取適法(下請法)が適用される製造委託とは?OEM・ODMとの違いやメリットを解説

製造委託は企業が製品を作る際に重要な選択肢の一つですが、取適法(下請法)などの法律や専門用語の理解が難しいと感じることもあるのではないでしょうか。

本記事では、取適法(下請法)が適用される製造委託の概要からOEM・ODMとの違い、メリットまで詳しく解説します。

1. 製造委託とは

製造委託とは、製品の製造を他の企業に依頼することです。取適法(下請法)第2条で定義されています。コスト削減や市場への迅速な対応が可能になり、製品開発や生産の効率化を図ることができます。

製造委託は、特に中小企業や新興企業にとって大きなメリットをもたらします。自社で全てを賄うと多額の設備投資や人材育成が必要ですが、製造委託を活用することで、これらの負担を大幅に軽減できます。また、専門性の高い製造技術を持つ企業に委託することで、品質の向上や新しい技術の導入も期待できます。

例えば、化粧品業界では自社ブランドを展開する企業が製造委託を利用して、OEM(相手先ブランドによる製造)やODM(相手先ブランドによる設計・製造)を活用し、製品の多様化や市場投入のスピードアップを実現しています。

 

■製造と加工の違い

製造とは、原材料を使って新しい製品を作り出すプロセスを指します。たとえば、鉄鉱石から鉄を作り、それを使って車を製造することが製造の一例です。一方、加工は既存の製品や材料に手を加えることで、形状や機能を変化させることを指します。例えば、木材を切って家具を作ることや、金属を曲げて部品を作ることが加工の一例です。

ただし、取適法(下請法)においては製造と加工を明確に区分しておらず、製品の加工を依頼することも製造委託に含まれます。

 

■製造委託の具体的な事例

製造委託の具体的な事例として、食品業界を挙げることができます。多くの食品メーカーが自社ブランドの商品を製造する際、特定の工程や製品の一部を外部の専門業者に委託しています。例えば、スナック菓子の製造において、袋詰めの工程を別の企業に任せることで、メーカーは自社の製造ラインを効率的に活用し、コスト削減を図るわけです。

次に、アパレル業界でもデザインや企画を行う企業が、実際の縫製や仕上げを海外の工場に委託するケースが多く見られます。また、電子機器業界ではスマートフォンや家電製品の部品製造や組み立てを専門の工場に委託することで開発に集中し、新製品の市場投入を迅速に行っています。

このように、製造委託は多くの業界で活用され、効率化やコスト削減に貢献しています。

 

■対象となる目的物

取適法(下請法)においては、製品の製造だけでなく、部品や製造過程で使用される材料、製造に用いるための金型などの製造も、製造委託の対象となります。

例えば、家電製品の製造委託では、完成品だけでなく、その内部に使用される部品や素材も対象となるわけです。また、食品業界では、最終製品だけでなく、原材料の加工も含まれることがあります。

 

 

2. 製造委託と取適法(下請法)の関係

製造委託は、取適法(下請法)第2条で定義された取引です。

 

この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくは専らこれらの製造に用いる金型、木型その他の物品の成形用の型若しくは工作物保持具その他の特殊な工具又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又は専らこれらの製造に用いる当該型若しくは工具の製造を他の事業者に委託することをいう。


引用:取適法(下請法)第2条

 

事業者との取引が製造委託に該当する場合、取適法(下請法)の適用を受けます。

 

■取適法(下請法)の概要

取適法は、下請業者に対する不当な取引条件を防ぐための法律です。正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」と言います。

2026年1月に下請法(下請代金支払遅延等防止法)が改正され、名称も変更されました。

取適法(下請法)が適用される取引

取適法(下請法)が適用される取引として、製造委託以外にも以下の取引があります。

  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託
  • 役務提供委託
  • 特定運送委託

2026年1月に施行された下請法改正で、特定運送委託と木型・治具などの製造委託も取適法(下請法)の対象になりました。

 

■製造委託が取適法(下請法)の適用を受けるケース

製造委託が取適法(下請法)の適用を受けるのは、親事業者が下請事業者に対して製品や部品の製造を依頼し、その対価を支払う場合です。例えば、大手メーカーが中小企業に対して部品の製造を委託するケースが該当します。この場合、大手メーカーは親事業者、中小企業は下請事業者となり、取適法(下請法)が適用されます。

また、製造委託が取適法(下請法)に該当するためには、事業者の規模が考慮されます 。2026年1月からは、従来の資本金による基準に加えて、新たに「従業員数による基準」が追加されました 。資本金が小さな事業者であっても、常時使用する従業員数が一定(製造委託の場合は300人)を超える場合には、取適法(下請法)の適用対象となるわけです 。

 

 

3. 製造委託とOEM・ODMの違い

製造委託は、企業が自社の製品を他社に製造させることで、コスト削減や生産効率の向上を図る手法です。一方、OEMとODMは製造委託の手法の一つで、それぞれ異なる特徴とメリットがあります。

例えば、自社製品の開発に時間とコストをかけたくない企業は、ODMを選ぶことで製造業者の専門性を活かしつつ迅速に製品を市場に投入できます。OEMはブランドイメージを大切にしたい企業に向いています。

 

■OEMの特徴

OEMとは、Original Equipment Manufacturerの略称で、自社ブランドの製品を他社に製造してもらう形態を指します。製造元である企業が製品の仕様を決定し、外部の事業者が製造元のブランド名で製品を製造するわけです。OEMは製品開発や製造にかかるコストや時間を削減できるため、多くの企業が活用しています。

OEMは自社で製造設備を持たずに生産を委託できるため、初期投資が少なく済みます。また、製造を専門とする企業に委託することで、高品質な製品を安定的に供給できる可能性が高まります。さらに、製品の生産量を需要に応じて柔軟に調整できるため、在庫リスクを最小限に抑えられるのも大きな利点です。

