「なぜリスク管理表を作成する必要があるのか」「どうやってリスク管理表を作成すればよいのか」「リスク管理表のエクセルテンプレートを入手したい」など、疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、リスク管理表の概要から作成する目的、作り方、運用ポイントについて解説します。
1. リスク管理表とは
リスク管理表とは、自社で発生する恐れがあるリスクを洗い出し、それぞれの影響度合いを分析・評価し、対応計画をリスト化した表です。
リスク管理表を作成しなくてもリスク管理を実施することは可能ですが、リスク管理表を作成しておけばリスク管理を効率良く実施できます。
■リスク管理(リスクマネジメント)とは
リスク管理とは、企業が直面する潜在的な危機や不確実性に対処するための組織的な取り組みです。リスクマネジメントとも呼ばれます。
事業の継続性を保ち、企業の価値を最大化することを目的として、リスク管理を実施します。
企業で発生する主なリスクは以下の4つです。
戦略リスク | 経営陣の戦略や意思決定に関連するリスク (市場動向の誤読や法改正への対応など) |
オペレーショナルリスク | 企業の業務遂行に関連するリスク (品質問題や労働災害、機密情報漏洩など) |
ハザードリスク | 自然災害や事故に関連するリスク (自然災害、火災、サイバー攻撃) |
財務リスク | 企業の財務状況に関連するリスク (貸し倒れ、為替変動など) |
リスク管理を実施する手順は以下の通りです。
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■課題管理表との違い
リスク管理表と課題管理表の違いは、管理表によって管理する対象が実際に発生しているかどうかです。
リスク管理表では、過去に発生したリスクではなく、まだ発生していない潜在的なリスクを管理します。
リスクの発生を未然に防いだり、発生したリスクへの被害を最小限にしたりすることが、リスク管理表を作成する目的です。
一方、課題管理表では、潜在的な課題ではなく、現時点で自社が抱える課題をリスト化します。
自社が抱える課題をリスト化し、課題を解決することが、課題管理表を作成する目的です。
2. リスク管理表を作成する目的
リスク管理表を作成する目的は以下の通りです。
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それぞれの目的について詳しく解説します。
■複雑化したリスクに対応する
リスク管理表を作成する目的の1つ目は、複雑化したリスクに対応することです。
企業で発生する可能性があるリスクの要因には、技術的なものから人材管理、顧客との関係、資金面、外的要因などさまざまなものがあります。
たとえば、社員へのITリテラシー教育が十分でなければ、安全性が確保できていないデータへ安易にアクセスして、不正アクセスなど甚大な被害が発生するかもしれません。
さまざまな要因が組み合わさって発生するリスクに対して適切に対応するためには、リスク管理表を作成することが重要です。
■リスクに対して迅速に対応する
リスク管理表を作成する目的の2つ目は、リスクに対して迅速に対応することです。
自然災害やサイバー攻撃などのようなリスクは、迅速な対応ができなければ被害が拡大するかもしれません。
問題が発生した後に対応策を検討するのではなく、事前にリスクを想定しておき、いざというときに迅速に対応するためには、リスク管理表を作成する必要があります。
■PDCAサイクルを回して改善する
リスク管理表を作成する目的の3つ目は、PDCAサイクルを回して改善することです。
企業を取り巻く環境は常に変化しており、リスクも同様です。
リスク管理表を定期的に見直し、内容をアップデートしていくことで、リスクの見落としを発見したり、より実態に即したリスクマネジメントを実施することができます。
3. リスク管理表の作り方
リスク管理表を作成する手順は以下の通りです。
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それぞれの手順について解説します。
■リスク管理表のフォーマットを決める
リスク管理表の作成では、始めにリスク管理表のフォーマットを決めます。
フォーマットを決めずにリスク管理表を作成しようとすると、情報にまとまりがなく、閲覧性が低いリスク管理表になってしまうかもしれません。
リスク管理を実施する上でどのような情報が必要なのかを検討し、リスク管理表に記載する項目を決めておくことで、余計な手間が発生することなく効率良く作成できます。
一般的なリスク管理表の項目は以下の通りです。
- 内容
- 発生確率
- 影響度
- 優先順位
- 対処法
■想定されるリスクを抽出する
リスク管理表のフォーマットを決めたら、次に想定されるリスクを抽出します。
