「派遣契約は再委託にあたるのか」「再委託と派遣には違いがあるのだろうか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
本記事では、再委託と派遣契約の違いや派遣契約における再委託の注意点について解説します。
1. 再委託と派遣の違い
再委託と派遣の違いは、業務を行う担当者が第三者なのか、自社に派遣されている契約社員のように社内で自社の指揮命令のもとで働く人材なのかです。
外部の企業や組織に外注して業務全体を任せる再委託の場合、第三者が業務を行います。再委託の場合は、第三者が自身のやり方で業務を行い、委託元企業は再委託先に対して業務のやり方や進め方について直接指示を指すことはありません。
一方、派遣は労働者を他の会社に送り出し、その会社の指揮命令の下で業務を行う形態です。自社が契約している派遣社員とは雇用関係にはありませんが、自社の指示に従って業務を行うため、社内の人材とみなされます。
上記のように、指揮命令権の所在が再委託と派遣の大きな違いです。
■再委託とは
再委託とは、元請け企業が委託された業務を他の企業に依頼し、その企業が実際に業務を遂行することを指します。例えば、建設業界では、元請け業者が下請け業者に工事の一部を再委託することが一般的です。再委託は、業務の効率化や専門的な技術を必要とする場合に活用されます。再委託を行う際には、契約内容を明確にし、業務の範囲や責任を明確にすることが重要です。
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■派遣とは
派遣とは、企業が必要な労働力を一時的に補うために、派遣会社から労働者を借り受ける形態のことです。派遣労働者は派遣会社に雇用されており、派遣先企業で働くことになります。派遣先企業は直接雇用の手間を省き、必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保できることが派遣の特徴です。
派遣には「登録型派遣」と「常用型派遣」があります。登録型派遣は、必要に応じて派遣労働者が派遣される形態で、期間が限定されています。一方、常用型派遣は派遣会社が労働者を常時雇用し、長期的に派遣する形態です。
派遣労働者は派遣先企業の指揮命令のもとで業務を行うため、派遣先企業の社員と同様に業務に従事し、指示を受けることができます。ただし、雇用契約は派遣会社との間にあるため、給与や福利厚生は派遣会社から提供されます。
■二重派遣とは
二重派遣とは、派遣された労働者がさらに別の会社に派遣されることを指します。二重派遣は労働者の権利を侵害する可能性があるため、企業は適切な契約と管理を行い、法令遵守を徹底することが重要です。二重派遣は法律で禁止されており、適切な手続きが行われないまま行われると違法行為となります。
二重派遣の問題点としては、労働者がどの企業の指揮命令に従うべきかが不明確になることが挙げられます。この結果、労働者の権利が守られず、労働条件が悪化する可能性があります。また、企業にとっても法令違反として罰則を受けるリスクがあるため、注意が必要です。
このような問題を防ぐためには、派遣先企業と派遣元企業がしっかりと契約内容を確認し、労働者がどの企業の指示を受けるのかを明確にすることが重要です。派遣契約の際には、労働者の指揮命令系統をはっきりさせ、二重派遣に該当しないように注意するようにしましょう。
2. 派遣は再委託にあたるのか
■派遣社員が業務を行う場合は再委託にあたらない
自社に派遣されている派遣社員が自社の業務を行う場合は、再委託にあたりません。派遣契約においては、派遣先企業が派遣社員に対して直接指示を出し、業務を遂行する形態だからです。再委託で実際に業務を行う労働者は第三者に該当しますが、派遣の場合は派遣元企業と派遣先企業の間で労働力を提供する契約が結ばれ、派遣社員は派遣先の指揮命令下で働くため、第三者とは異なります。
■派遣会社との契約は再委託にあたる
派遣会社と業務委託契約を締結し、自社が受託した業務を派遣会社の従業員が行う場合は、再委託にあたると考えられます。派遣会社と業務委託契約を締結した企業は、派遣会社の従業員に対し、直接の指揮命令権を持たないからです。
3. 派遣社員の業務が再委託にあたらない理由
