「サプライチェーンにおけるBCP対策とは何か」「サプライチェーンではなぜBCP対策が重要なのか」「どうやってサプライチェーンのBCP対策を実施すれば良いのか」など、疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、サプライチェーンにおけるBCP対策の概要からサプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由、サプライチェーンにおけるBCP対策事例について解説します。
1. サプライチェーンにおけるBCP対策とは
一般的なBCP対策では自社だけを意識して対策を実施しますが、さまざまな企業が連動してビジネスを展開するサプライチェーンにおいては、自社だけでなく取引のある企業もBCP対策を実施している必要があります。
たとえば、自然災害で原材料を供給してもらっている企業が被害を受けた場合、自社の商品を製造することが出来なくなってしまいます。
また、小売店が被害を受けて営業できない状態が長引けば、製造した商品を納品できなくなるでしょう。
社内に向けたBCP対策を実施するだけでは、上記のような問題を防ぐことができません。
サプライチェーンにおいては、自社だけでなくサプライチェーン全体でBCP対策を実施することが重要です。
■BCP対策とは
BCP対策とは、自然災害やテロ、情報漏えいなどに対し、平常時に取り組む活動や被害が発生した際の対応を事前に決めておくことです。
事業継続計画を意味するBusiness Continuity Planの頭文字を取って、BCPと表記されます。
BCP対策を実施する目的は以下の通りです。
- 被害を最小限に抑える
- 事業を継続できる状態に早期復旧する
BCP対策が実施されていないと、事業を大幅に縮小あるいは廃業したり、倒産したりする恐れがあります。
BCP対策は1980年代から重視されていますが、2011年の東日本大震災や2020年の新型コロナウイルス流行により特に関心を持つ企業が増加しています。
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■サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、原材料の調達から原材料の管理、製造、在庫管理、商品の配送、販売といった、製造業における一連の流れを指す用語です。
サプライチェーンではさまざまな企業や子会社、海外拠点などが関わるため、いずれかの企業がなんらかの理由で事業を継続できなくなると、サプライチェーンに関わる他の企業にも大きな影響を与える恐れがあります。
サプライチェーンリスクの具体例
- 物流の停滞
- システム障害
- 人員不足
- 連鎖倒産
近年では中小企業のBCP対策・リスク管理に対する不備を狙ったサプライチェーン攻撃が発生するケースも増加しており、サプライチェーンにおけるBCP対策が重視されています。
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2. サプライチェーンが直面する主なリスク要因
サプライチェーンが直面する主なリスク要因は以下の3つです。
- 地震や台風などの予測困難な自然災害
- パンデミックや感染症拡大による活動制限
- サイバー攻撃やシステム障害などのセキュリティリスク
それぞれのリスク要因について詳しく解説します。
■地震や台風などの予測困難な自然災害
サプライチェーンが直面する1つ目のリスク要因は、地震や台風などの予測困難な自然災害です。
地震や台風などの自然災害は予測が難しく、発生した際には物流の停止や施設の損壊など、サプライチェーン全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に日本は地震が多発する地域であり、企業は自然災害のリスクを常に考慮に入れる必要があります。
自然災害による影響は製造拠点の停止や輸送ルートの遮断といった形で現れ、製品の供給が滞り、顧客への納品が遅れる事態が発生します。サプライチェーンがグローバル化している現代では、1つの拠点が被災するだけで、世界中の供給網に影響が及ぶこともあるでしょう。
■パンデミックや感染症拡大による活動制限
サプライチェーンが直面する2つ目のリスク要因は、パンデミックや感染症拡大による活動制限です。
感染症が広がると、政府や自治体による活動制限が実施され、工場の稼働停止や物流の遅延が発生し、製品の供給が途絶える可能性があります。また、感染症の影響で労働力が不足し、生産ラインが停止することも考えられます。
■サイバー攻撃やシステム障害などのセキュリティリスク
サプライチェーンが直面する3つ目のリスク要因は、サイバー攻撃やシステム障害などのセキュリティリスクです。
ランサムウェアによる攻撃では、データが暗号化され、身代金を要求されることがあります。サプライチェーン全体の運営が滞り、納期遅延や生産停止といった問題が発生するかもしれません。
また、サーバーダウンやネットワークの不具合などのシステム障害は、情報の流れを妨げ、迅速な対応が求められる状況を生むことがあります。情報共有が鍵となるサプライチェーンでは、リアルタイムでのコミュニケーションが途絶えることは致命的です。
3. サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由は以下の通りです。
- 連鎖倒産する可能性がある
- 自社の事業が停止する恐れがある
- サプライチェーン攻撃が増加している
- ビジネスのグローバル化が進んでいる
- グローバル化・複雑化する調達ネットワークの脆弱性
- サプライヤーの事業中断が自社に与える深刻な影響
- 顧客や取引先に対する供給責任と企業ブランドの保護
それぞれの理由について解説します。
■連鎖倒産する可能性がある
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の1つ目は、連鎖倒産する可能性があるからです。
従来のBCP対策であれば、自然災害やテロなどの脅威が自社に与える影響について考えるだけで問題ありません。
一方、サプライチェーンにおいては、取引のある企業が被害を受けた場合に連鎖的に自社も影響を受けてしまう可能性が高いです。
自社と取引のある企業が倒産することで、連鎖的に自社も倒産するかもしれません。
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製造した商品を小売・卸売企業へ商品を納品している企業の場合の例 小売・卸売企業が倒産すると商品を納品出来なくなる |
上記のように、自社だけでなくサプライチェーンに関わる他の企業(取引先)が被害を受けているか、事業を存続できるかについても意識する必要があります。
■自社の事業が停止する恐れがある
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の2つ目は、自社の事業が停止する恐れがあるからです。
他の企業と直接関りを持たず自社だけで完結するビジネスを営む企業では、他の企業のBCP対策を意識する必要はありません。
一方、サプライチェーンのように複数の企業が連動して展開するビジネスの場合、自社と取引のある取引先が被害を受けてしまうと、自社の事業を停止せざるを得ない状況に陥る恐れがあります。
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取引先から原材料の供給を受けて商品を製造する企業の場合の例 取引先が倒産すると原材料が供給されなくなる |
■サプライチェーン攻撃が増加している
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の3つ目は、サプライチェーン攻撃が増加しているからです。サプライチェーン攻撃とは、標的とする企業を攻撃するために、その企業と取引をしている他の企業を経由するサイバー攻撃です。サプライチェーン攻撃では、セキュリティ対策が充実した企業でもサイバー攻撃の被害を受ける恐れがあります。
また、近年では取引をしている企業だけでなく、企業が利用しているIT機器やシステム、ソフトウェア、オンラインサービスを経由してサイバー攻撃を仕掛けるサプライチェーン攻撃も増加しています。
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■ビジネスのグローバル化が進んでいる
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の4つ目は、ビジネスのグローバル化が進んでいるからです。近年では原材料の調達から製品の提供に至るまでの一連のプロセスを、日本国内だけでなく海外も含めて行うケースが増加しています。
世界中のリソースを活用するグローバルサプライチェーンは、最適なコストと品質で製品を提供するための重要な手段です。特に、製造業や小売業においては、競争力を維持するために欠かせない要素となっています。
日本とは異なる法律や文化、風習に対応し、地政学的リスクに備えるためにも、サプライチェーン全体でのBCP対策が欠かせません。
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■グローバル化・複雑化する調達ネットワークの脆弱性
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の5つ目は、グローバル化・複雑化する調達ネットワークの脆弱性です。
サプライチェーンが国際的に広がることで、自然災害や政治的な変動、さらには国境を越えた物流の遅延など、さまざまなリスクに直面する可能性が高まります。さらに、複雑化した調達ネットワークでは、情報の伝達が遅れ、問題が発生しても迅速に対応できず、損失が拡大するかもしれません。
代替調達先の確保や物流ルートの多様化により、このような状況を避けることが可能です。
調達ネットワークの脆弱性を補強し、予期せぬ事態にも柔軟に対応できるようになります。
■サプライヤーの事業中断が自社に与える深刻な影響
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の6つ目は、サプライヤーの事業中断が自社に与える深刻な影響です。
