「請負契約を解除したいけれど、どのような手順を踏めばいいのだろうか」「契約の解除で違約金が発生するか心配」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
請負契約は特定の仕事を完成させることを目的とした契約であり、契約の解除には一定の手順と条件があります。契約を解除する際の条件や手順を誤ると、思わぬトラブルに発展するかもしれません。
本記事では、民法改正に伴う請負契約の解除ルールと手順について詳しく解説します。
1. 請負契約の特徴
請負契約は、建築工事やソフトウェア開発など、特定の成果物を完成させることを目的とする契約です。委託先は成果物を完成させる義務を負い、委託元はその成果物に対して報酬を支払う義務があります。
委託先は成果物を完成させることで報酬を得る一方、進行中の作業に対しては報酬が発生しない点が特徴です。請負契約では成果物が注文通りに完成することが求められるため、途中の過程よりも最終的な結果が重視されます。
また、請負契約では委託先は委託元の指示通りに動くのではなく、委託先自身の裁量で仕事を進めることが可能です。
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■委任・準委任契約との違い
請負契約と似た契約に、委任契約と準委任契約があります。
委任・準委任契約は、成果物の完成ではなく、業務の遂行そのものが契約の目的です。成果物の完成が求められるわけではなく、業務を遂行する過程に対して報酬が支払われます。
一方、請負契約は、特定の成果物を完成させることを目的とした契約です。ソフトウェア開発の請負契約であれば、ソフトウェア自体が完成しなければ報酬を得られません。
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■契約不適合責任
契約不適合責任とは、契約で合意した内容と実際に提供された成果物やサービスが一致しない場合、委託先が負うべき責任を指します。
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引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。 引用:民法第562条1項 |
民法改正前は「瑕疵担保責任」として知られていましたが、2020年4月の改正後は「契約不適合責任」として、より広範囲に対応することが求められるようになりました。
例えば、建設工事の請負契約において、設計図通りの建物が完成しない場合や使用に耐えない不具合が発生した場合、委託元は委託先に対して修理や代替品の提供、契約の解除を求めることが可能です。
契約不適合責任の範囲は広く、委託元が契約内容に基づいて期待する性能や品質が満たされない場合も含まれます。そのため、委託先は契約締結時に詳細な仕様書や設計図を用意し、注文者と認識を共有することが重要です。
また、契約不適合責任は、注文者が不具合を知った時から1年以内に通知しなければならないとされています。
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売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。 引用:民法第566条 |
2. 請負契約の解除に関する基本ルール
請負契約では、委託先が仕事を完成する前であれば、委託元はいつでも契約を解除することが可能です。(民法641条)
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請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。 引用:民法641条 |
ただし、契約を解除することはできても、仕事の完成を目指すに当たって発生した費用やすでに完成した部分に対する報酬、逸失利益を含む損害賠償を支払う義務があります。(民法第634条2号)
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次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。 一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。 二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。 引用:民法第634条2号 |
また、委託先に納期遅れや品質不足などの債務不履行があった場合、無催告で契約を解除したり催告後に契約を解除することが可能です。(民法第541条、第542条)
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当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 引用:民法第541条 |
さらに、委託元に損害が発生している場合、委託先に対して損害賠償請求ができます。(民法第415条)
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債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 引用:民法第415条 |
ただし、委託先の責任による契約解除であっても、すでに完成した部分の代金の支払いは必要です。(民法第634条)
委託先の仕事がすでに完成している場合、委託元の破産を理由に契約を解除することはできません。
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注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。 引用:民法第642条 |
■催告解除と無催告解除の違い
催告解除とは、相手方に契約の履行を求める通知を送り、その後も履行がない場合に契約を解除する方法です。これに対して無催告解除は、相手方に履行を求めることなく直接契約を解除する方法を指します。
催告解除は、契約の履行が遅れている場合に一般的に用いられます。契約を解除する前に履行を求めるため、相手に改善の機会を与える公平な手段と言えるでしょう。
一方で無催告解除を行うのは、契約の履行が不可能であることが明白な場合です。委託元が支払いを全く行わない場合や委託先が作業を放棄した場合など、相手方の行為が契約の目的を達成できないほど重大であると判断される場合に適用されます。
■契約の解除と解約の違い
契約の解除とは、既に成立している契約を、特定の理由に基づいて一方的に終了させることです。この場合、契約は遡及的に無効となり、契約前の状態に戻ります。
一方、解約は、契約を将来に向かって終了させる行為です。これまでの契約の履行部分は有効であり、今後の契約関係を終了させることを意味します。一般的に解約は双方の合意に基づくことが多く、法的には「解除」とは区別されます。
3. 委託元から請負契約を解除できるケース
