リスクマネジメントとは?意味や目的、具体例、手法について解説

近年、業務の複雑化やアウトソーシングの増加により、品質や情報漏洩といったリスクが増大しています。

一方で、中小企業庁によると、リスク管理部門を専任で扱う部署を設けているのは中小企業で3.9%、大企業で18.5%と低い値になっており、リスクマネジメントを適切に実施できている企業はまだまだ少ないものと思われます。
出典:中小企業庁「リスクマネジメントの必要性」


リスクマネジメントとは、企業が経営を行う際に遭遇する可能性のあるリスクやその影響を正確に理解し、事前に対策を講じることで危機を回避したり、損失を最小限に抑えるためのプロセスです。リスクマネジメントは、組織的にリスクを管理し、企業の価値を維持または増大させることを目的としており、企業の継続的な発展のためには不可欠です。

この記事では、企業が取り組むべきリスクマネジメントの方法について解説していきます。

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1. リスクマネジメントとは

リスクマネジメントとは、企業が直面する潜在的な危機や不確実性に対処するための組織的な取り組みです。潜在的なリスクを特定し、優先順位をつけてそれらへの対応方法を検討しておくことで、予期せぬ出来事や不確実性に対処し、損失や被害を最小限に抑えることを目指します。

リスクマネジメントの目的は、事業の継続性を保ち、企業の価値を最大化することです。

日本では、「これまで何も起きていないから大丈夫」、「いつ起こるかわからないものに経費をかけられない」、と考える企業も多いかと思います。しかし、いつ起こるかわからないからこそ、明日起こるかもしれないのがリスクです。

多くの費用をかけられないとしても、それぞれのリスクの影響度や頻度から優先順位をつけ、最低限の対応策を事前に講じておくことで、リスクが起こった場合にも損失を抑え、事業を継続させることが可能になります。

 

■危機管理との違い

危機管理とは、自然災害やテロ、為替の変動、原材料の高騰といった、いつ発生するか分からない危機に対して事前に準備しておくことです。発生した場合の被害を最小限に抑え、事業を継続できるようにすることを目的としています。

リスク管理と危機管理の違いは、管理を行う目的です。リスク管理ではリスクが発生しないようにすることを目的として管理しますが、危機管理では危機が発生した後に被害を最小限にすることを目的として管理します。

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■内部統制との関係・違い

内部統制とは、「業務の有効性及び効率性」、「財務報告の信頼性」、「事業活動に関わる法令等の遵守」、「資産の保全」の4つが達成されている保証を得るために実施されるプロセスです。リスクマネジメントは、内部統制の目的を達成するためのプロセスとして実施されます。

リスクマネジメントと内部統制の違いは以下の3つです。

  • 実施する目的
  • 管理するリスクの範囲
  • 実施するプロセス

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■リスクヘッジとの違い

リスクマネジメントとリスクヘッジはどちらもリスクに対処するための手法ですが、目的やアプローチが異なります。リスクマネジメントは、企業や組織が直面するあらゆるリスクを体系的に管理し、損失を最小限に抑えることを目的としています。一方、リスクヘッジは、特定のリスクを回避または軽減する手段です。

リスクマネジメントは組織全体のリスクを総合的に管理する広範な取り組みであるのに対し、リスクヘッジはリスクマネジメントの一部として位置付けられ、特定のリスクに対する直接的な防御策として機能します。

 

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■リスクアセスメントとの違い

リスクマネジメントとリスクアセスメントはどちらもリスクに対する対応を目的としていますが、そのアプローチや目的が異なります。リスクマネジメントは組織全体のリスクを包括的に管理し、リスクが発生した際の影響を最小限に抑えるための戦略的なプロセスです。

一方、リスクアセスメントは、特定のリスクを評価し、そのリスクがもたらす影響の大きさや発生確率を分析するプロセスです。リスクがどのような形で発生し得るのか、その結果としてどのような影響が考えられるのかを詳細に評価します。この評価に基づいてリスクの優先順位を決定し、適切な対策を講じるわけです。

 

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■ITリスクマネジメントとは

ITリスクマネジメントとは、自社で発生するITリスクに対し、リスクマネジメントを実施することです。分かりやすく言えば、ITリスクに特化したリスクマネジメントと言えるでしょう。

