ISMSにおける内部監査とは?目的や進め方、注意点を解説

ISMSにおける内部監査は、組織の情報セキュリティ体制を評価し、改善点を見つけ出すための重要なステップです。内部監査を行う目的は、外部監査とは異なる視点で組織の現状を把握し、内部からの改善を促進することにあります。適切な内部監査を行うことで、組織全体のセキュリティ意識を高め、リスクを未然に防ぐことが可能です。

 

本記事では、ISMSにおける内部監査や実施する目的、進め方、実施時の注意点について解説します。

 

1. ISMSにおける内部監査とは

ISMSにおける内部監査とは、情報セキュリティ管理システムの有効性を評価し、改善点を見つけ出すための重要なプロセスです。内部監査を通じて、組織は自らの情報セキュリティ対策が適切に機能しているかを確認し、継続的な改善を図ることができます。

内部監査が重視される理由は、組織内部での自己評価を通じて、外部の監査を受ける前に問題点を洗い出し、是正する機会を持てるからです。外部監査での指摘事項を減らし、組織の信頼性を高めることができます。また、内部の視点から組織の現状を見直すことで、より実践的で現実に即した改善策を講じることが可能です。例えば、内部監査を定期的に実施することで、セキュリティポリシーの遵守状況やリスク管理の実効性を確認できます。

 

■ISMSで内部監査を行う目的

ISMSで内部監査を行う目的は、組織の情報セキュリティマネジメントシステムが適切に機能しているかを確認することにあります。具体的には、情報資産の保護を確実にするための仕組みが整っているか、リスクが適切に管理されているかを評価します。内部監査を通じてISMSの改善点を明らかにし、継続的な改善を促進することが求められます。

また、内部監査は、外部監査に備えるための準備としても重要です。内部監査を適切に実施することにより、外部の視点からも信頼性の高いシステムであることを証明できます。内部監査を定期的に実施することで、組織全体のセキュリティ意識を高め、情報漏えいなどのリスクを未然に防ぐことが可能です。ISMS内部監査は単なる形式的な作業ではなく、組織のセキュリティ対策における重要なプロセスと言えるでしょう。

 

■内部監査と外部監査の違い

ISMSにおける内部監査は組織内部のメンバーが実施し、業務プロセスやセキュリティ対策が適切に実行されているかを評価します。一方、外部監査は第三者機関が行い、客観的な視点から組織のISMSを評価します。

 

 

2. ISMSの内部監査の進行手順

ISMSの内部監査の進行手順は以下の通りです。

  1. 内部監査員の選定
  2. 内部監査計画の策定
  3. 内部監査の実施
  4. 内部監査報告書の作成

それぞれの手順について解説します。

 

■内部監査員の選定

ISMSの内部監査を成功させるためには、適切な内部監査員の選定が重要です。内部監査員は、組織の情報セキュリティ管理システムを客観的に評価する役割を担います。選定においては、監査対象の業務に対する十分な理解と、監査手法に関する専門知識が求められます。また、監査員は公正さを保ち、利害関係のない立場で評価を行うことが求められます。さらに、コミュニケーション能力も重要な要素です。監査結果を効果的に伝え、改善提案を行うためには、明確かつ説得力のある報告が必要です。内部監査員の選定を慎重に行うことで、ISMSの内部監査の質を高め、組織全体の情報セキュリティを向上させることが可能になります。

 

■内部監査計画の策定

内部監査計画の策定では、内部監査の目的を明確にし、監査対象の範囲を決定します。次に、監査スケジュールを策定し、監査員の役割を明確化します。監査計画に監査手法や使用するチェックリストを盛り込むことで、効率的で一貫性のある監査が実現します。

 

■内部監査の実施

内部監査の実施は、ISMSの維持と改善における重要なプロセスです。監査の目的を明確にし、組織の情報セキュリティ方針や目標に合致しているかを確認します。次に、監査対象の範囲を決定し、必要なリソースを確保します。内部監査員は、事前に策定された計画に基づき、文書のレビューやインタビュー、現場の観察を通じて情報を収集します。この過程では、チェックリストを活用し、効率的かつ網羅的に監査を進めることが求められます。監査の結果を客観的に評価し、不適合が見つかった場合は、是正措置を提案することが重要です。

 

■内部監査報告書の作成

内部監査報告書はISMS内部監査の最終的な成果物であり、その作成は監査の品質を左右する重要なステップです。内部監査報告書は関係者にとって理解しやすく、かつ行動に結びつく内容であることが重要です。内部監査報告書の作成では、監査の客観性を保つために、事実に基づいた記述を心がける必要があります。

 

 

