セキュリティインシデントとは?最近の有名な事例や発生する原因・種類、対策、対応方法を解説

セキュリティインシデントが発生すると、情報漏えいやシステムの停止など、重大な影響を及ぼす可能性があります。セキュリティインシデントを未然に防ぐためには、日頃からのセキュリティ対策が欠かせません。また、万が一の際に迅速かつ適切な対応ができる体制を整えておくことも重要です。

 

本記事では、セキュリティインシデントの基本的な知識や最近の有名な事例、具体的な対応策について詳しく解説します。

 

1. セキュリティインシデントとは

セキュリティインシデントとは、情報システムやデータなど、企業の情報資産の安全性が脅かされる出来事です。具体的には、不正アクセス、データ漏えい、マルウェア感染などが該当します。セキュリティインシデントの発生は予期せぬものであり、リスクを最小限に抑えるためには、事前の対策が重要です。

現代社会では、デジタル化が進む中で情報の価値が増加する一方で、セキュリティインシデントのリスクも高まっています。インターネットやクラウドサービスは企業や個人が日常的に利用していますが、サイバー攻撃の標的にもなってしまうわけです。

例えば、企業が顧客情報を管理する際に、適切なセキュリティ対策を講じていないと、外部からの攻撃によって情報が漏えいすることがあります。こうした事態を避けるためには、セキュリティインシデントに対し、適切な対応策を講じることが重要です。

 

 

2. 最近の有名なセキュリティインシデント事例

 

■赤穂市教育委員会でランサムウェア被害

赤穂市教育委員会は、2024年12月18日(水)にランサムウェア攻撃により重要なデータが暗号化される被害を受けました。ランサムウェアは、コンピュータシステムに侵入し、データを人質にして金銭を要求する悪質なソフトウェアです。今回のインシデントでは、教育委員会の業務が一時停止し、教育現場への影響も懸念されました。セキュリティ専門家は、ランサムウェアの侵入経路として、メールの添付ファイルや不正なリンクが考えられると指摘しています。このような被害を防ぐためには、日頃からのセキュリティ意識の向上や、最新のセキュリティソフトの導入が重要です。さらに、データの定期的なバックアップも、被害を最小限に抑えるための有効な手段となります。赤穂市の事例は、セキュリティ対策の重要性を再認識させる出来事として、多くの自治体や企業に警鐘を鳴らしています。


参考資料:教育委員会におけるコンピュータウイルス感染について – 赤穂市

 

■三菱UFJ銀行の行員の不正行為

三菱UFJ銀行では、2024年10月31日(木)に元行員が顧客の金庫を無断で開け、現金等の資産を窃取したことが発覚するというセキュリティインシデントが発生しました。内部の人間による情報漏えいが不正行為の原因であり、組織の信頼性を揺るがす結果となっています。

同社は全容解明に向け、警察にも相談しながら事実関係の調査を進めるとともに、監督官庁などに報告を行っています。


参考資料:元行員の不祥事に関する対応状況等について「株式会社三菱 UFJ 銀行」

 

■キッザニアのWebサイトへの不正アクセス

キッザニアのWebサイトは、2024年10月16日(水)に不正アクセスを検知、個人情報流出の恐れがあるとして情報流出の遮断措置を実施しました。具体的には、攻撃者がサイトの脆弱性を突いてアクセス権を不正に取得し、情報を盗み出したとされています。

外部専門機関の協力を得て調査を実施した結果、顧客の個人情報 24,644 件が流出したことが判明しました。

キッザニアは顧客に電子メールや電話でお詫びとお知らせを伝えるなど迅速な対応を行い、セキュリティ専門家を招いて原因の究明と再発防止策を講じています。


参考資料:不正アクセス発生による一部のお客様の個人情報流出に関するお詫びと調査結果のご報告「KCJ GROUP 株式会社」

 

 

3. セキュリティインシデントが発生する原因・種類

セキュリティインシデントが発生する原因は以下の3種類です。

  • 内的要因
  • 外的要因
  • 環境要因

それぞれの原因について解説します。

 

