「CSR調達とは何か」「大手企業ではCSR調達や委託先管理をどの程度実施しているのか」など、疑問に感じているの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、CSR調達の概要と大手企業におけるCSR調達及び委託先管理の実施状況について解説します。
1. CSR調達とは
CSR調達とは、自社の社会的責任を意識したうえで、調達する企業の選定や取引条件の設定、調達先との関係構築を行うことです。
一般的な調達先の選定では、調達する資材や原料の品質・価格が重視されています。
一方、CSR調達では、企業としての利益だけを重視して調達先を選定するのではなく、調達先の労働環境が整備されているか、従業員の人権は守られているか、環境への配慮がなされているかなどについても考慮した上で調達先を選定します。
顧客や投資家に対して自社が社会的責任を留意して調達先を選定していることをアピールし、企業としてのブランドイメージ向上や国際的な競争力の向上を図ることが、CSR調達の目的です。
CSR調達を行う企業の中には、CSR調達ガイドラインを策定・公開しているケースもあります。
【関連資料】
■CSRとは
CSRとは、利害関係者である顧客や従業員、株主、地域社会に対する企業の社会的責任を意味する用語です。
Corporate Social Responsibilityの頭文字を取って、CSRと表記されます。
単なる法令遵守を超えて持続可能な社会の実現を目指す活動であり、企業が経済的利益だけでなく、社会や環境に対しても責任を持つべきであるという考え方に基づいています。
CSRが重視されているのは、環境問題や社会的課題が顕在化し、企業活動がこれらに与える影響が無視できなくなっているからです。消費者や投資家の意識も変化し、企業の社会的責任を評価する視点が強まっています。そのため、企業はCSR活動を通じて社会的価値を創出し、ステークホルダーとの信頼関係を築くことが求められています。
国際標準化機構(International Organization for Standardization)によって定められた「ISO26000」では、企業がCSRを果たしていく上で以下の7つの原則を考慮して行動することが求められています。
|
【関連記事】
CSR(企業の社会的責任)とは?CSR活動のメリット・デメリットを解説
■グリーン調達・サステナブル調達との違い
CSR調達とグリーン調達・サステナブル調達の違いは、調達先を選定する際の基準です。
CSR調達では労働環境や従業員の人権、地球環境など社会的責任を意識して調達先を選定しますが、グリーン調達・サステナブル調達では地球環境のみを意識して選定します。
つまり、グリーン調達・サステナブル調達はCSR調達の下位の概念であり、CSR調達の中にグリーン調達・サステナブル調達が含まれると言えるでしょう。
【関連記事】
サステナブル調達とは?求められている理由や進め方、企業事例を解説
■企業におけるCSR調達の重要性
企業においてCSR調達が重視されているのは、持続可能な経営と社会的責任の両立ができるからです。企業がCSR調達を実施することで、環境や社会に与える影響を考慮しながら、倫理的なサプライチェーンを構築できます。近年では、自社の製品がどのような過程で作られているのか、環境に優しいのかを重視する消費者が増えているため、企業のブランド価値向上や信頼性の確保のためにも、CSR調達に取り組むことが重要です。また、CSR調達を通じて、企業は規制への適合やリスク管理を強化し、長期的な競争力を維持できます。
2. 大手企業におけるCSR調達及び委託先管理の実施状況
株式会社日本能率協会総合研究所の調査による、大手企業におけるCSR調達及び委託先管理の実施状況をご紹介します。
【調査実施概要】
調査時期: 2023年3月 |
参考資料:大手企業における取引先モニタリング(外部委託先管理)取組み状況について① ~取引先へのコンプライアンス/CSR調達に関する実態把握状況について~
【ガバナンス強化に関する外部委託先管理実態調査】大手企業におけるコンプライアンス、CSR調達に関する取引先へのモニタリング(外部委託先管理)取組み状況について
■取引先(サプライヤー)のコンプライアンス等に関する取組みの把握状況
