「具体的にどのようなケースが一括下請負に該当するのだろうか」「一括下請負が例外的に認められる条件って何だろう」と疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、建設業における一括下請負が例外的に認められる条件や罰則について詳しく解説します。
1. 建設業における一括下請負とは
一括下請負とは、元請業者が受注した建設工事の全部もしくは主要な部分を、下請業者に任せる行為です。
具体的には、以下のいずれかに該当する場合であって、下請け工事の施工に元請業者が「実質的に関与」していると認められない場合が一括下請負に該当します。
- 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合
- 請け負った建設工事の一部であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合
元請業者が工事の管理や監督を放棄すると品質や安全性が著しく低下するリスクがあるため、建設業法では一括下請負を禁止し、元請業者に対して工事の実質的な関与を求めています。
■実質的な関与とは
一括下請負における「実質的な関与」とは、元請業者が工事の計画段階から施工、完了に至るまで、全工程において直接的に関与することです。
具体的には、以下の10点について元請業者が主体的に関わることが求められています。
- 施工計画の作成
- 工程管理
- 出来形・品質管理
- 完成検査
- 安全管理
- 下請業者への指導監督
- 発注者との協議
- 住民への説明
- 官公庁等への届出等
- 近隣工事との調整
また、下請業者においても以下の6点について主体的に関わることが求められています。
- 施工計画の作成
- 工程管理
- 出来形・品質管理
- 完成検査
- 安全管理
- 下請業者への指導監督
■名義貸しや技術者配置だけでは不十分
名義貸しや技術者配置だけでは不十分な理由は、これらの行為が建設工事における実質的な関与を欠いているからです。名義貸しとは、実際には工事に関与しない建設業者がその名義を貸す行為を指します。名義貸しでは、工事の品質や安全性を確保するために必要な責任を果たさないことになります。
建設業法第26条で規定されている技術者配置についても、単に技術者を配置するだけでは実質的な関与だと認められません。
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建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。 引用:建設業法第26条 |
技術者が現場にいるだけではなく、積極的に工事の進行を監督し、必要に応じて指導を行うことが求められます。
2. 建設業における一括下請負(丸投げ)が禁止される理由
建設業における一括下請負、いわゆる「丸投げ」が禁止される理由は、工事の品質確保と責任の明確化にあります。
丸投げを許すと、元請業者が工事の進捗や品質管理に関与せず、実際の施工は全て下請業者に任せることになります。このような状況では、工事の品質が低下しやすく、また問題が発生した際の責任の所在が不明確になるリスクがあります。例えば、重要な構造物の建設において、元請業者が全ての工程を下請業者に任せた場合、設計図の意図が正確に伝わらず、施工ミスが発生するかもしれません。
このような事態を防ぐために、建設業法第22条1項及び2項では一括下請負を原則として禁止し、元請業者が実質的に工事に関与することを求めています。
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建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。 引用:建設業法第22条1項 |
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建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。 引用:建設業法第22条2項 |
また、建設業法では下請業者間の一括下請負も禁止しています。
■責任の所在が不明確になるリスク
建設業において一括下請負(丸投げ)が禁止される理由の1つは、責任の所在が不明確になるリスクがあるためです。工事を一括して下請けに任せてしまうと、元請業者が工事の進行や品質を直接管理しなくなり、何か問題が発生した際に誰が責任を持つべきか分からないという状況に陥る可能性が高まります。
例えば、工事の途中で不具合が発生した場合や完成後に瑕疵が見つかった場合に、元請業者と下請業者の間で責任の押し付け合いが起こりやすくなります。問題の解決が遅れ、最終的には発注者に大きな迷惑をかけることになるでしょう。
さらに、責任の所在が不明確なままでは、工事の品質管理や安全管理が不十分になりがちです。元請業者が直接管理しないことで、下請業者が適切な品質基準を満たさないまま工事を進めるリスクが高まります。
このようなリスクを回避するために、建設業法では一括下請負を禁止し、元請業者が工事の各段階で適切な管理と責任を果たすことを求めているわけです。
■品質低下や情報漏えいの防止
建設業において一括下請負が禁止される理由の1つとして、品質低下の防止があります。
工事の全体を下請業者に丸ごと任せてしまうと、元請業者が工事の進捗や品質を直接管理することが難しくなり、結果として品質の低下を招く可能性が高まります。さらに、工事に関する情報が適切に管理されないと、機密情報の漏えいや不正行為の発生リスクが増加します。
3. 一括下請負が例外的に認められるケース
民間工事で発注者の事前承諾を得ている場合、例外的に一括下請負が認められます。(建設業法第22条3項)
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前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。 引用:建設業法第22条3項 |