3. ISMSの内部監査報告書に含めるべき内容

ISMSの内部監査報告書には、監査の結果を明確に伝えるための重要な情報が含まれている必要があります。報告書の内容が充実していることで、組織全体が情報セキュリティの現状を把握し、改善点を見つけ出すことができます。

 

ISMSの内部監査報告書に記載する主な項目は以下の5つです

  • 監査対象部門
  • 担当の内部監査員
  • 実施日時
  • 監査の内容
  • 監査結果

 

上記の情報が詳細に記載されていることで、報告書を受け取った関係者が次のステップを明確に理解し、迅速に行動を起こすことが可能になります。報告書の質が高ければ高いほど、組織のセキュリティ強化に大きく貢献するでしょう。

 

■不適合報告書に記載する内容

不適合報告書は、ISMS内部監査で発見された不適合事項を記録する重要な文書です。どのような不適合が発見されたのか、どのように改善すべきかを記載します。記載する内容には、具体的には、どのプロセスや手続きが規定と異なっているのか、どのような影響を及ぼす可能性があるのかといった、不適合の詳細な説明が求められます。

不適合報告書には、どのようにして問題を解決し、再発を防ぐかの具体的な手順を含めた、是正措置の提案を含めることも重要です。是正措置の実施状況やその効果を評価するためのフォローアップ計画も記載することで、ISMSの継続的な改善が可能となります。

 

 

4. ISMSの内部監査のポイント

ISMSの内部監査のポイントは以下の2つです。

  • チェックリストを活用する
  • 監査対象と接点がない人を内部監査員にする

それぞれのポイントについて解説します。

 

■チェックリストを活用する

ISMSの内部監査の1つ目のポイントは、チェックリストを活用することです。

内部監査におけるチェックリストは、監査対象のプロセスや手順を詳細に確認するためのガイドラインとして機能します。監査員は重要な項目を漏らさずに評価でき、組織の情報セキュリティ管理体制の現状を正確に把握することが可能です。また、チェックリストを活用することで監査の一貫性が保たれ、異なる監査員による評価のばらつきを減少させることができます。過去の監査結果と比較する際にも役立ち、改善点の特定や継続的な改善活動の推進に寄与します。

 

■監査対象と接点がない人を内部監査員にする

ISMSの内部監査の2つ目のポイントは、監査対象と接点がない人を内部監査員にすることです。

監査対象と直接的な関係がない内部監査員は偏りのない視点で業務を評価できるため、より公平で正確な監査が期待できます。異なる部門の人材を監査員にすることで、組織全体の情報セキュリティ意識を高める効果も期待でき、内部監査が単なるチェック作業にとどまらず、組織の改善に寄与するプロセスとなります。

 

 

5. ISMSの内部監査に役立つ専門資格

ISMSの内部監査に役立つ専門資格は以下の2つです。

  • ISMS審査員資格
  • CISA®(公認情報システム監査人)

それぞれの資格について解説します。

 

■ISMS審査員資格

ISMS審査員資格は、ISMSの内部監査を行う上で非常に有用な資格です。この資格を取得することで、監査プロセスの専門知識を深め、組織の情報セキュリティを向上させるための具体的な改善提案が可能になります。ISMS審査員資格は、ISO/IEC 27001の基準に基づいた審査能力を証明するもので、内部監査だけでなく外部監査のスキルも向上させます。資格取得者は、情報セキュリティのリスク管理やコンプライアンスの確保において、組織をリードする役割を果たすことが期待されます。特に、ISMS内部監査の効果的な実施方法を学ぶことで、監査の質を高め、リスクを最小限に抑えることが可能です。

 

【参考】

ISMS審査員「一般財団法人日本要員認証協会」

 

■CISA(公認情報システム監査人)

CISA(公認情報システム監査人)は、情報システムの監査において高い専門性を持つ資格です。この資格は、ISMSの内部監査においても非常に役立ちます。CISA資格を持つ監査人は、情報システムのリスク管理や統制の評価において専門的な知識と技術を提供できます。特に、情報セキュリティの観点からの監査が重要視されるISMSでは、CISAのスキルが大いに活用されます。資格取得には、ISACAが定める試験に合格し、実務経験を積むことが求められます。

 

【参考】

公認情報システム監査人「ISACA東京支部」

 

 

6. まとめ

今回は、ISMSにおける内部監査や実施する目的、進め方、実施時の注意点について解説しました。

内部監査は、組織の情報セキュリティを強化するために欠かせないプロセスです。適切に進めることで、組織全体のセキュリティ意識を高めることができます。

本記事で解説したISMSの内部監査の進行手順やポイントを参考に、効果的な内部監査を実施しましょう。

 

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