プライバシーマークとは?制度の仕組みや取得するメリット、手順を解説

個人情報保護に対する意識が高まる中、プライバシーマークは個人情報の適切な管理を示す証であり、プライバシーマークの取得は顧客からの信頼を得る重要な要素となっています。

 

取得することで取引先や顧客に対して安心感を提供し、競合他社との差別化を図ることができます。一方、プライバシーマークの取得には時間やコストがかかるため、取得するかどうかを慎重に検討することが重要です。

本記事では、プライバシーマークの概要や取得による具体的なメリット、取得する手順について解説します。

 

1. プライバシーマークとは

プライバシーマークとは、個人情報の英訳である「Personal Information」の頭文字であるPとIをモチーフとしてデザインされた、個人情報保護体制が適切であることを示すマークです。Pマークと呼ばれることもあります。

第三者機関である一般財団法人日本情報経済社会推進協会 (JIPDEC) が個人情報保護体制の基準への適合性を評価し、使用を許諾しています。

個人情報の漏えいや不正利用が社会問題となる中で顧客や取引先からの信頼を得るためには、個人情報保護に対する取り組みが欠かせません。プライバシーマークは企業が個人情報を適切に管理していることを客観的に証明する手段であり、個人情報保護の取り組みをアピールするための方法でもあります。

プライバシーマークを取得するためには、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の構築や運用、内部監査の実施、審査機関による書類審査・現地審査を受ける必要があります。

 

 

2. プライバシーマーク制度とは

プライバシーマーク制度とは、個人情報保護法に基づき、適切な管理体制を整えていることを第三者機関が認証する認証制度です。日本国内で個人情報の適切な取り扱いを促進することを目的としています。企業や団体が個人情報保護マネジメントシステム(PMS)を構築し、運用することで、プライバシーマークの取得が可能です。

プライバシーマークを取得することで、企業は顧客や取引先に対して個人情報保護の取り組みをアピールでき、信頼性の向上につながります。また、取得には内部監査や書類審査、現地審査など一定の基準を満たす必要があります。定期的に更新手続きを行う必要があり、常に最新の基準を維持することが求められます。

 

■プライバシーマーク制度とISMSの違い

プライバシーマークとISMSは共に情報セキュリティに関する認証制度ですが、それぞれの目的や範囲に違いがあります。

プライバシーマークは、日本産業規格(JIS Q 15001)に基づき、個人情報の適切な取り扱いを示すための認証です。企業が個人情報を保護する能力を証明することで、顧客や取引先からの信頼を得ることができます。

一方、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、ISO/IEC 27001に基づいた国際的な標準で、企業全体の情報資産を守るための体系的な管理を目的としています。ISMSは、個人情報に限らず、企業が保有するすべての情報を保護することを目指します。ISMS認証を取得することにより、情報漏洩リスクを低減し、ビジネスの継続性を確保することが可能です。上記のようにプライバシーマークは主に個人情報の保護に特化しているのに対し、ISMSはより広範な情報セキュリティをカバーしている点が大きな違いです。どちらの認証も、企業の信頼性向上に寄与する重要な要素となっています。

 

■取得にかかる時間

プライバシーマークの取得にかかる時間は、通常、数ヶ月から半年を要します。具体的な期間は、企業の規模や準備状況、審査機関の混雑具合によって変動します。

まず、プライバシーマーク取得に向けた方針の決定やPMSの構築・運用が必要です。これには、個人情報保護の体制を整えるための内部準備が含まれ、通常1〜3ヶ月程度かかります。

その後、内部監査を実施し、問題点の洗い出しと改善を行います。このプロセスが完了したら、Pマーク審査の申請を行います。申請後、書類審査と現地審査が行われ、これらの審査にはさらに1〜2ヶ月が必要です。審査が無事に通過すれば、プライバシーマークが付与されますが、審査結果によっては追加修正が求められることもあります。

 

■取得にかかる費用

プライバシーマークの取得にかかる費用は、企業の規模や業種、準備状況によって異なります。審査費用とコンサルティング費用が主なコスト要素です。

審査費用は審査機関へ支払うもので、企業の規模によって変動します。小規模企業では数十万円程度から、中規模以上の企業では数百万円に達することもあります。コンサルティング費用は、外部専門家によるサポートを受ける際の費用です。企業の準備状況次第で異なりますが、数十万円から数百万円が相場となっています。

上記費用に加え、内部リソースの費用、例えば従業員のトレーニングやシステムの導入、運用のための時間的コストも考慮する必要があります。費用は取得時だけでなく更新時にも発生するため、長期的な視点で予算を組むことが重要です。

 

■有効期限と更新手続き

プライバシーマークの有効期限は2年間です。取得手続きだけでなく、定期的な更新手続きが必要です。更新手続きは取得後2年ごとに行われ、組織の個人情報保護管理体制が最新の基準を満たしているかが確認されます。更新手続きを怠ると、プライバシーマークの失効につながる恐れがあります。

また、更新手続きは組織内の個人情報保護の意識を高める機会でもあります。継続的な改善を図ることで、組織は競争力を維持し、顧客からの信頼を確保することができます。

 

■取得に必要な条件

取得に必要な条件として、個人情報保護方針の策定が求められます。これは、組織が個人情報をどのように扱うのかを明確にするための基本的なステップです。

次に、PMS(プライバシーマネジメントシステム)の構築が必要です。個人情報の取り扱いに関する実際の運用体制を整えるためのもので、具体的にはリスク評価や教育訓練の実施が含まれます。また、内部監査を実施し、PMSが適切に機能しているかを確認することも必要です。

