「プライバシーマークを取得したいけど、どこから始めればいいのか分からない」「取得にどれくらいの時間とコストがかかるのか不安だ」と悩んでいる方もいるでしょうか。
プライバシーマークの取得は、適切な手順を踏むことでスムーズに進めることが可能です。
本記事では、プライバシーマーク取得までのステップについて詳しく解説します。
1. プライバシーマークとは
プライバシーマークとは、個人情報を適切に取り扱っている事業者に対して、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が付与する認証マークです。
プライバシーマークを取得することで、個人情報の管理体制が整っていることを外部に示すことができ、企業の信頼性を高めることができます。さらに、顧客情報を適切に管理することで、トラブルの未然防止にもつながります。
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2. プライバシーマーク取得のメリット
プライバシーマークを取得するメリットは以下の5つです。
- 信頼性向上
- ビジネスチャンスの拡大
- リスク管理の強化
- コンプライアンス強化
- 従業員の意識向上
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
■信頼性向上
プライバシーマークを取得することで、顧客や取引先からの信頼性が大きく向上します。なぜなら、プライバシーマークを取得することは、個人情報を適切に管理していることを第三者機関が認証する証となるからです。
信頼性向上の背景には、プライバシーマークがJISQ15001という日本工業規格に基づいていることがあります。JISQ15001はPMS(個人情報保護マネジメントシステム)の要求事項を定めており、企業がどのように個人情報を保護するかを具体的に示しています。つまり、プライバシーマークを取得することは、企業がこの規格に従って個人情報を管理している証明となるわけです。
■ビジネスチャンスの拡大
プライバシーマークを取得することで、ビジネスチャンスの拡大が期待できます。プライバシーマークを持つ企業は個人情報の取り扱いに関して高い信頼性を示すことができるため、新規顧客の獲得や既存顧客との関係強化につながります。
また、プライバシーマークを取得することで、個人情報保護に関する法令を遵守していることをアピールでき、競争力を高めることが可能です。特に、個人情報を多く扱う業界では、プライバシーマークの有無が取引先の選定基準となることも少なくありません。そのため、プライバシーマークを取得することで、取引先の信頼を得やすくなり、新たなビジネスチャンスを生む可能性が高まります。
■リスク管理の強化
リスク管理の強化は、プライバシーマークを取得するメリットの一つです。
プライバシーマークを取得する過程で、企業は個人情報保護のための管理体制を整え、リスクアセスメントを実施します。リスクアセスメントとは、企業が抱えるリスクを洗い出し、そのリスクがどのように発生し得るか、またその影響がどの程度かを評価するプロセスです。このプロセスを通じて、リスクの特定、評価、そして適切な対策を講じることが求められます。
また、プライバシーマークを取得することで、定期的な内部監査が義務付けられ、情報管理体制が常に適切に運用されているかを確認できます。この監査によって、運用上の問題点や改善点が明らかになり、リスク管理の強化につながります。
■コンプライアンス強化
プライバシーマークの取得は、企業のコンプライアンス強化に大きく貢献します。コンプライアンスとは、法律や規則を遵守することを指し、企業活動においては非常に重要な要素です。プライバシーマークを取得することで、個人情報保護法や関連する法律の遵守が強化されます。
■従業員の意識向上
プライバシーマークの取得は、従業員の意識向上に大きく寄与します。なぜなら、個人情報保護の重要性が組織全体で共有され、具体的な取り組みが求められるからです。従業員はプライバシーマーク取得に向けた研修や教育を通じて、個人情報の取扱いに関する知識を深めます。
3. プライバシーマーク取得までのステップ
プライバシーマーク取得までのステップは以下の通りです。
- 方針決定
- PMS文書作成
- PMS構築・運用
- 内部監査
- 申請手続き
- 審査
- 取得完了
それぞれのステップについて詳しく解説します。
■方針決定
プライバシーマークを取得するための最初のステップは、組織としての方針決定です。これは、プライバシーマーク取得に向けた具体的な計画を立てる前に、組織全体で個人情報保護の重要性を認識し、方針を明確にすることを意味します。方針決定は、組織のトップが個人情報の取扱いに対する姿勢を示すことで、全社員の意識を高める効果があります。
方針決定においては、組織の業種や規模に応じた個人情報の取扱い方法を考慮し、具体的な目標を設定することが必要です。例えば、「顧客情報の漏えいを防ぐ」「従業員の個人情報を適切に管理する」といった具体的な目標を掲げることで、組織全体としての方向性が明確になります。
この方針は、全社員に対して周知徹底されるべきです。定期的な研修や会議を通じて、方針の内容やその重要性を全員に理解させ、日常業務に活かすことが求められます。そうすることで、組織全体が一丸となって、プライバシーマーク取得に向けた準備を進めることが可能になります。
■PMS文書作成