重要な部品を供給するサプライヤーが災害や経済的な問題で事業を中断すると、自社の製造ラインが止まり、最終製品の供給が遅れる可能性があります。このような事態は、顧客への信頼を損ね、企業のブランドイメージにも悪影響を与えるでしょう。
■顧客や取引先に対する供給責任がある
サプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由の7つ目は、顧客や取引先に対する供給責任があるからです。
企業は製品やサービスを安定して提供することで、顧客や取引先の信頼を得ています。しかし、自然災害や予期せぬトラブルが発生した場合、供給が途絶えるリスクがあります。こうした状況での供給の中断は、顧客の信用を失うだけでなく、取引先との関係にも悪影響を及ぼすかもしれません。
BCPの策定により供給網の脆弱性を把握し、代替手段を用意することで、災害時でも迅速に対応し、顧客への影響を最小限に抑えることができます。さらに、企業がBCP対策をしっかりと実行していることは、顧客や取引先に対する信頼性の証明となり、企業ブランドの保護にもつながります。
4. サプライチェーンにおけるBCP対策事例
サプライチェーンにおけるBCP対策事例は以下の通りです。
- 特定の企業に依存しすぎない
- 取引先・委託先の選定基準を見直す
- サプライチェーン全体でガイドラインを作成する
- 取引先・委託先がBCP対策を実施しているかを確認する
それぞれの事例について解説します。
■特定の企業に依存しすぎない
サプライチェーンにおけるBCP対策事例の1つ目は、特定の企業に依存しすぎないことです。
たとえば、特定の取引先のみから原材料の供給を受けて商品を生産している企業の場合、なんらかの理由によって取引先からの原材料の供給が停止すると、自社の生産も停止することになってしまいます。
特定の企業だけに依存するのではなく複数の企業と取引するようにしておくことで、自社に与えるリスクを分散でき、被害を最小限に抑えることが可能です。
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■取引先・委託先の選定基準を見直す
サプライチェーンにおけるBCP対策事例の2つ目は、取引先・委託先の選定基準を見直すことです。
品質や価格、提供するサービスのクオリティなどはもちろん重要ですが、BCP対策状況を考慮せずに取引先・委託先を選定すると、自然災害が発生した際に対応ができず、復旧までに時間がかかったり、最悪倒産にいたる恐れがあります。
従来の選定基準に加えて、BCP対策を作成しているか、想定されるリスクに対策を実施しているかといった点についても意識して選定することが重要です。
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■サプライチェーン全体でガイドラインを作成する
サプライチェーンにおけるBCP対策事例の3つ目は、サプライチェーン全体でガイドラインを作成することです。
サプライチェーンに関わるそれぞれの企業でBCP対策を実施していたとしても、自社と取引先の基準が同じとは限りません。
自社の基準と比べて取引先の基準が著しく低ければ、想定外の事態に対して自社だけは対応できたとしても、取引先では十分な対応が出来ないかもしれません。
共通のガイドラインを作成することで、サプライチェーン全体で不測の事態に対応できるようになります。
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参考:NECグループにおける共通のBCP対策の基本⽅針
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■取引先・委託先がBCP対策を実施しているかを確認する
サプライチェーンにおけるBCP対策事例の4つ目は、取引先・委託先がBCP対策を実施しているかを確認することです。
サプライチェーンでは自社と取引のある企業でトラブルが発生すると連鎖的に自社も影響を受けてしまうので、取引先・委託先でBCP対策が十分に行われているかについて確認しておく必要があります。
取引先・委託先が十分なリスク管理を行っているか、特定の再々委託先に依存していないか、効果的なセキュリティ対策を実施しているかなど、BCP対策の実施状況を継続してチェックすることが重要です。
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委託先管理とは?目的や必要な理由、実施する際のポイントを解説
5. まとめ
今回は、サプライチェーンにおけるBCP対策の概要からサプライチェーンにおいてBCP対策が重要な理由、サプライチェーンにおけるBCP対策事例について解説しました。
サプライチェーン全体でBCP対策が実施されていなければ、自社あるいは自社と取引のある企業のいずれかが被害を受けると、サプライチェーン全体に影響を与えてしまう恐れがあります。
自社に与える被害を軽減するためには、取引先・委託先のリスク管理が欠かせません。
自社で取引先・委託先のリスク管理を行うには手間と時間がかかりますが、委託先リスク管理サービスを利用することで、自社の負担を大きく軽減できます。
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