「セキュリティインシデントが発生したら、どう対応すればいいのか」「何から始めればいいのか分からない」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
セキュリティインシデントは企業にとって大きなリスクであり、事前の準備と迅速かつ適切な対応が必要です。
本記事では、セキュリティインシデントへの対応方法について詳しく解説します。
1. セキュリティインシデント対応とは
セキュリティインシデント対応とは、企業や組織が情報セキュリティの脅威に直面した際に、被害を最小限に抑え、迅速に復旧するための一連のプロセスです。具体的には、インシデントの発見から初動対応、原因調査、報告、公表、復旧、再発防止策までの対応が含まれます。インシデントに対して迅速かつ適切な対応がなされないと経済的損失やブランドイメージの低下につながる可能性があるため、事前に対応策を講じておくことが欠かせません。
■セキュリティインシデント対応が必要な理由
セキュリティインシデント対応が必要な理由は、企業の信用を失墜させるだけでなく、法的な問題や金銭的な損失を引き起こす可能性があるからです。
セキュリティインシデント対応が遅れると、被害が拡大するだけでなく、復旧にかかる時間やコストも増大します。さらに、法令に基づく報告義務を怠ると、罰則を受ける可能性もあるため、事前に対応策を整備しておくことが重要です。
また、セキュリティインシデント対応のプロセスを通じて、従業員が日常的にセキュリティを意識した行動を取るようになり、インシデントの発生を未然に防ぐことができます。
■セキュリティインシデントとは
セキュリティインシデントとは、情報システムにおける不正アクセスや情報の漏えい、システムの故障など、セキュリティが脅かされる事象です。
セキュリティインシデントの原因は、内部の人間による意図的な不正行為、外部からのサイバー攻撃、さらにはシステムの脆弱性を突かれた場合など、多岐にわたります。被害の拡大を防ぐためには、それぞれの原因に応じて適切に対応できる仕組みを整えることが重要です。
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■インシデントとは
インシデントとは、組織や個人にとって予期しない出来事や障害のことを指し、実際には被害が発生しなかったか軽微で済んだものを指します。ITの分野では、システムの不具合やデータの漏えい、ウイルス感染などを指すことが多いです。医療の分野ではヒヤリハットとも呼ばれ、誤った医療行為が行われる前に発見されたり、患者への影響がなかったりしたケースを指します。
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2. セキュリティインシデントに対する事前対応
セキュリティインシデントに対する事前対応は以下の4つです。
- セキュリティポリシーの策定
- セキュリティ対策専門組織の立ち上げ
- 従業員へのセキュリティ教育
- 委託先管理
それぞれの対応方法について詳しく解説します。
■セキュリティポリシーの策定
セキュリティポリシーの策定とは、企業や組織全体のセキュリティに関する方針やルールを明確にし、全従業員が一貫した行動をとれるようにすることです。セキュリティポリシーの策定にあたっては、データの取り扱いルールやアクセス権限の管理方法、インシデント発生時の対応手順などを定めます。
セキュリティポリシーは、一度策定したら終わりではありません。定期的に見直し、最新の技術動向や組織の変化に応じて更新することが重要です。
■セキュリティ対策専門組織の立ち上げ
セキュリティインシデントが発生する前の事前対応として、CSIRTやSOCといったセキュリティ対策専門組織の立ち上げの立ち上げは非常に重要です。
CSIRTとは「Computer Security Incident Response Team」の略で、セキュリティインシデントに対する対応チームを指します。セキュリティインシデントの検知や分析、対応、再発防止策の策定です。一方、SOC(Security Operation Center)はサイバー攻撃に対する対応チームを指します。SOCの主な役割は、システム・ネットワークの24時間365日体制の監視や分析、対応、再発防止策の策定です。
■従業員へのセキュリティ教育
セキュリティインシデントを未然に防ぐためには、従業員へのセキュリティ教育が欠かせません。全ての従業員が基本的なセキュリティの概念を理解し、日常業務において適切な行動を取れるようにすることが重要です。
具体的には、パスワードの適切な管理方法やフィッシングメールの見分け方、機密情報の取り扱い方などを定期的に学ぶ機会を設けましょう。また、技術の進化や新たな脅威に対応するために、セキュリティ教育は一度きりではなく、最新の情報を常にアップデートできるように継続的に実施することが重要です。
■委託先管理
セキュリティインシデントは、自社が管理するシステムへのサイバー攻撃や従業員のミス・不正など、社内だけの原因で発生するわけではありません。委託先の従業員のミス・不正や委託先に対するサプライチェーン攻撃など、委託先が原因でインシデントが発生する場合もあります。委託先が原因のセキュリティインシデントを防ぐためには、適切な委託先管理が欠かせません。
委託先を選定する際には、その企業のセキュリティ対策が十分に整っているかを確認する必要があります。具体的には、セキュリティポリシーの有無や、過去のインシデント対応の実績を確認することが有効です。
また、委託先と契約を結ぶ際には、セキュリティに関する条項を明確に盛り込むことが大切です。例えば、情報漏えいが発生した場合の責任の所在や対応手順を契約書に明記しておくと良いでしょう。また、定期的なセキュリティ監査を実施し、委託先のセキュリティレベルを継続的に評価することも重要です。
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3. セキュリティインシデントが発生した後の対応手順
セキュリティインシデントが発生した後の対応手順は以下の通りです。
- インシデントの検知
- 初動対応
- 原因の調査
- 報告・公表
- 復旧
- 再発防止策の検討
それぞれの対応方法について詳しく確認します。
■インシデントの検知
