個人情報保護法に違反するとどのような罰則を受けるのかと心配になる方もいるのではないでしょうか。個人情報保護法に違反した法人には1億円以下の罰金が課される恐れがあるため、個人情報の取り扱いに関して正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、個人情報保護法に違反した際に適用される罰則と対策について詳しく解説します。
1. 個人情報保護法とは
個人情報保護法は、企業や団体が個人情報を取り扱う際に、どのように個人のプライバシーを守るかが定められている法律です。個人情報を収集、利用、提供する際には、本人の同意を得ることや、情報の漏えいを防ぐための安全管理措置を講じることが求められます。個人情報保護法を遵守することにより、個人情報の不正な利用や漏えいを防ぎ、情報主体である個人のプライバシーを守ることができるわけです。
情報社会の発展とともに個人情報の漏えいや不正利用といったリスクが高まる中で、個人情報保護法は個人の権利を守るために重要な役割を果たしています。
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■個人情報保護法の目的
個人情報保護法の目的は、個人の権利と利益を保護することにあります。
個人情報とは、氏名や住所、電話番号など特定の個人を識別できる情報です。個人情報保護法は、個人情報が不正に利用されたり、漏えいしたりすることを防ぐためのルールを定めています。例えば、個人情報保護法で企業が収集した個人情報を目的外で利用することを禁止することで、個人のプライバシーが侵害されるリスクを軽減するわけです。
また、個人情報保護法は、情報を取り扱う企業や組織に対して、情報の漏えいを防ぐためのセキュリティ対策を講じるなど、適切な管理体制を整えることを求めています。
■過去の改正内容
個人情報保護法は2003年に制定、2005年に全面施行された後、数回の改正が行われています。
2015年の改正では、個人情報の定義が明確化されるとともに、匿名加工情報の概念が導入されました。この改正は、特定の個人を識別できない形で情報を利用することを可能にするもので、ビッグデータの活用を促進するための措置です。
さらに、2020年の改正では、個人情報の漏えいが発生した際に、速やかに個人情報保護委員会へ報告することが義務づけられました。この改正は、情報漏えい時の迅速な対応を促すことで、被害の拡大を防ぐことを目的としています。
2. 個人情報保護法の罰則
個人情報保護委員会による命令に違反した場合、個人に対しては1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(個人情報保護法第178条)、法人に対しては1億円以下の罰金(個人情報保護法第184条)が課される可能性があります。
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第百四十八条第二項又は第三項の規定による命令に違反した場合には、当該違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。 引用:個人情報保護法178条 |
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法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、次の各号に掲げる違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。 一 第百七十八条及び第百七十九条 一億円以下の罰金刑 二 第百八十二条 同条の罰金刑 引用:個人情報保護法184条 |
また、業務で取り扱った個人データベース等を盗用・不正に第三者へ提供した場合、個人に対しては1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(個人情報保護法第179条)、法人に対しては1億円以下の罰金(個人情報保護法第184条)が課される可能性があります。
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個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。第百八十四条第一項において同じ。)である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。 引用:個人情報保護法179条 |
さらに、個人情報保護委員会に虚偽の回答をしたり、立ち入り検査を拒否・妨害したりした場合、50万円以下の罰金(個人情報保護法第182条)が科される可能性があります。
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次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。 一 第百四十六条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。 二 第百五十三条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。 引用:個人情報保護法182条 |
3. 個人情報保護法違反となる主なケース
個人情報保護法違反となる主なケースは以下の通りです。
- 目的外での利用
- 不適切な利用
- 不正な手段による取得
- 委託先の監督義務違反
- 報告・通知義務違反
- 虚偽の報告・立入検査拒否
それぞれのケースについて詳しく解説します。
■目的外での利用
個人情報保護法では、個人情報を収集した際に明示した利用目的以外でその情報を利用することが禁止されています。
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個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。 引用:個人情報保護法18条1項 |
例えば、サービス改善を目的に顧客から取得した情報を、本人の同意なしに宣伝目的で使用することは、目的外利用に該当します。
目的外利用を防ぐためには、情報の取得時に明確な利用目的を設定し、社員に対してその目的を周知徹底することが重要です。
■不適切な利用