 

■ODMの特徴

ODM(Original Design Manufacturer)は、製品の設計から製造までを一貫して請け負う形態です。企業が自社ブランドで販売する製品を、ODM企業が設計・開発し、製造まで行います。発注企業は自社での設計や製造のリソースを削減できるため、コア業務に集中しやすくなります。

ODMの特徴として、発注企業が製品のコンセプトを提供する一方で、具体的な設計や技術的な側面はODM企業に任せることが挙げられます。これにより、発注企業は市場ニーズに迅速に対応した製品を展開しやすくなります。また、ODM企業は多くの製品を手掛けているため、製品の品質や技術力が高い場合が多いです。

ODMは、技術的なノウハウが不足している場合や、設計にかかる時間を短縮したい場合に有効です。また、ODM企業の専門知識を活用することで、製品の差別化を図ることもできます。

 

 

4. 製造委託の類型

製造委託の類型として、以下の4つがあります。

  • 物品の販売を業とする事業者が製造を委託する場合
  • 物品の製造を業とする事業者が製造を委託する場合
  • 物品の修理を業とする事業者が修理に必要な部品・原材料の製造を委託する場合
  • 自家使用・消費物品の製造を業とする事業者が製造を委託する場合

それぞれの類型について詳しく解説します。

 

■物品の販売を業とする事業者が製造を委託する場合

自社で製造ラインを持たずに製品を販売している企業が、他の事業者に製造を委託する場合です。

製造設備や技術を持つ事業者に製造を委託することで、初期投資を抑えつつ市場に製品を供給できます。

自社で製造するには多額の設備投資が必要ですが、製造委託を利用すればその必要がありません。また、製造に関する専門知識や技術が不足している場合でも、委託先の専門性を活用することで、品質の高い製品を市場に提供することが可能です。

 

■物品の製造を業とする事業者が製造を委託する場合

物品の製造を請け負っている事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合です。

自社で全ての製造工程を担うのではなく、特定の工程や部品の製造を外部の専門業者に任せることで、効率的な生産体制を構築することができます。例えば、自動車業界ではエンジン部品や電子部品の製造を専門業者に委託するケースが一般的です。

 

■物品の修理を業とする事業者が修理に必要な部品・原材料の製造を委託する場合

物品の修理を行っている事業者が、その修理に必要な部品や原材料を他の事業者に製造委託する場合です。

物品の修理を業とする事業者がすべての部品や原材料を自社で製造するのは多くの時間とコストを要するため、外部の専門業者に委託することで、迅速かつ効率的な修理が可能になります。

例えば、スマートフォンの修理を行う事業者が、特定のチップやディスプレイを製造するための設備を持っていない場合、これらを専門に扱うメーカーに委託することで、品質を確保しながらコストを抑えることができるわけです。

 

■自家使用・消費物品の製造を業とする事業者が製造を委託する場合

自社で使用・消費する物品を社内で製造している事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合です。

例えば、飲食店が自社で使用する特製ソースを外部の食品メーカーに製造委託するケースが考えられます。製造を委託することにより、飲食店は製造設備や人員にかかるコストを削減し、本来の業務である料理の提供に集中することができるわけです。

 

 

5. 製造委託のメリット

製造委託のメリットは以下の4つです。

  • 設備投資コストを削減できる
  • 生産量の増減に対応しやすい
  • 委託先の専門性を活用できる
  • 従業員を育成する負担が減少する

それぞれのメリットについて詳しく解説します。


■設備投資コストを削減できる

製造委託の1つ目のメリットは、設備投資コストを削減できることです。

自社で製造設備を整えるには多額の資金が必要ですが、製造を他社に委託することでこの負担を軽減できます。例えば、新たな製品を開発する際、自社で生産ラインを整えるのに何億円もかかるかもしれません。しかし、製造委託を利用すれば、その資金を他の重要な分野に投資することが可能です。

 

■生産量の増減に対応しやすい

製造委託の2つ目のメリットは、生産量の増減に対応しやすいことです。

需要の変動に応じて迅速に対応できるため、無駄な在庫を抱えるリスクを減少させることができます。例えば、季節商品や流行に左右される商品を扱う場合、委託先企業の生産能力を活用することで、必要な時に必要な量だけを製造することが可能です。

 

■委託先の専門性を活用できる

製造委託の3つ目のメリットは、委託先の専門性を活用できることです。

例えば、電子部品の製造を委託する場合、委託先企業は最新の技術や設備を活用して製品を作り上げます。自社で同様の技術や設備を整えるには多大な時間とコストがかかるかもしれません。専門性を持つ企業に委託することで、品質の向上や生産効率の改善が期待できます。

 

■従業員を育成する負担が減少する

製造委託の4つ目のメリットは、従業員を育成する負担が減少することです。

自社で全ての製造工程を担う場合、新たにスタッフを採用し、彼らを育成するための時間とコストがかかります。一方、製造を委託すれば、従業員を育成するためのリソースを節約することが可能です。

特に、専門的な技術や知識が求められる製造工程では、熟練したスタッフを育てるのは容易ではありません。委託先がその分野に特化している場合、すでに必要なスキルを持ったスタッフが揃っているため、育成の必要がなくなります。

 

 

6. まとめ

今回は、取適法(下請法)が適用される製造委託の概要やOEM・ODMとの違い、メリットについて解説しました。

製造委託は企業が自社製品の生産を外部に依頼する方法であり、コスト削減や生産効率の向上が期待できます。ただし、委託先とのトラブルを防ぐためには、特に下請法の理解が欠かせません。

本記事で解説した製造委託と取適法(下請法)の関係を参考に、委託先と良好な信頼関係を構築しましょう。

 

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