「サステナブル調達とは何か」「なぜサステナブル調達が求められているのか」「どのようにサステナブル調達を進めればよいのか」など、疑問に感じているのではないでしょうか?
本記事では、サステナブル調達の概要からサステナブル調達が求められている理由、進め方、企業事例について解説します。
1. サステナブル調達とは
サステナブル調達とは、環境や人権などの国際的な社会問題に配慮したうえで、持続可能な調達を実施することです。
サステナブル調達における調達とは、自社のビジネスに必要な資源を確保する行為を指します。サステナブル調達におけるサステナブルとは、持続可能という意味です。
たとえば、地球から資源が枯渇すると調達したくても調達することができなくなります。
また、社会的な信用が得られなくなれば、調達する取引相手がいなくなるでしょう。
自社の都合だけで資源を確保しようとするのではなく、持続可能な社会の実現に向けた調達を行うことが、サステナブル調達です。
■CSR調達との違い
サステナブル調達とCSR調達の違いは、調達する際に何を重視するかです。
サステナブル調達では「持続可能(サステナブル)」であることを重視しますが、CSR調達では「企業の社会的責任(CSR)を果たすこと」が重視されます。
環境や人権などの国際的な社会問題に配慮して調達するという点では同じです。
【関連記事】
CSR調達とは?大手企業におけるCSR調達及び委託先管理の実施状況を紹介
■グリーン調達との違い
サステナブル調達とグリーン調達の違いは、調達する際に何を重視するかです。
サステナブル調達では「持続可能(サステナブル)」であることを重視しますが、グリーン調達では「環境(グリーン)に配慮すること」が重視されます。
環境に配慮して配慮して調達するという点では同じですが、サステナブル調達では人権問題についても配慮しながら調達します。
2. なぜサステナブル調達が求められているのか
サステナブル調達が求められている理由は以下の通りです。
- 環境問題や人権問題への社会的な関心が高くなっている
- 社会情勢の変化による価格高騰に対応する必要がある
- ESG投資を行う企業が増加している
それぞれの理由について詳しく解説します。
■環境問題や人権問題への社会的な関心が高くなっている
サステナブル調達が求められている1つ目の理由は、環境問題や人権問題への社会的な関心が高くなっているからです。
1997年には、ナイキが製造を委託していたインドネシアやベトナムの工場で児童労働や長時間労働が発覚し、世界的な不買運動に発展、国際社会からの強い批判を受けました。
2021年には、中国の新疆ウイグル自治区の人権問題が注目されている中、株式会社ファーストリテイリングは中国の新疆ウイグル自治区で採れた綿花を原料として製造したのではないかと疑われ、アメリカへの輸入が差し止められています。
上記のように、児童労働や長時間労働、人権侵害を行っている企業から調達を行ったり、脱炭素化の取り組みをせずに調達を行ったりすれば、消費者から批判を受けて不買運動に繋がり、事業を継続できなくなる恐れがあります。
■社会情勢の変化による価格高騰に対応する必要がある
サステナブル調達が求められている2つ目の理由は、社会情勢の変化による価格高騰に対応する必要があるからです。
2022年のロシアのウクライナ侵略を契機として、天然ガスや石油、石炭、小麦、サーモンなどが高騰しました。2024年に発生した急激な円安では、海外からの仕入れ価格が大幅に増加しています。
上記のような価格高騰により、事業の見直しを迫られたり、廃業を検討したりする企業が増加しました。
自給率の低い日本においては自国の問題だけを考えればよいわけではなく、海外の社会情勢の動向に対応できる準備が必要です。
■ESG投資を行う企業が増加している
サステナブル調達が求められている3つ目の理由は、ESG投資を行う企業が増加しているからです。
ESG投資とは、環境問題(Environment)や社会問題(Social)、企業統治(Governance)への取り組みに力を入れている企業へ投資することです。