インターネット環境やIT技術を活用したビジネス環境が当たり前となったことから、企業がリスクマネジメントを実施する上で、ITリスクへの対応は欠かせないものとなっています。

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2. リスクの分類

企業を取り巻くリスクは様々ですが、主に以下の4つに分類されます。

  • 戦略リスク:経営陣の戦略や意思決定に関連するリスク。(市場動向の誤読や法改正への対応など)
  • オペレーショナルリスク:企業の業務遂行に関連するリスク。(品質問題や労働災害、機密情報漏洩など)
  • ハザードリスク:自然災害や事故に関連するリスク。(自然災害、火災、サイバー攻撃)
  • 財務リスク:企業の財務状況に関連するリスク。(貸し倒れ、為替変動など)

 

 

3. 企業におけるリスクマネジメントの目的

■BCP(事業継続計画)の策定

BCP(事業継続計画)は、企業が予期しない災害や危機に直面した際に、その影響を最小限に抑え、迅速に通常業務を再開するための取り組みです。

BCPの策定には、代替業務の手順や緊急時の連絡網の整備、重要データのバックアップ体制の構築などが必要となります。また、定期的な訓練やシミュレーションを行うことでBCPの有効性を確認し、必要に応じて改善を図ることが重要です。

 

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■経営リスクへの事前対応と損失回避

経営リスクとは、市場変動や競争激化、法規制の変化など、企業が直面する可能性のある様々なリスクです。経営リスクに対して事前に対応策を講じることで、予期せぬ損失を未然に防ぐことができます。

また、リスクマネジメントは単なる損失回避にとどまらず、企業の成長戦略の一環としても機能します。リスクを適切に管理することで、新たなビジネスチャンスを見出し、競争優位性を高めることが可能です。

 

■企業価値と社会的信用の維持

企業が直面するリスクを適切に管理することで、顧客や取引先、投資家からの信頼を得ることができ、社会的信用も向上します。

例えば、不正行為の防止や情報漏えい対策など、具体的なリスクへの対応策を講じることで、企業の透明性と誠実さを示すことが可能です。

また、競争が激しい市場において、リスクに対する対応力は他社との差別化要因となるでしょう。

 

4. リスクマネジメントの手法

■リスクファイナンシング

リスクファイナンシングとは、リスクマネジメントの一環として、予測されるリスクに対して財務的な対策を講じることです。

リスクファイナンシングの手法としては、保険の利用やキャプティブ保険会社の設立、リスクベースの資金調達などがあります。

保険は、特定のリスクに対して保険料を支払い、損失が発生した際に保険金を受け取ることでリスクを外部に移転する方法です。キャプティブ保険会社は、親会社や関連企業のリスクを管理するために設立される自社保険会社で、リスクを内部で管理することが可能です。

さらに、リスクベースの資金調達では、企業がリスクを考慮して資金を調達し、リスクが現実化した場合に備えます。

 

■リスクコントロール

リスクコントロールは、発生し得るリスクを管理し、その影響を最小限に抑えるための手法です。リスクが顕在化する前に対策を講じ、リスクの発生を防ぐことを目指します。

リスクが発生した際の金銭的損害に備えるリスクファイナンシングとは異なり、リスクが発生しないようにしたり損害を最小限に抑えたりするなど、リスクそのものに対して直接アプローチする手法と言えるでしょう。

 

 

5. リスクマネジメントのプロセス

リスクマネジメントは以下の手順で行われます。

  1. リスクの洗い出し:企業を取り巻くリスクを洗い出し、特定します。
  2. リスクの分析・評価:リスクの発生確率と影響を分析し、対応の優先順位を決めます。
  3. 対応計画策定:評価されたリスクに対する対策を立案します。
  4. 対策の実施:立案された対策を実行します。
  5. モニタリング:実施された対策の効果を評価し、必要に応じて改善します。


各手順について詳しく説明していきます。

 

■リスクの洗い出し

リスクマネジメントの第一歩はリスクの洗い出しから始まります。認識していないリスクは管理することもできません。

そしてリスクの洗い出しを行う際には、自社にとっての目的や目標を考えることが重要です。目的を明確にし、そのために必要なものが何かを考えると、それに付随したリスクを特定することができます。

 