PMS文書とは、個人情報の適切な管理を目的とした文書で、組織がどのように個人情報を取り扱うかを明確に示すものです。PMS文書には、個人情報の取り扱いに関する基本方針や具体的な運用手順を詳細に記載します。
文書作成の際には、JISQ15001に基づく基準を満たすことが求められます。JISQ15001は日本国内での個人情報保護の標準となっており、これを遵守することで、組織の信頼性が高まります。また、文書は単に作成するだけでなく、定期的に見直しを行い、最新の法令や業務環境に適応させることが大切です。
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■PMS構築・運用
PMS(個人情報保護マネジメントシステム)の構築・運用は、プライバシーマーク取得において重要なステップです。PMS構築では、組織の個人情報保護方針を明確にする必要があります。この方針は、組織全体における個人情報の取り扱いに関する基本的な考え方を示すものです。次に、具体的な運用手順や責任者を定め、文書化されたルールを作成します。
運用面では、定期的な見直しと改善が求められます。PMSを効果的に機能させるためには、社内教育を通じて従業員の意識向上を図ることが大切です。また、運用の中で発生する問題や改善点を定期的にフィードバックし、システムの改善に活かすことも欠かせません。
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■内部監査
内部監査とは、個人情報保護の取り組みが適切に実施されているかどうかを内部的に確認するための手続きです。内部監査を実施することで、PMS(個人情報保護マネジメントシステム)がJISQ15001の基準に準拠しているかを確認し、必要な改善点を見つけることができます。
内部監査の実施には、監査計画を策定することが求められます。監査計画には、監査の目的、範囲、方法、スケジュールなどが含まれます。次に、監査員が実際に現場を訪れ、文書や記録の確認、従業員へのインタビューを通じて、PMSの運用状況を評価します。監査員は、組織の内部から選ばれる場合もありますが、客観性を確保するために外部の専門家を依頼することもあります。監査の結果、指摘事項や改善が必要な点が見つかった場合は、是正措置を講じる必要があります。
■申請手続き
プライバシーマークを取得するための申請手続きでは、PMSの運用記録や内部監査の報告書、改善計画などが必要です。さらに、申請書類の作成にあたっては、JISQ15001の基準をしっかりと理解し、それに基づいて記述することが求められます。申請書類の作成が完了したら、プライバシーマーク推進センターなどの専門機関に提出します。この際、提出期限や手続きの流れを事前に確認しておくことが重要です。
■審査
プライバシーマークの審査は、申請した企業が個人情報保護に関する基準を満たしているかどうかを確認するために行われます。具体的には、企業が構築したPMS(個人情報保護マネジメントシステム)が適切に機能しているか、関連する法律や規則に準拠しているかが評価されます。
プライバシーマークの審査は、大きく分けて書類審査と現地審査の二段階で進められます。書類審査では、提出されたPMS文書や関連資料が適切かどうかを確認します。この段階で不備がある場合、修正を求められることがあるため、しっかりと準備を行うことが重要です。
現地審査では、実際に会社を訪問してPMSの運用状況を確認します。この際、従業員へのインタビューや現場の視察を通じて、日常的な運用が基準を満たしているかをチェックします。現地審査では実際の運用状況が問われるため、事前に従業員への教育やトレーニングを行っておくと良いでしょう。
■取得完了
プライバシーマークの取得が完了すると、企業は個人情報保護に関する高い管理能力を証明できます。取得完了の知らせは、審査機関からの正式な通知として届き、企業はその時点でプライバシーマークのロゴを使用する権利を得ます。このロゴは、名刺やウェブサイト、パンフレットなどに掲示でき、企業の信頼性を外部に示す重要なシンボルとなります。
取得完了の通知を受けた後は、社内外に向けて取得の報告を行うことが推奨されます。これにより、従業員や取引先に対して個人情報保護への取り組みを明確に伝えられます。
4. プライバシーマーク取得にかかる期間
プライバシーマーク取得にかかる期間は、一般的に6か月から1年程度です。これは企業の準備状況や規模、既存の情報管理体制によって異なります。
プライバシーマーク取得の準備段階では、社内での方針決定やPMS文書作成、PMS運用体制の整備に通常3か月から6か月を要します。内部監査や是正措置を行い、申請準備を整えるプロセスでは、さらに数か月がかかることが一般的です。その後、申請を行い、審査機関による審査を受けますが、審査には通常1か月から2か月程度かかります。
5. プライバシーマーク取得にかかる費用
プライバシーマークの取得にかかる費用は、企業の規模や準備状況によって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円が目安です。費用の内訳としては、まず審査機関への申請料があります。この申請料は企業の規模によって異なり、例えば中小企業であれば20万円から30万円程度が多いです。次に、内部監査や従業員教育のための費用も考慮する必要があります。さらに、外部のコンサルタントを利用する場合は、その報酬も加わります。コンサルタントの費用は、数十万円から100万円を超えることもあります。