これらのプロセスを経て、プライバシーマークの審査申請を行うことができます。審査には書類審査と現地審査があり、現地審査では実際の運用状況がチェックされます。これらの手続きを行うことで、プライバシーマークの取得が可能となります。

 

 

3. プライバシーマーク取得のメリット

プライバシーマーク取得のメリットは以下の3つです。

  • 取引先からの信頼性向上
  • 顧客からの信頼性向上
  • 従業員の意識向上

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

 

■取引先からの信頼性向上

プライバシーマーク取得の1つ目のメリットは、取引先からの信頼性向上です。

企業がプライバシーマークを取得していることは個人情報の保護に対する高い意識を示すものであり、取引先に対して安心感を与えます。情報管理が重要視される現代において、取引先は個人情報を扱う企業を選ぶ際に、プライバシーマークの有無を確認することが一般的です。プライバシーマークの取得は他社との差別化を図るための有効な手段であり、法令遵守やリスク管理が徹底されていると評価され、取引先からの信頼性が高まります。

 

■顧客からの信頼性向上

プライバシーマーク取得の2つ目のメリットは、顧客からの信頼性向上です。

プライバシーマークは個人情報の適切な管理を行っている企業に付与される認証であり、顧客に対して安心感を与えることができます。

インターネット上での取引が増加している現代において、個人情報の漏洩は致命的な問題となり得ます。プライバシーマークを取得することで、顧客は自分の情報が安全に管理されていると感じ、企業への信頼が高まります。

 

■従業員の意識向上

プライバシーマーク取得の3つ目のメリットは、従業員の意識向上です。

プライバシーマークの取得プロセスを通じて、従業員は個人情報保護の重要性を理解し、日常業務における情報管理の意識が高まります。具体的には、情報漏洩防止のための適切なセキュリティ対策や、個人情報の取り扱いに関するコンプライアンス教育が行われます。従業員は自らの役割を再認識し、組織全体としてのセキュリティ意識が向上するわけです。

 

 

4. プライバシーマークを取得する手順

プライバシーマークを取得する手順は以下の通りです。

  1. 方針の決定
  2. PMSの構築・運用
  3. 内部監査
  4. 審査の申請
  5. 書類審査・現地審査

それぞれの手順について詳しく解説します。

 

■方針の決定

方針の決定は、プライバシーマーク取得の第一歩です。この段階では、組織全体で個人情報保護の重要性を認識し、具体的な目標を設定します。経営層のコミットメントを得ることが不可欠で、これにより全社的な協力体制が整います。次に、リスク評価を行い、どのような情報が保護対象となるのかを明確にします。この評価に基づいて、具体的な運用方針を策定し、全従業員に周知徹底します。さらに、方針は法令遵守を前提とし、業界のベストプラクティスに沿った内容であることが求められます。これにより、プライバシーマーク取得に向けた基盤が整い、次のステップであるPMSの構築へとスムーズに進むことができます。

 

■PMSの構築・運用

プライバシーマーク取得の次のステップは、PMS(個人情報保護マネジメントシステム)の構築・運用です。組織内で個人情報保護の方針を明確にし、それに基づいたPMSを設計します。PMSは、情報の収集、利用、保管、廃棄に至るまでの全プロセスを網羅し、適切な管理を行うことを目的としています。PMSの運用においては、定期的な内部監査や教育訓練を通じて、従業員の意識を高めることが求められます。さらに、運用状況を継続的に見直し、改善を行うことで、個人情報保護法や関連法規に対応した体制を維持することが重要です。

 

■内部監査

内部監査の目的は、個人情報保護のために構築されたPMSが適切に運用されているか確認することです。内部監査では、組織内のデータ管理やセキュリティ対策が基準に沿っているかをチェックします。監査結果は経営層への報告や改善策の策定に活用されるため、組織全体のコンプライアンス意識を向上させる効果も期待できます。適切な内部監査を行うことで、プライバシーマークの審査においてもスムーズに進行する可能性が高まります。

 

■審査の申請

審査の申請では、申請書類を準備し、個人情報保護方針やPMSの運用状況を具体的に示す情報を漏れなく記載することが求められます。書類が整ったら、JIPDECなどの認定機関に提出します。申請後は書類審査が行われ、問題がなければ現地審査に進みます。

 

■書類審査・現地審査

書類審査では、提出された書類をもとに、PMSの構築状況や運用実績が基準に適合しているか、組織の個人情報管理の体制が適切に整備されているかが確認されます。

現地審査では、実際の運用状況を確認するために、審査員が企業を訪問します。書類で示された内容が社内で実践されているかどうかを確認し、企業のセキュリティ対策や従業員の意識向上への取り組みが実際に行われているかを検証します。

書類審査・現地審査を経て、基準を満たしていると認められた場合にのみ、プライバシーマークが付与されます。

 

 

5.  まとめ

今回は、プライバシーマークの概要や取得による具体的なメリット、取得する手順について解説しました。

個人情報の保護が求められる現代において、プライバシーマークの取得は、取引先や顧客からの信頼性を高め、従業員の意識を向上させるための重要な取り組みです。

本記事で解説したプライバシーマークを取得する手順を参考に、プライバシーマークの取得を目指してみてください。

 

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