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■リスクの分析・評価

リスクの分析・評価は、リスクマネジメントの中核的なプロセスで、リスクの影響や発生確率を明確にすることが求められます。

洗い出したリスクそれぞれに対して、それが発生した場合の損失や自社への影響を把握します。

次に、リスクの発生確率を分析します。頻繁に起こる可能性のあるリスクなのか、ほとんど起こらないリスクなのかで、どのような対応を取るべきかが変わります。

リスク分析・評価の結果、リスクの優先順位が決まり、それに基づいてリスク対応計画が策定されます。

 

■対応計画策定

対応計画策定では、リスクに対処するための具体的なアクションプランを立案することが求められます。対応方法は、リスク回避、リスク低減、リスク移転、そしてリスク受容の4つに分けられます。

  • リスク回避:リスクが発生する可能性を排除し、リスクそのものが無くなるような対策を講じることです。
  • リスク低減:リスクの影響や発生確率を低くするための対策を実施することです。
  • リスク移転:リスクの負担を他者に移すことで、自社のリスクを軽減する方法です。
  • リスク受容:リスクの影響が軽微である場合や、対策コストが高い場合に、リスクを受け入れることです。


これらの方法から、企業や組織の目的や状況に適した対応方法を選択し、実行に移すことが大切です。

 

■リスク対応

リスクマネジメントプロセスにおいては、リスクの洗い出しとリスクの分析・評価が終わった後に、リスク対応が実施されます。評価されたリスクに対する対策を立案します。

リスク対応の方法を検討するためには事前にリスク分析・評価をしなければいけません。その理由として以下の3つが考えられます。

  • 企業ごとにリスクが発生する確率が異なる
  • リスクごとに発生する被害の規模が異なる
  • すべてのリスクを完全に排除できるわけではない

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■モニタリング

企業の状況や取り巻く環境は常に変化しているため、一度対策を実施して終わりではなく、継続的にモニタリングを行うことが重要です。特定したリスクの状況、対応方法の実施状況や対応策が効果的に機能しているのかといった内容を、定期的にモニタリングしましょう。

新たに対応が必要なリスクはないか、リスクの発生状況、リスクの対応策は問題ないかといったことを検討し、見直しを行わなければなりません。

 

 

6. 組織全体で取り組むリスクマネジメント

リスクマネジメントにおいては、経営層から現場の従業員まで全員が関与し、リスクに対する意識を高めることが求められます。

具体的な取り組みとして、リスクマネジメントの方針やポリシーを策定し、組織全体で共有することが重要です。これにより、社員がリスクに対する意識を持ち続けることができます。

また、リスクマネジメントの体制を整えることも重要です。専門の部門や担当者を設置し、組織全体でリスクに対応できる体制を構築することが、企業の持続可能な発展につながります。

 

■経営者のリスクマネジメント責任

経営者は、組織全体のリスクマネジメントを指導・監督する責任があります。

リスク管理の仕組みをしっかりと構築し、必要なリソースの投資を行うとともに、リスクマネジメントのポリシーや方針を明確にし、社員に向けて情報を共有することが大切です。

 

■従業員のリスクマネジメント意識向上

従業員のリスクマネジメント意識向上は、企業において非常に重要です。従業員がリスクマネジメントの意識を持つことで、リスクの早期発見や適切な対応が可能になり、企業全体の損失を最小限に抑えることができます。


リスクマネジメント意識向上のためには、まず経営層から従業員まで組織全体でリスクマネジメントの重要性を理解し、それを実践する体制を構築する必要があります。また、具体的な対策として、定期的なリスクマネジメント研修やリスクマネジメントに関する情報共有、リスク分析の実施が挙げられます。

 

 

7. 分野別リスクマネジメントの具体例

■介護・医療現場におけるヒヤリハット対策

ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、危険を感じたりヒヤリとした経験を指します。ヒヤリハットの事例を集めて分析し、再発防止策を講じることで、重大な事故を未然に防ぐことができます。

介護・医療現場におけるヒヤリハット対策では、ヒヤリハットの事例を収集するための仕組み作りが必要です。スタッフが気軽に報告できる環境を整え、報告を奨励することで、効率的に情報を集約することができます。次に、収集した事例を分析し、共通するパターンや根本原因を特定することで、具体的な対策を立案し、現場での実施を進めます。

また、スタッフがヒヤリハットの重要性を理解し、日常業務においてリスクを意識する習慣を身につけることも大切です。

 