ただし、共同住宅を新築する建設工事については、発注者の事前承諾があっても一括下請負は禁止です。また、公共工事においては、一括下請負が例外なく禁止されています。
■民間工事で発注者の事前承諾を得ている場合
一括下請負は建設業法により禁止されている行為ですが、民間工事において発注者がその内容を理解し、かつ了承している場合には例外として認められます。
ただし、発注者の承諾は、口頭ではなく書面や情報通信技術(オンラインや電子メールなど)で得る必要があります。
また、民間工事で発注者の事前承諾を得ている場合でも、共同住宅を新築する建設工事については、一括下請負は禁止です。
■公共工事では例外なく一括下請負が禁止
公共工事においては、一括下請負が例外なく禁止されています。(公共工事入札契約適正化法第14条)
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公共工事については、建設業法第二十二条第三項の規定は、適用しない。 |
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前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。 引用:建設業法第22条3項 |
4. 建設業法違反による罰則
建設業法に違反すると、以下のような行政処分の対象となる可能性があります。
- 指示処分
- 営業停止処分
- 許可取消処分
■指示処分
建設業法違反による1つ目の行政処分は、指示処分です。(建設業法第28条2項)
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都道府県知事は、その管轄する区域内で建設工事を施工している第三条第一項の許可を受けないで建設業を営む者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該建設業を営む者に対して、必要な指示をすることができる。 一 建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。 二 請負契約に関し著しく不誠実な行為をしたとき。 引用:建設業法第28条2項 |
指示処分は、建設現場での安全基準が守られていない場合や書類の提出が遅れた場合など、違反行為が比較的軽微であり、改善の余地があると判断された場合に適用されます。指示処分を受けた場合、指定された期間内に改善計画を提出し、実行することが重要です。
指示処分は行政からの警告とも言える措置であり、業者にとっては法令遵守の重要性を再認識する機会でもあります。指示処分を受けないようにするためには、日頃から法令の改正や新たなガイドラインに目を向け、社内での情報共有や教育を徹底することが重要です。
■営業停止処分
建設業法違反による2つ目の行政処分は、営業停止処分です。(建設業法第28条3項)
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国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第一項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項若しくは次項の規定による指示に従わないとき又は建設業を営む者が前項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、一年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。 引用:建設業法第28条3項 |
営業停止処分が下されると、一定期間、業務を行うことが禁じられます。例えば、無許可で建設工事を行った場合や、重大な法令違反があった場合に、営業停止処分が適用されることがあります。営業停止の期間は違反の内容や程度によって異なりますが、数週間から数か月に及ぶこともあるようです。営業停止処分は、企業の存続にかかわる重大な問題であるため、法令をしっかりと理解し、日常業務においてコンプライアンスを徹底することが求められます。
国土交通省の建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準によると、一括下請負の禁止規定に違反した場合の罰則として、15日以上の営業停止が規定されています。
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建設業者が建設業法第22条の規定に違反したときは、15日以上の営業停止処 分を行うこととする。ただし、元請負人が施工管理等について契約を誠実に履行し ない場合等、建設工事を他の建設業者から一括して請け負った建設業者に酌量すべ き情状があるときは、営業停止の期間について必要な減軽を行うこととする。 |
■許可取消処分
建設業法違反による3つ目の行政処分は、許可取消処分です。(建設業法第29条)
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国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。 引用:建設業法第29条 |
許可取消処分は建設業法における最も重い行政処分であり、無許可での工事受注や名義貸しなどの重大な法令違反が繰り返された場合、許可取消処分が下されることがあります。
最悪の事態を避けるためには、建設業法をしっかりと理解し、法令遵守を徹底することが不可欠です。許可取消しという厳しい処分を受けないためにも、日々の業務において法令遵守を心がけ、事業の健全な運営を目指しましょう。
5. まとめ
今回は、建設業における一括下請負が例外的に認められる条件や罰則について解説しました。
建設業においては一括下請負が法律で禁止されており、違反すると指示処分や営業停止処分、許可取消処分が科せられます。本記事で解説した一括下請負に該当するケースや例外的に認められる条件を参考に、法律を守りつつ積極的に事業を進めていきましょう。
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