■内部要因

セキュリティインシデントが発生する1つ目の原因は、組織内部の不適切な管理やヒューマンエラーを起因とする内部要因です。具体的には、メールの誤送信や、記録媒体の持ち出し・紛失、内部不正が該当します。

例えば、従業員が意図せずに機密情報を漏えいさせたり、適切な権限管理がされていなかったりすることで情報が不正にアクセスされることがあります。また、セキュリティポリシーが徹底されていない場合、従業員が不正行為に手を染めてしまうこともあります。

 

■外的要因

セキュリティインシデントが発生する2つ目の原因は、組織外部からのサイバー攻撃を起因とする外的要因です。

サイバー攻撃は外部からの不正アクセスやデータの盗難を引き起こす典型的な例となっており、企業の機密情報が漏えいし、信頼性が損なわれることがあります。具体的には、マルウェアへの感染やDoS・DDoS攻撃、サプライチェーン攻撃などが該当します。

近年ではサプライチェーンの脆弱性を狙った攻撃も増加しており、外部の取引先やパートナー企業がセキュリティインシデントの原因となることも少なくありません。これらの外部要因は、予測が難しいため、事前のリスク評価と対策が重要です。適切なセキュリティ対策を講じることで、外部からの脅威に対する防御力を高め、インシデント発生時の影響を最小限に抑えることが可能です。

 

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■環境要因

セキュリティインシデントが発生する3つ目の原因は、自然災害や物理的・技術的な要素、外部サービスを起因とする環境要因です。

地震や洪水などの自然災害は、物理的な設備に損害を与え、セキュリティインシデントを引き起こすことがあります。

物理的・技術的な要素としては、ネットワークインフラの老朽化が挙げられます。これにより、通信速度の低下や接続不良が発生し、セキュリティリスクが増大することがあります。また、サーバールームの温度管理が不十分であれば、機器の故障を招き、結果としてデータの損失やシステムダウンが発生する可能性があります。

業務で使用している外部サービスがシステム障害に陥ることでサービスを停止すると、自社のシステムが使用できなくなったり、思わぬ障害が発生したりする恐れがあります。

 

 

4. セキュリティインシデントへの対策

セキュリティインシデントへの対策は以下の5つです。

  • 情報資産の把握
  • 基本的なセキュリティ対策
  • 社員への教育
  • 専門家によるコンサルティング
  • セキュリティツールの導入

それぞれの対策について詳しく解説します。

 

■情報資産の把握

セキュリティインシデントへの1つ目の対策は、情報資産の把握です。

情報資産とは、企業が保有するデータやシステム、知的財産などを指します。データの分類や重要度の評価、アクセス権限の管理と言った方法で情報資産を正確に把握することで、潜在的な脅威を特定することが可能です。

特にアクセス権限の管理は、内部からの不正アクセスを防ぐために欠かせません。さらに、定期的なセキュリティ監査を実施することで、情報資産の現状を把握し、必要な対策を講じることができます。

 

■基本的なセキュリティ対策

セキュリティインシデントへの2つ目の対策は、基本的なセキュリティ対策です。

基本的なセキュリティ対策として、パスワード管理があります。強固なパスワードを設定し、定期的に変更することで不正アクセスを防ぐことが可能です。また、ウイルス対策ソフトを導入し、常に最新の状態に保つことも欠かせません。さらに、ソフトウェアやOSのアップデートを怠らず、脆弱性を突かれるリスクを低減しましょう。ファイアウォール設定も見直し、外部からの不正な通信を遮断することも重要です。

 

■社員への教育

セキュリティインシデントへの3つ目の対策は、社員への教育です。

定期的な研修やワークショップを実施することで、最新のセキュリティインシデントや対策について理解を深め、セキュリティ意識の向上を図ることができます。具体的なセキュリティインシデント事例を用いてどのような行動がセキュリティリスクを招くのかを明確に示すことが、社員への教育として効果的です。

