは、情報システムやデータが必要なときに利用可能である状態です。例えば、重要な会議のために資料をダウンロードしようとしたときにシステムがダウンしていたら、データを利用することはできません。可用性を確保するためには、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが求められます。

可用性を高めるための具体的な方法として、冗長化があります。冗長化とは、システムの一部が故障しても他の部分でカバーできるようにする仕組みです。また、定期的なバックアップや障害発生時の迅速な復旧体制も欠かせません。これらの対策により、システムの信頼性が向上し、データを利用できる環境が整います。

さらに、可用性を維持するためには、システムの監視が重要です。システムの状態を常に監視することで、異常が発生した際に迅速に対応することができます。

 

 

3. 情報セキュリティ管理のプロセス

情報セキュリティ管理は、計画・実行・確認・改善のPDCAサイクルで実施します。

それぞれのプロセスについて詳しく解説します。

 

■計画段階での重要ポイント

情報セキュリティ管理の計画段階では、リスク評価と対策の優先順位付けが重要です。企業が直面する可能性のある脅威を特定し、それらがどの程度の影響を及ぼすかを評価します。

次に、データの機密性や重要性を考慮し、どの情報を優先して保護すべきかを決定します。ここでのポイントは、資産の重要度に応じて適切な保護レベルを設定することです。

 

■実行段階での注意点

実行段階での注意点として考慮すべきは、セキュリティポリシーの徹底した実施です。セキュリティポリシーとは、企業や組織が情報を守るために定めたルールやガイドラインを指します。セキュリティポリシーを全社員に周知し、日常業務で確実に実行することが重要です。

次に、情報へのアクセスは必要最低限に制限し、業務に必要な人だけがアクセスできるようにします。定期的なアクセス権の見直しも忘れずに行いましょう。

 

また、セキュリティソフトウェアの最新状態の維持も欠かせません。ウイルス対策ソフトやファイアウォールの更新を怠ると、新たな脅威に対処できなくなる可能性があります。自動更新を設定し、常に最新の状態を保つように心がけてください。

 

■確認段階でのチェック項目

確認段階では、計画通りにセキュリティ対策が実施されているか、またその効果が期待通りであるかを評価します。

次に、定期的にシステムの脆弱性をスキャンし、最新のセキュリティパッチが適用されているか確認します。また、セキュリティインシデントの記録と分析も重要です。過去のインシデントを分析し、再発防止策を講じることで、今後のリスクを軽減できます。

 

■改善段階での取り組み

改善段階では、過去のセキュリティインシデントの分析が重要です。

どこに問題があったのかを振り返ることで、同じ過ちを繰り返さないための具体的な対策を立てることができます。

さらに、従業員への教育も欠かせません。セキュリティ意識を高めるための研修やシミュレーションを定期的に実施し、従業員の意識を変えることが大切です。また、AIを活用した脅威検知システムや最新のファイアウォール技術を取り入れることで、より強固な防御体制を築くことができます。最後に、改善の成果を定期的に評価し、次のサイクルに活かすことが重要です。

 

 

4. 情報セキュリティ管理を効率よく実施する方法

情報セキュリティ管理を効率よく実施する方法は以下の2つです。

  • セキュリティ管理ツールを導入する
  • 専門業者へ委託する

それぞれの方法について詳しく解説します。

 

■セキュリティ管理ツールを導入する

セキュリティ管理ツールの導入は、情報セキュリティ管理を効率よく実施するための効果的な手段です。セキュリティ管理ツールは、システム全体のセキュリティ状況をリアルタイムで監視し、潜在的な脅威を早期に検知する機能を備えています。また、導入することで人為的なミスを減らし、セキュリティレベルを向上させることが可能です。

セキュリティ管理ツールには、ウイルス対策ソフトやファイアウォール、IDS/IPS(侵入検知・防御システム)などがあります。また、ログ管理ツールを導入することで、システムの利用状況を記録し、異常な動きを早期に発見することが可能です。

導入の際は、自社の業務内容やシステム環境に適したツールを選ぶようにしましょう。また、導入後の運用体制も整える必要があります。

 

■専門業者へ委託する

情報セキュリティ管理を効率よく実施するためには、専門業者への委託も効果的です。専門業者は情報セキュリティの最新技術やトレンドに精通しており、自社だけでは対応するのが難しい高度なセキュリティ対策を実施できます。特に、社内に専門知識を持つスタッフがいない場合や、セキュリティ対策に必要な時間やリソースが不足している場合におすすめの方法と言えるでしょう。

ただし、業者選びには注意が必要です。過去の導入事例や顧客の評判、契約内容、サポート体制などを参考に、慎重に検討しましょう。

 

 

5. 情報セキュリティ管理に役立つ資格

■情報セキュリティ管理士認定試験

情報セキュリティ管理士認定試験は、情報セキュリティの専門知識を持つことを証明する資格試験です。試験は全日本情報学習振興協会によって運営されており、情報セキュリティの基本的な概念から、具体的な管理手法や対策まで幅広くカバーしています。

 

■情報セキュリティマネジメント試験

情報セキュリティマネジメント試験は、情報セキュリティ管理の基礎知識と実践力を測るための国家試験です。情報システムを安全に運用するための知識を有することを証明する資格として、多くの企業で重視されています。

情報セキュリティマネジメント試験を取得することで、セキュリティ管理の専門性を高め、職場での信頼性を向上させることができるでしょう。

 

■情報処理安全確保支援士試験

情報処理安全確保支援士試験は、情報セキュリティ管理における専門的な知識を証明するための国家資格です。

情報処理安全確保支援士試験に合格することで、情報セキュリティ管理のプロフェッショナルとしての信頼性を高めることができます。企業のセキュリティ部門でのキャリアアップや、セキュリティコンサルタントとしての独立を目指す方にとっても大きな武器となるでしょう。

 

 

6. まとめ

今回は、情報セキュリティ管理の目的やプロセスについて詳しく解説しました。

情報セキュリティ管理は、企業のデジタル資産を守るために欠かせない要素です。情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが増える中、その重要性はますます高まっています。

本記事で解説した情報セキュリティ管理のプロセスを参考に、情報セキュリティの強化に取り組んでみましょう。

 

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