Environment・Social・Governanceの頭文字を取って、ESG投資と呼ばれています。
投資家がESG投資を検討する場合、投資の対象となる企業がサステナブル調達を実施しているかが基準となるわけです。
3.サステナブル調達の進め方
サステナブル調達を実施する手順は以下の通りです。
- サステナブル調達の方針を策定する
- 調達先を選定する
- 調達先をモニタリングする
それぞれの手順について解説します。
■サステナブル調達の方針を策定する
サステナブル調達を実施する手順では、始めにサステナブル調達の方針を策定します。
サステナブル調達の方針の具体例は以下の通りです。
(2-1)強制労働の禁止
|
調達方針を策定した後は、ガイドラインを作成して社内外へ公表します。
■調達先を選定する
次に、策定した方針に基づいて調達先を選定します。
ガイドラインに記載されている項目に違反していないか、十分な取り組みが行われているかをチェックし、調達先として契約しても問題ないのかを意識しながら選定することが重要です。
調達先として契約する企業に対しては、ガイドラインへの署名を求めます。
■調達先をモニタリングする
最後に、取引を行っている調達先のモニタリングを実施します。
契約を締結した段階では問題がなかったとしても、契約後に問題が発生するかもしれません。
契約締結後も、ガイドラインに記載した内容が実施されているかをチェックし、問題があれば是正措置を要求します。契約時のチェックだけでなく、継続してチェックすることが重要です。
4.サステナブル調達を実践している企業の事例
実際にサステナブル調達を実践している企業の事例をご紹介します。
■イオン株式会社
イオン株式会社では、自然資源の持続可能性と事業活動の継続的発展の両立を目指す取り組みが行われています。
2014年には以下の「イオン持続可能な調達原則」を制定しました。
- 自然資源の違法な取引・採取・漁獲を排除します。
- 生物多様性保全、自然資源枯渇防止の観点で、イオン基準を設定・運用します。
- 再生不可能な資源の利用については、最小限に留めます。
- 農産物や漁業資源の産地、漁獲方法などのトレーサビリティを確立します。
- 林産物において、保護価値の高い森林の破壊を防止します。
絶滅が危惧される水産物における取り組みでは、天然魚の「MSC認証」商品や天然まぐろ資源に依存しない完全養殖まぐろの商品の販売を開始しています。
参考資料:イオン持続可能な調達原則
■セブン&アイグループ
セブン&アイグループでは、自然資源の枯渇や生物多様性の損失、児童労働、強制労働といった、原材料の調達をめぐるさまざまな課題に対して真摯に向き合い、人権や環境に配慮した持続可能な調達を推進しています。
セブン&アイグループにおける持続可能な調達原則は以下の通りです。
原則1.コンプライアンス・国際的な規範の尊重 |
■味の素株式会社
味の素株式会社では、サプライチェーンで働く人々の人権が侵害されない労働環境を守り、森林破壊や泥炭地の開発による水資源や土壌の汚染を防止する取り組みが行われています。
味の素グループにおける主な取り組みは以下の通りです。
- サプライチェーン上の課題の可視化
- 人権影響評価の実施
- アニマルウェルフェアの推進
- トレーサビリティの確立および認証品購買の推進
- 公正な競争の確保と従業員教育の徹底
- コプロ活用による持続可能な農業への貢献
5. まとめ
今回は、サステナブル調達の概要からサステナブル調達が求められている理由、進め方、企業事例について解説しました。
環境問題や人権問題に対する社会的な関心の向上や社会情勢の変化による価格高騰、ESG投資を行う企業の増加などにより、サステナブル調達が重視されるようになっています。
本記事で解説したサステナブル調達の進め方やサステナブル調達を実践している企業の事例を参考に、サステナブル調達への取り組みを検討してみましょう。
アトミテックでは、委託先リスク管理の手順をまとめた委託先リスク管理ガイドを公開しています。ぜひ自社の委託先管理の参考になさってください。