また、パスワード管理やメールの取り扱いについての実践的な指導を行うことで、日常業務に潜むセキュリティインシデントリスクを軽減することができます。定期的な評価とフィードバックを通じて、教育の効果を確認し、必要に応じてプログラムを見直すことも重要です。社員がセキュリティの重要性を認識し自らの行動を見直すことで、組織全体のセキュリティレベルが向上します。

 

■専門家によるコンサルティング

セキュリティインシデントへの4つ目の対策は、専門家によるコンサルティングです。

専門家によるコンサルティングを受けることで、最新の脅威動向に関する知見を深めることができ、潜在的なリスクを事前に特定し、適切な対策を講じることができます。また、インシデント発生時には迅速な初動対応の指導が受けられ、被害を最小限に抑えるための戦略を提供してもらうことも可能です。

 

■セキュリティツールの導入

セキュリティインシデントへの5つ目の対策は、セキュリティツールの導入です。

多くの企業では、ファイアウォールやウイルス対策ソフトウェアを基本としつつ、不正侵入検知システム(IDS)や不正侵入防止システム(IPS)を併用しています。これらのツールは、ネットワーク上の不審な活動をリアルタイムで監視することができ、迅速に対応することが可能です。

また、暗号化技術の導入により、データの安全性を確保することも重要です。さらに、クラウドベースのセキュリティツールは、スケーラビリティとコストパフォーマンスに優れ、特に中小企業にとって効果的です。セキュリティインシデントの予防だけでなく、発生時の迅速な対応を支えるために、適切なツールを選定し導入することが求められます。

 

 

5. セキュリティインシデント発生時の対応手順

セキュリティインシデント発生時の対応手順は以下の通りです。

  1. 初動対応
  2. 事後対応
  3. 再発防止策の立案

それぞれの手順について詳しく解説します。

 

■初動対応

セキュリティインシデントの初動対応は、セキュリティインシデント発生時において極めて重要なステップです。迅速かつ適切な初動対応は、被害の拡大を防ぎ、復旧をスムーズに進める鍵となります。例えば、情報漏えいが発生した場合、早期にシステムの隔離やログの保存を行うことで、事後調査が容易になります。また、関係者への迅速な通知と対応策の共有を実施することで、関係者の信頼を維持し、さらなる被害を防ぐことが可能です。

初動対応が遅れると、情報の流出が続き、企業の信用が失われるリスクが高まります。事前に対応フローを策定し、定期的な訓練を実施することが効果的な初動対応の鍵となります。初動対応の質がその後の対応の成否を左右するため、初動対応の重要性を認識し、万全の準備を整えておくことが重要です。

 

■事後対応

セキュリティインシデントの事後対応は、被害の拡大を防ぎ、信頼を回復するための重要なステップです。

事後対応では、インシデントの詳細な記録を行い、発生原因や影響範囲を明確にします。これにより、今後の再発防止策の基礎が築かれます。次に、影響を受けたシステムやデータの復旧作業を迅速に進めます。復旧後は、被害を受けた顧客や関係者へ適切な情報を提供し、信頼を取り戻す努力を怠らないことが肝心です。

 

■再発防止策の立案

最後に、組織全体のセキュリティ体制を見直し、強化することが求められます。これにより、今後のリスクを軽減し、信頼性を高めることができます。

再発防止策としては、システムの脆弱性を修正し、セキュリティポリシーの見直しを行います。また、従業員へのセキュリティ教育を強化し、意識向上を図ることも重要です。これらの対応を通じて、同様のインシデントを未然に防ぐことが可能になります。さらに、外部のセキュリティ専門家のアドバイスを受けることで、より高度な防御策を講じることができます。

 

 

6. まとめ

今回は、セキュリティインシデントについて解説しました。

セキュリティインシデントは予期せぬタイミングで発生することが多いですが、適切な対応策を知っておくことで被害を最小限に抑えることができます。

本記事で解説したセキュリティインシデントが発生する原因や対策、発生時の対応手順を参考に、しっかりと備えておくことが重要です。

 

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