プライバシーマーク取得にかかる費用を節約する方法としては、自社内でできる準備を最大限に活用することが挙げられます。例えば、プライバシーマークの取得に必要な文書作成や従業員教育を自社で行うことで、外部のサポートに支払う費用を減らすことができます。また、すでに取得している他の認証(例えばISO27001)がある場合、それを活用することで重複する作業を削減し、費用を抑えることができます。
プライバシーマークの取得にかかる費用は企業の規模や準備状況によって異なるため、事前にしっかりと計画を立てるようにしましょう。
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6. プライバシーマーク取得に必要な条件
プライバシーマーク取得に必要な条件は以下の通りです。
- 国内に活動拠点を持つ事業者であること
- 社会保険・労働保険に加入した正社員、または登記上の役員(監査役を除く)の従業者が2名以上いること
- PMS(個人情報保護マネジメントシステム)を構築していること
プライバシーマーク付与に関する規約に定められている欠格事由に該当する事業者は、プライバシーマーク取得の申請を行うことはできません。
また、以下のいずれかの事由に該当する事業者は、指定された期間について、申請を行うことができません。
- 付与契約の解除を受けた事業者(付与の取消しを受けた場合を含む。):1年
- 申請若しくは審査に係る事項に虚偽があったことにより、審査の打ち切りがなされた事業者:1年
- 前号に定める事由以外により、審査機関により審査を打ち切られた事業者:3ヶ月
- 審査機関から、プライバシーマーク付与の適格性を有しない旨の決定を受けた事業者:3ヶ月
- 個人情報の外部への漏えい等の事故等が発生したことにより、付与機関からプライバシーマーク付与の一時停止がなされた事業者:一時停止が終了するまでの期間
【参考資料】
7. プライバシーマーク取得に関するQ&A
■取得が取り消されることはある?
プライバシーマークの基準に定められた個人情報保護の体制が適切に維持されていない場合や取得した個人情報を別の目的で使用した場合には、プライバシーマークの取得が取り消される可能性があります。例えば、企業が個人情報の取り扱いに関する規定を守らず、情報漏えいが発生した場合、プライバシーマークの信頼性を損なうため、取得が取り消されることがあります。
また、定期的な審査において不備が見つかり、改善が見られない場合も取り消しの対象となります。審査は通常、プライバシーマークの有効期間である2年ごとに行われますが、この際に基準を満たしていないと判断されると、プライバシーマークの継続が難しくなるでしょう。
■プライバシーマークに有効期限はある?
プライバシーマークは、取得後2年間が有効期間です。この期間内に、企業はプライバシーマークの基準を満たし続ける必要があります。もし基準を満たさなくなった場合、更新手続きの際に問題となり、更新が認められない可能性があります。
プライバシーマークの更新手続きでは、取得時と同様に、申請書の提出や審査が必要です。ただし、既にプライバシーマークを取得している企業については、基準を維持している限り、手続きが比較的スムーズに進むことが多いです。
■プライバシーマークとISO27001(ISMS)どちらを取得するべき?
プライバシーマークとISO27001(ISMS)のどちらを取得するべきかは、企業の目的やニーズによって異なります。プライバシーマークは個人情報の保護に特化しており、特に個人情報を多く取り扱う企業に適しています。一方、ISO27001は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格で、情報全般のセキュリティを強化するためのフレームワークを提供します。
したがって、国内での個人情報保護を重視する場合はプライバシーマーク、国際的な情報セキュリティ対策を強化したい場合はISO27001を選ぶと良いでしょう。
また、両方の取得を目指すことで、より包括的な情報保護体制を構築することも可能です。特に、グローバルに展開する企業や、情報セキュリティを重視する業界では、両方の取得が競争力を高める手段となるでしょう。最終的には、自社の事業戦略や顧客ニーズに合わせて選択することが重要です。
■小さな会社でも取得できる?
小さな会社でも、プライバシーマークを取得することは可能です。プライバシーマークは、個人情報の適切な取り扱いを実施していることを示す証であり、企業の規模に関わらず取得が推奨されています。
プライバシーマーク取得のためには、自社の個人情報保護方針を明確にし、その方針に基づいたPMS(個人情報保護マネジメントシステム)を構築する必要があります。このPMSの構築は専門的な知識が必要とされる部分もありますが、小規模企業向けの支援サービスやコンサルティングを活用することで、効果的に進めることが可能です。また、取得に際しては内部監査や申請書類の準備、審査を経る必要がありますが、これらのプロセスも専門家のサポートを受けることでスムーズに進められます。
8. まとめ
今回は、プライバシーマーク取得までのステップについて詳しく解説しました。
プライバシーマークの取得では、顧客の個人情報を適切に管理するための体制を整えることが求められます。多くの企業が直面する課題ですが、適切な準備を行えば、取得は十分に可能です。本記事で解説したプライバシーマーク取得までのステップを参考に、プライバシーマーク取得を目指しましょう。
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