インシデントの検知は、セキュリティインシデント対応において最も重要なステップの一つです。インシデントの早期検知ができれば、被害を最小限に抑えることが可能になります。
インシデントの検知では、異常なトラフィックや不審なアクセスをリアルタイムで監視できる、ネットワーク監視ツールの導入が効果的です。サーバーやアプリケーションのログを定期的に確認し、異常な動きを早期に発見する必要があります。また、ウイルス対策ソフトを最新の状態に保ち、定期的なスキャンを行うことも忘れてはいけません。さらに、現場の従業員が不審なメールや動作を発見した際に、迅速に報告できる体制を整えておきましょう。
■初動対応
迅速かつ適切な初動対応が被害の拡大を防ぎ、事後の対応をスムーズに進める基盤を築きます。初動対応で最初に行うべきは、インシデントの規模と影響範囲を迅速に把握することです。次に、被害の拡大を防ぐために、該当システムの隔離やアクセス制限を速やかに実施します。例えば、ウイルス感染が疑われる場合は、ネットワークからの切断が必要です。また、関係者への迅速な情報共有も欠かせません。社内のIT担当者や経営層、外部のセキュリティ専門家など、対応に必要な人物には即座に連絡を取りましょう。
■原因の調査
インシデントの発生状況を詳細に確認し、どのような原因で問題が生じたのかを明らかにすることが求められます。ネットワークログやシステムログを分析し、異常なアクセスや動作がなかったかを確認することが第一歩です。
次に、関係者へのヒアリングを行い、従業員や関係者が不審な行動を目撃していないかを確認します。これにより、内部からの情報漏えいや誤操作が原因である可能性を排除できます。さらに、外部の専門家やセキュリティベンダーの協力を得ることも重要です。専門家の視点からの分析により、見落としていた脆弱性や攻撃手法を特定できることがあります。
■報告・公表
セキュリティインシデントが発生した際には、迅速かつ適切な報告と公表が求められます。
顧客や取引先に影響がある場合、適切なタイミングで情報を開示し、信頼の維持に努めましょう。公表の際は、事実に基づいた正確な情報を伝えることが大切です。公表が遅れると、信頼を失うだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあります。
また、個人情報の漏えいがあった場合、個人情報保護法に基づき、個人情報保護委員会へ報告し、本人へ通知しなければいけません。
■復旧
復旧の第一歩は、影響を受けたシステムやデータを特定し、被害範囲を正確に把握することです。次に、バックアップデータを活用して、システムやデータを元の状態に戻します。バックアップが定期的に行われている場合、復旧は比較的スムーズに進むでしょう。もしバックアップが不十分であれば、データ復旧専門業者の支援を検討することが重要です。
さらに、復旧作業中に再度同じインシデントが発生しないよう、セキュリティ対策も並行して実施します。
■再発防止策の検討
セキュリティインシデントが発生した際には、同じような問題が再び起こらないようにするための具体的な対策を講じることが必要です。まず、インシデントの原因を徹底的に調査し、どのような経緯で問題が発生したのかを明らかにします。
次に、インシデントの原因を解消するための技術的・組織的な対策を講じます。例えば、システムのセキュリティパッチの適用、アクセス権限の見直し、ネットワークの監視強化などが考えられます。また、従業員のセキュリティ意識を向上させるための教育や訓練も不可欠です。
4. セキュリティインシデント対応のポイント
■ウイルス・ランサムウェアに感染した場合
セキュリティインシデントによってウイルスやランサムウェアに感染した場合、すぐにネットワークから切断し、被害の拡大を防ぎましょう。次に、感染した端末を特定し、他の端末への感染を防ぐために隔離します。感染が確認されたら、セキュリティソフトを使用してウイルスを駆除し、システムの健全性を確認します。
また、ランサムウェアに感染した場合、身代金要求に応じることは避けるべきです。身代金を支払ってもデータが返される保証はなく、さらなる攻撃を招く可能性があります。バックアップがある場合は、感染前の状態にシステムを復元することが最も効果的です。もしバックアップがない場合は、専門家に相談し、データの復旧を試みることを検討しましょう。
■情報が漏えいした場合
セキュリティインシデントによって情報が漏えいした場合、漏えいした情報の種類を特定することが重要です。漏えいした情報に個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法に基づく報告と通知が求められます。さらに、被害を最小限に抑えるために、パスワードの変更やアクセス権限の見直しなど、漏えいした情報の使用を防ぐ対策を講じましょう。
最後に、漏えいの原因を徹底的に調査し、再発防止策を講じることも欠かせません。人的ミスや内部不正といった内部要因による情報漏えいの場合には、社内の管理を改善することで、同様の事態を防ぐことができます。
■システムが停止した場合
セキュリティインシデントによってシステムが停止した場合、システム停止の原因を迅速に特定することが最優先です。システム停止が停止する原因には、サイバー攻撃やソフトウエアのバグ、環境的な要因による危機の故障などさまざまなものがあります。原因が分からないと、適切な対応策を講じることができません。
システムが停止した場合には、初めにシステムログやエラーメッセージを確認し、どの部分に問題があるのかを特定することが重要です。
次に、システムの復旧を目指して、バックアップからの復元を検討します。バックアップが日常的に行われていれば、データの損失を最小限に抑えることが可能です。また、システム停止が外部からの攻撃によるものであれば、セキュリティ対策の見直しも必要です。攻撃の種類を特定し、同様の手口で再度攻撃されないように防御策を強化します。
5. まとめ
今回は、セキュリティインシデントへの対応方法について詳しく解説しました。
セキュリティインシデント被害を最小限に抑えるためには、迅速かつ適切に対応することが重要です。本記事で解説したセキュリティインシデントへの対応方法を参考に、セキュリティインシデントに備えておきましょう。
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