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■情報セキュリティリスク対策

情報セキュリティリスク対策は、企業のデータやシステムを外部からの不正アクセスや攻撃から守ることを目的としています。

情報セキュリティリスク対策の基本として、ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入、セキュリティパッチの定期的な更新など、ネットワークの防御を強化することが重要です。また、フィッシングメールへの適切な対応やパスワード管理の徹底など、従業員への教育を徹底することで、内部からの脅威を防ぐことができます。

さらに、データの暗号化やバックアップの実施も欠かせません。万が一のデータ漏洩やシステム障害に備えて、重要なデータは定期的にバックアップを取り、暗号化して保存することで被害を最小限に抑えることができます。

 

8. 効果的なリスクマネジメント体制の構築方法

■リスクマネジメント委員会の設置

リスクマネジメント委員会の設置により、組織全体でリスクに対する意識を高め、統一された対応を図ることができます。リスクマネジメント委員会は経営陣や各部門の責任者で構成され、リスクの特定や評価、対応策の策定を行います。また、リスクの優先順位を決定し、リソースを効率的に配分することで、企業全体のリスク低減を図ります。さらに、リスクが顕在化した際の迅速な対応策を事前に準備し、被害を最小限に抑えることも重要です。

委員会設置の際には、明確な目的と役割を定め、各メンバーの責任を明確にすることが求められます。メンバーが主体的に行動しやすくなり、組織全体でのリスク管理がより効果的に進むでしょう。

 

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■基本方針とフレームワークの策定

基本方針とは、リスクに対する企業の姿勢や方向性を明確にするもので、組織全体で共有されるべき指針です。基本方針の策定により、従業員が「何を優先すべきか」「どのように行動すべきか」を迷わず判断できるようになります。

フレームワークは、リスクマネジメントを実行するための具体的な手順や方法を示すものです。フレームワークを策定することで、リスクに対する一貫した対応が可能となり、組織全体のリスク管理の効率が向上します。

 

■社内教育や研修を通じた意識向上

効果的なリスクマネジメント体制を構築するためには、社員一人ひとりがリスクに対する理解を深めることが重要です。リスクとは何か、どのように発生するのかを理解させることで、日常業務においてもリスクを意識しやすくなるでしょう。次に、研修を定期的に行い、新しいリスクや変化する環境に適応する力を持続的に育成します。

 

9. リスクマネジメントに関するQ&A

■リスクマネジメントがよくわかる本は?

リスクマネジメント初心者向けにおすすめな本は「世界一わかりやすいリスクマネジメント集中講座」です。本書はリスクマネジメントの基本概念をわかりやすく解説しており、具体的な事例を通じて実践的な知識も得られます。

より専門的な知識を深めたい方には「意思決定のためのリスクマネジメント」が適しています。本書は、企業経営におけるリスクの特定方法や対応策を詳細に解説しており、経営者や管理職の方に特に役立つ内容です。

 

また、リスクマネジメントと関連する法律や規制について理解を深めたい方には、「攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書」が役立ちます。法律の視点からリスク管理を考えることで、コンプライアンスの重要性を再認識できるでしょう。

 

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■リスクマネジメントに関する資格・スキルは?

リスクマネジメントに関する代表的な資格として「公認リスク管理監査人(CRMA)」があります。本資格は、リスクの特定や評価、対応策の策定など、リスク管理に必要な知識と技術を体系的に学ぶことができます。

また、リスクマネジメントに関するスキルとしては、分析力や計画力、コミュニケーション能力が挙げられます。分析力は、潜在的なリスクを見極めるために欠かせません。計画力は、リスク対応策を具体的に構築する際に役立ちます。そして、コミュニケーション能力は、リスクに関する情報を関係者と共有し、協力を得るために必要です。

これらの資格やスキルは、企業のリスク管理体制を強化するだけでなく、個人のキャリアアップにもつながります。リスクマネジメントの知識を深めることで、組織の中でより重要な役割を果たすことができるでしょう。

 

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10. まとめ

この記事では、リスクマネジメントのプロセスや組織全体でリスクマネジメントに取り組むことの重要性について解説しました。

リスクマネジメントにおいては、リスクは起きるかもしれないものではなく、いつか必ず起きるものと考えます。これまではたまたまリスクが起きてこなかったとしても、リスクマネジメントを適切に実施することで、万が一の時のリスクを回避・軽減し、安定した企業経営を目指しましょう。

 

 

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