委託元から請負契約を解除できるのは、委託先に契約違反がある場合や、委託元自身の都合による場合などです。
委託先が納期を守らなかったり品質に問題がある成果物を提供したりした場合、委託元は契約を解除する権利を持ちます。
これに対して、委託元の自己都合で契約を解除する場合には、委託先に対する損害賠償や違約金の支払いが求められることがあります。また、成果物の引き渡し後に不具合が発生した場合でも、一定期間内であれば契約の解除が可能です。
■委託先に契約違反がある場合の契約解除
工事の遅延や品質不良、契約内容に反する作業など、委託先に契約違反がある場合には、委託元は契約を解除することができます。(民法第541条、第542条)
委託先に契約違反が発生した場合、委託元は委託先に対して催告を行い、違反の是正を求めることが一般的です。しかし、委託先が催告に応じず、違反が改善されない場合には、委託元は契約を解除する権利を持ちます。
また、契約違反によって委託元に損害が発生している場合、委託先に対して損害賠償を請求することも可能です。(民法第415条)
■委託先に違反がない自己都合の契約解除
委託先に違反がない場合でも、委託先が仕事を完成する前であれば、委託元はいつでも契約を解除することが可能です。(民法641条)
ただし、自己都合での契約解除は委託先に対して不利益をもたらす可能性があるため、委託元は解除に伴う違約金や損害賠償の支払いを求められることがあります。
■引き渡し後の不具合による契約解除
引き渡し後に不具合が見つかった場合、契約不適合責任として以下の対応を委託先に求めることができます。
- 履行の追完請求
- 代金減額請求
- 契約解除
- 損害賠償請求
引き渡し後の不具合による契約の解除ができるのは、委託先に不具合の修正を求め、それが不可能な場合や委託先が修正を行わない場合に限られます。この手順を踏まずにいきなり契約の解除を申し出ると、契約上の義務を果たしていないと見なされることがあります。
また、委託元が引き渡し後の不具合を理由に契約を解除できるのは、契約不適合を知った日から1年以内です。
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前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 引用:民法第637条1項 |
4. 委託先から請負契約を解除できるケース
委託先から請負契約を解除できるのは、委託元に契約違反があった場合や委託元が破産した場合です。
支払いの遅延や不履行など、委託元の契約違反を理由に解除する場合、委託先は委託元に対して催告を行い、改善を求めることが一般的です。催告後も改善が見られない場合、正式に契約を解除することができます。
■委託元の契約違反を理由とする契約解除
報酬を支払わなかったり必要な情報を提供しなかったりするなど、委託元のが契約上の義務を履行しない場合には、委託先から請負契約を解除することが可能です。例えば、約束した期日を過ぎても委託元が支払いを行わなかった場合や委託元が工事のために必要な設計図を提供しなかった場合が該当します。
このような場合、委託先は委託元に対して契約違反を是正するように催告し、一定期間内に改善が見られない場合には契約の解除が可能です。
契約違反が発生した場合、請負人は注文者に対して催告を行い、改善の機会を与えることが法律で求められています。しかし、催告を行っても改善が見られない場合、または催告が不可能な場合は、催告なしでの解除も認められることがあります。
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当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 引用:民法第541条 |
■委託元が破産した場合の契約解除
委託元が破産した場合、委託先または破産管財人は契約を解除することが可能です。ただし、委託先の仕事がすでに完成している場合、委託元の破産を理由に契約を解除することはできません。
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注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。 引用:民法第642条 |
破産手続きが始まると委託元は財産を自由に処分できなくなるため、委託先は未払いの請負代金を受け取ることが難しくなる場合があります。そのため、委託先は破産手続きの中で債権者として認められ、破産管財人からの配当を受け取る手続きを行う必要があります。
5. 請負契約解除に伴う違約金や損害賠償・報酬の支払い
■委託元都合の契約解除で発生する違約金
委託元の都合で請負契約を解除する場合、違約金が発生する可能性があります。これは、契約の履行を途中で止めることにより、委託先に生じる損害を補填するためのものです。例えば、委託先が材料を購入したり、労働者を雇ったりしている場合、契約の解除によってこれらの費用が無駄になることがあります。このような場合、委託先は損害賠償を請求することが可能です。
契約書に違約金の条項がある場合には、具体的な金額や計算方法を確認しておきましょう。
■委託先の契約違反に対する損害賠償請求
請負契約において、委託先が契約内容を守らない場合、委託元は損害賠償を請求することが可能です。例えば、委託先が工事を予定通りに完了しなかったり、品質が契約条件に達していなかったりした場合が該当します。
損害賠償請求では、修理・再工事にかかる費用や工事の遅延によって生じた損失など、実際に被った損害を証明する必要があります。
委託先が契約内容を守らない場合、委託先に対して書面での通知を行い、改善の機会を与えることも1つの方法です。改善が見られない場合や即時の対応が必要な場合には、契約解除を検討しましょう。
■完成割合に応じた請負代金の支払い
委託先の契約違反で契約を解除する場合でも、委託先が提供した成果物の完成度に応じた報酬の支払いが必要です。ただし、委託先が契約解除前に行った作業で委託元が受ける利益が無い場合、委託元は契約解除前の作業に対し、委託先へ報酬を支払う必要はありません。また、すでに支払った報酬の返還を求めることが可能です。
たとえば、建設工事の場合、建物の完成度が50%であれば、その割合に応じた報酬が支払われることがあります。これを「完成割合に応じた支払い」といい、双方の合意に基づいて決定されることが一般的です。
契約書に明確な完成割合の基準が記載されている場合、その基準に従って報酬が計算されます。もし基準が曖昧であれば、双方で協議し、適切な割合を決める必要があります。
6. まとめ
今回は、民法改正に伴う請負契約の解除ルールと手順について解説しました。
請負契約を解除する際には、契約書に記載された条件を確認することが重要です。契約の解除には法的な制約があり、条件を満たしていない場合には違約金が発生したり損害賠償を請求されたりすることもあります。
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