「紛争鉱物とはどの鉱物を指すのか」「なぜ紛争鉱物が問題視されているのか」「紛争鉱物の取引に関する規制はあるのか」など、疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、紛争鉱物の概要から紛争鉱物が問題視されている理由、各国の規制について解説します。
1. 紛争鉱物とは
紛争鉱物とは、中央アフリカのコンゴ民主共和国及び隣接国で採掘されている、錫(スズ)・タングステン・タンタル・金の4種類の鉱物です。
スズ・タングステン・タンタル・金が武装勢力の資金源となっており、紛争の要因となっていることから、紛争鉱物と呼ばれています。
錫(Tin)・タングステン(Tangsten)・タンタル(Tantalum)、金(Gold)の頭文字を取って、3TGと呼ばれるケースもあります。
紛争鉱物は、パソコンやスマートフォンに代表される電子機器の原材料として使用・取引されるケースが多い鉱物です。
2. 紛争鉱物が問題視されている背景・経緯
紛争鉱物が問題視されているのは、紛争鉱物の採掘権をめぐる武装勢力の紛争により、現地民の人権が侵害されているからです。
中央アフリカのコンゴ民主共和国及び隣接国では、錫やタングステン、タンタル、金などの鉱物の採掘に際し、現地民が強制的に働かせられたり、児童が採掘させられるケースがあります。
上記のような人権を無視した環境で採掘された鉱物資源を取引することは、取引する国や企業が人権侵害に加担していることになるとして、紛争鉱物が問題視されているわけです。
また、紛争鉱物の採掘は武装勢力の資金源ともなっており、採掘で得た資金を武器調達に使用するなど、武装勢力の拡大や紛争の長期化の要因となっています。
3. 紛争鉱物に対するガイダンス・規制
紛争鉱物の取引が規制されているのは、アメリカやEUです。
日本には紛争鉱物の取引に関する規制はありませんが、日本も加盟しているOECDではガイダンスを作成しており、各企業にはそのガイダンスに従って自社の活動を推進するよう推奨しています。
それぞれのガイダンス・規制について解説します。
■OECD(経済開発協力機構)
OECDは、2010年に「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を公開しました。
上記ガイダンスでOECDが求めているのは以下の5つです。
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参考資料:OECD 紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス(仮訳)
■アメリカ
アメリカでは、2010年に米国金融規制改革法、通称ドッド・フランク法が制定されました。
米国金融規制改革法1502条では、アメリカ国内の上場企業に対し、製品を製造する過程における紛争鉱物の必要性および使用の有無をアメリカ証券取引委員会へ報告することと、企業ホームページへの開示を義務付けています。
ドッド・フランク法で指定された紛争鉱物は以下のとおりです。
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■EU
EUでは、2017年に「紛争地域及び高リスク地域を原産とする錫、タンタル、タングステン、それらの鉱石、及び金のEU輸入者のサプライチェーン・デューデリジェンスを定める欧州議会及び欧州理事会規則」(紛争鉱物規則)を制定し、2021年から規制を実施しています。
ドッド・フランク法で規制されているのは中央アフリカのコンゴ民主共和国及び隣接国で採掘されている錫、タングステン、タンタル、金(Gold)の4つのみですが、EUの紛争鉱物規則では、金属・鉱物が採掘された国・地域にかかわらず、紛争地域で採掘された金属・鉱物が規制の対象となっています。
対象鉱物
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対象金属
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参考資料:EU 紛争鉱物規則「EnviX」
■日本
日本には、紛争鉱物の取引に関する規制はありません。
一方、2012年に電子情報技術産業協会(JEITA)が「責任ある鉱物調達検討会」を設立し、47企業が参加しています。
責任ある鉱物調達検討会が設立された目的は、責任ある鉱物調達の実現と、米国ドッド・フランク法などに関連する規制へ対応することです。
「責任ある鉱物調達」とは、CSRの観点から、人権侵害に加担する鉱物を使用しないように努めることです。
参考資料:責任ある鉱物調達検討会について「電子情報技術産業協会(JEITA)」
また、紛争鉱物を扱う国内企業は、責任ある鉱物調達に関する方針を作成し、WEB上に公開するケースも多くなっています。
4. まとめ
今回は、紛争鉱物の概要から紛争鉱物が問題視されている理由、各国の規制について解説しました。
中央アフリカのコンゴ民主共和国及び隣接国で採掘されている錫・タングステン・タンタル・金の4種類の鉱物が、紛争鉱物です。
紛争鉱物は武装勢力の資金源となっており、紛争の要因となっていることから、世界各国で取引が規制されています。
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