派遣社員の業務が再委託にあたらない理由は以下の2つです。
- 派遣先に指揮命令権があるから
- 派遣契約は労働力を提供する契約だから
それぞれの理由について詳しく解説します。
■派遣先に指揮命令権があるから
派遣社員の業務が再委託にあたらない理由の1つ目の理由は、派遣先に指揮命令権があるからです。派遣契約では、派遣社員は派遣先企業の指示に従って業務を行います。この点が、業務の進行や内容について委託元の指揮命令を受けることがない再委託と異なる大きな特徴です。
■派遣契約は労働力を提供する契約だから
派遣社員の業務が再委託にあたらない理由の2つ目の理由は、派遣契約は労働力を提供する契約だからです。
再委託は特定の業務やプロジェクトを他の企業に任せることを指しますが、派遣契約は派遣元企業が派遣先企業に労働者を提供し、その労働者が派遣先企業の指示のもとで業務を行います。
4. 派遣契約の注意点
派遣契約における再委託の注意点は以下の2つです。
- 二重派遣に該当していないか
- 偽装請負に該当していないか
それぞれの注意点について詳しく解説します。
■二重派遣に該当していないか
二重派遣とは、派遣元企業が派遣した労働者を、派遣先企業が別の企業に派遣する行為です。二重派遣は法律で禁止されており、発覚した場合には罰則が科される可能性があります。
二重派遣が発生する背景には、業務の急増や専門的なスキルを持つ人材の不足などが挙げられます。二重派遣を避けるためには、派遣元企業と派遣先企業との契約内容をしっかりと確認し、業務内容が明確に定義されているかを確認することが重要です。
また、派遣先企業は、派遣労働者がどの業務に従事しているのかを常に把握し、他の企業での業務が発生していないか管理を徹底する必要があります。
■偽装請負に該当していないか
偽装請負とは、表向きは請負契約として見せかけながら、実際には雇用契約の形態をとっている状態です。具体的には、請負契約にもかかわらず、派遣先が労働者に直接指示を出し、業務を行わせる場合が該当します。偽装請負は法律的に問題が生じる可能性があるため、注意が必要です。
偽装請負が問題となる理由は、労働者の保護が不十分になる点にあります。派遣契約であれば派遣法に基づく労働者の権利が守られますが、偽装請負では労働者の権利が曖昧になってしまうわけです。
5. 再委託と派遣の具体例
■再委託に該当する契約の具体例
再委託に該当する契約の具体例としては、ソフトウェア開発や建設工事が挙げられます。たとえば、ある企業が自社で開発する予定のソフトウェアを、専門的な技術を持つ外部のIT企業に再委託するケースです。この場合、最初の企業は開発の全体的な管理を行い、具体的なプログラムの作成やテストは再委託先の企業が担当します。
また、建設業界では、総合建設会社が建物の建設を引き受け、その一部の工事を専門の下請け業者に再委託することがあります。例えば、電気工事や配管工事など特定の技術を必要とする部分を再委託することで、全体のプロジェクトを効率的に進めることが可能です。
■派遣に該当する契約の具体例
派遣に該当する契約の具体例として、多くの企業が活用しているのがオフィスでの事務職派遣です。派遣社員が派遣先のオフィスで、データ入力や電話対応、書類整理などの日常業務を行うケースが一般的です。この場合、派遣社員は派遣先企業から直接の指揮命令を受けるため、業務内容や勤務時間などの管理は派遣先が行います。
また、IT業界では、システムエンジニアやプログラマーの派遣も一般的です。これらの職種では、プロジェクト単位で派遣されることが多く、派遣先のプロジェクトチームの一員として働きます。派遣先の指示に基づいてプログラム開発やシステム保守を行うため、技術力を活かしたい方にとって魅力的な選択肢となります。
6. まとめ
今回は、再委託と派遣契約の違いや派遣契約における再委託の注意点について解説しました。
再委託と派遣は業務の外部委託方法として多くの企業で利用されていますが、トラブルを未然に防ぐためには、それぞれの特徴や法律上の違いを理解することが重要です。本記事で解説した再委託と派遣契約の違いや派遣契約における再委託の注意点を参考に、自社のビジネスにとって最適な選択をしましょう。
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