自社にどのようなリスクが潜在しているのかを一人で漠然と考えても、簡単に思い浮かべることは困難です。
直接業務に関わる社員から意見を集めたり、会議を開催したりすることで、さまざまな角度からリスクを抽出できるようになります。
また、リスクの分類を参考に、分類ごとのリスクを検討することで、抜け漏れを減らすことが可能です。
大分類 | 中分類 | リスクの例 |
戦略リスク | 人事戦略 | 法令改正、貿易摩擦 |
政治 | 原材料価格高騰 | |
経済 | メディア対応、誹謗中傷 | |
社会・メディア | リコール | |
オペレーショナルリスク | 法務・コンプライアンス | 法令違反、情報漏洩 |
環境 | 環境汚染 | |
労務 | ハラスメント | |
ハザードリスク | 自然災害 | 地震、津波 |
事故・故障 | 火災、システムダウン | |
財務リスク | 与信 | 倒産 |
価格変動 | 為替、金利 |
■リスクの発生確率と影響度合いを評価する
次に、抽出したリスクの発生確率と影響度合いを評価し、リスクを分類します。
想定されるリスクの中には、発生する可能性が著しく低いものや発生したとしてもそれほど大きな影響を与えないものもあります。
すべてのリスクに対して同じレベルで監視するのは効率的ではありませんし、予算や工数との兼ね合いもあり現実的ではありません。
リスクの発生確率と影響度を高・中・低に分類することで、優先順位を決める判断材料になります。
この数値を参考に、利用できるリソースや会社の目標等も考慮して、優先順位を決めていきます。
リスクの発生確率・影響度マトリックスの例
(a)×(b) | (a)発生頻度 | |||
高 | 中 | 低 | ||
(b)影響度 | 高 | 9 | 6 | 3 |
中 | 6 | 4 | 2 | |
低 | 3 | 2 | 1 |
■リスクへの対処法を検討する
最後に、リスクへの対処法を検討します。
リスクへの主な対処法は以下の4つです。
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前述したとおり、組織のリソースには限りがあるためすべてのリスクに対策を打つ必要はありません。
しかし事前にリスクを把握しておくことで、リスクの発生事態を未然に防いだり、リスクが発生した際に迅速に対応できたりします。
4. リスク管理表を効果的に運用するポイント
リスク管理表を効果的に運用するポイントは以下の通りです。
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それぞれのポイントについて詳しく解説します。
■運用する担当者を決める
リスク管理表を効果的に運用するポイントの1つ目は、運用する担当者を決めることです。
リスク管理表を作成しても、実際に運用されていなければリスク管理を実施することはできません。
社内で情報を共有でき、会社全体でリスク管理を指導・監督できる人材にリスク管理表の運用を任せるようにしましょう。
■監視スケジュールを決める
リスク管理表を効果的に運用するポイントの2つ目は、監視スケジュールを決めることです。
前述したように、社内でリスクが発生する確率はリスクごとに異なるため、すべてのリスクに対して一律のスケジュールで監視すると無駄が生じる恐れがあります。
発生確率や影響度、優先度からスケジュールを決め、定期的に監視を実施するようにしましょう。
■定期的に見直しと改善を実施する
リスク管理表を効果的に運用するポイントの3つ目は、定期的に見直しと改善を実施することです。
企業の状態や外部環境は常に変動しているため、自社で発生する恐れがあるリスクが新たに生まれたり、より効果的なリスクへの対処法が見つかったりする場合があります。
作成したリスク管理表に従って監視を実施するだけでなく、記載した内容が現状とマッチしているか、リスクの対処法を見直す必要はないかを定期的に検討し、継続して改善することが重要です。
5. リスク管理表のエクセルテンプレートDL
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下記ページからリスク管理表をダウンロードしてご利用ください。
6. まとめ
本記事では、リスク管理表の概要や作成する目的、作り方、運用ポイントについて解説しました。
急激に変化するビジネスシーンにおいては、リスク管理を適切に実施することが欠かせません。
効率良くリスク管理を実施するためには、自社で発生する恐れのあるリスクを抽出し、発生確率や影響度、優先度を検討したうえで適切な対処法が記載されたリスク管理表を作成することが重要です。
本記事で解説したリスク管理表の作り方、運用ポイントを参考に、効果的なリスク管理を実施しましょう。
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