画像引用元:【ガバナンス強化に関する外部委託先管理実態調査】大手企業におけるコンプライアンス、CSR調達に関する取引先へのモニタリング(外部委託先管理)取組み状況について
アンケートに回答した155社のうち約9割を占める134社が、アンケートやヒアリングといった方法で、取引先に対してコンプライアンス・CSR調達の実施状況の調査を行っています。
2年前に実施した調査と比較すると、取引先の取組みを確認している企業が1割程度増加しているようです。
非製造業と比べると、製造業の方が取引先に対する取り組み状況の把握に力を入れています。
■取引先(サプライヤー)への調査実施における外部専門機関の活用実態
画像引用元:【ガバナンス強化に関する外部委託先管理実態調査】大手企業におけるコンプライアンス、CSR調達に関する取引先へのモニタリング(外部委託先管理)取組み状況について
取引先の取り組み状況の把握を実施した134社のうち、調査会社やコンサルタント、監査法人といった外部専門機関を利用した企業は、約4割を占めています。
また、製造業と比べると、非製造業の方が外部専門機関を利用する割合が高くなっています。
■取引先へのモニタリング(外部委託先管理)に外部専門機関を活用している理由
画像引用元:【ガバナンス強化に関する外部委託先管理実態調査】大手企業におけるコンプライアンス、CSR調達に関する取引先へのモニタリング(外部委託先管理)取組み状況について
取引先へのモニタリング(外部委託先管理)に外部専門機関を活用している理由とそれぞれの割合は以下の通りです。
理由 | 割合 |
外部調査機関のノウハウに基づく高度な調査・分析を期待しているから | 69.6% |
お取引先様から可能な限り、忖度のない本音の回答を得るため | 67.9% |
社内/社外に向けて情報発信を行う上で、外部委託先を活用する必要性を感じたから(株主などのステークホルダーからの信頼性を高めるためなどを含む) | 44.6% |
自社のみでは分性や改善に向けた取組み限界を感じるから | 33.9% |
膨大な取引先を有しており、自社リソースのみでは調査やヒアリングの対応が難しいから | 23.2% |
3.CSR調達のメリット
■経営リスクの軽減効果
CSR調達は企業が社会的責任を果たすための調達活動であり、経営リスクを軽減する効果があります。具体的には、倫理的な問題や環境への配慮が不十分な取引先と関わることで発生するリスクを未然に防ぐことができます。例えば、環境基準を満たさない企業と取引を続けると、法的な問題や企業イメージの悪化を招く恐れがあります。CSR調達を実践することでこうしたリスクを回避し、持続可能なビジネスモデルを構築することが可能です。
■競争優位性の向上
CSR調達を導入することで、企業は競争優位性を向上させることができます。持続可能な調達を通じて企業の信頼性が高まり、消費者や取引先からの評価が向上するためです。例えば、環境に配慮した製品を提供することで、環境意識の高い消費者からの支持を得ることができるでしょう。また、CSR調達を実施する企業は、リスク管理がしっかりしていると見なされ、取引先や投資家からの信頼も得やすくなります。
4. まとめ
今回は、CSR調達の概要と大手企業におけるCSR調達及び委託先管理の実施状況について解説しました。
大手企業におけるCSR調達及び委託先管理の実施状況から、調査会社やコンサルタント、監査法人といった外部専門機関を利用した企業が約4割を占めており、取引先へのモニタリング(外部委託先管理)を自社内で内製化することが困難だと感じる企業が多いことが分かります。
外部委託先管理の内製化が困難だと感じる場合には、外部専門機関を利用しましょう。
■委託先リスク管理サービス「VendorTrustLink」
弊社では、委託先管理に課題を抱える事業者に向けて、委託先リスク管理サービス「VendorTrustLink」を提供しています。
委託先や取引先に関連する情報を一元管理し、リスクを可視化できるサービスです。
委託先のリスク管理作業を効率化でき、監査にかかる工数を削減できます。
委託先リスク管理業務において以下のような課題を抱える事業者におすすめのサービスとなっています。
- チェックシートの送信や回収が手間
- 委託先一覧の管理や更新ができていない
- 業務が属人化しており後継者がいない
委託先管理にお悩みであれば、製品についてお気軽にお問合せください。