個人情報保護法では、違法又は不当な行為を助長・誘発する恐れがある方法で個人情報を利用することが禁止されています。
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個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。 引用:個人情報保護法19条 |
具体的には、以下のような行為が不適切な利用に該当します。
- 差別や不当な扱いを助長する利用
- 違法・犯罪行為に繋がる利用
- 適切な同意のない利用
■不正な手段による取得
個人情報保護法では、不正な手段で個人情報を取得することが禁止されています。
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個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。 引用:個人情報保護法20条1項 |
個人情報保護法では、個人情報を取得する際には、その利用目的を明確にし、正当な方法で取得することが求められています。不正な手段による個人情報の取得は、個人のプライバシーを侵害するだけでなく、重大な違反行為です。不正な手段による取得に対する個人情報保護委員会の措置命令に違反した場合、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が課される可能性があります。(個人情報保護法第178条)
■委託先の監督義務違反
個人情報保護法では、個人情報を取り扱う業務を外部に委託する際に、委託先に対して適切な監督を行うことが義務付けられています。
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個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。 引用:個人情報保護法25条 |
委託先が個人情報を不適切に扱った場合、法的な罰則を受けるだけでなく、責任の一部を委託元も負う可能性があります。個人情報を取り扱う業務を委託する際には、委託先の選定や契約内容の見直し、定期的な監査を通じて、個人情報の適切な管理を徹底することが重要です。
■報告・通知義務違反
個人情報保護法では、個人情報の漏えいや不正利用が発生した場合に、速やかに個人情報保護委員会や関係機関へ速やかに報告し、本人に通知することが義務づけられています。
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個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。ただし、当該個人情報取扱事業者が、他の個人情報取扱事業者又は行政機関等から当該個人データの取扱いの全部又は一部の委託を受けた場合であって、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を当該他の個人情報取扱事業者又は行政機関等に通知したときは、この限りでない。 引用:個人情報保護法26条 |
報告義務は、個人情報が不正に利用されたり漏えいした場合に、被害を最小限に抑えるために設けられています。個人情報漏えいが発生したにもかかわらず、適切な報告を怠った場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。(個人情報保護法第178条)
報告義務違反を防ぐためには、まず、個人情報が漏えいした際の社内ルールを明確に定め、従業員全員に周知徹底することが重要です。定期的に訓練を行い、緊急時の対応を迅速に行える体制を整えましょう。
■虚偽の報告・立入検査拒否
個人情報保護委員会に対して虚偽の報告をしたり虚偽の資料を提出したりすると、五十万円以下の罰金が課される可能性があります。立入検査を拒否したり、妨げたりした場合も同様です。
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次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。 一 第百四十六条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。 二 第百五十三条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。 引用:個人情報保護法182条 |
4. 個人情報保護法の罰則以外の違反リスク
個人情報保護法に違反すると、罰金が課されるだけでなく以下のようなリスクが発生する恐れがあります。
- 違反事実の公表による信頼性の失墜
- 損害賠償請求の可能性
それぞれのリスクについて詳しく解説します。
■違反事実の公表による信頼性の失墜
個人情報保護法に違反した場合、個人情報保護委員会が違反内容を公表する場合があります。
違反事実の公表は報道機関によって広く報じられることもあり、企業のイメージが損なわれるだけでなく、ブランド価値の低下にもつながるかもしれません。インターネットやSNSを通じて情報が瞬時に拡散される現代において、一度公表された情報は長期間にわたって残り続けます。そのため、企業は一度の違反が長期的な影響を及ぼすことを認識し、慎重に対応する必要があります。
■損害賠償請求の可能性
個人情報を不適切に取り扱ったことで個人が被害を受けた場合、被害者が企業に対して損害賠償を請求する可能性があります。
個人情報が漏えいしたことによって個人が被る損害には、経済的損失や精神的苦痛があります。例えば、クレジットカード情報が流出した場合、被害者は不正利用による金銭的損害を被るかもしれません。また、プライバシーが侵害されたことによる精神的苦痛も訴訟の対象となることがあります。
企業にとって損害賠償請求は、金銭的負担だけでなく、社会的信用の失墜を招く恐れがある重大な事態です。こうしたリスクを避けるためには、法令を遵守し、個人情報を適切に管理する必要があります。
5. 個人情報保護法の罰則を受けないために企業が取るべき対策
個人情報保護法の罰則を受けないために企業が取るべき対策は以下の4つです。
- 従業員教育の徹底
- 内部ルールの適切な設定
- セキュリティ対策の最新化
- 弁護士への相談
それぞれの対策について詳しく解説します。
■従業員教育の徹底
企業が取るべき1つ目の対策は、従業員教育の徹底です。
従業員が個人情報の基本的な取り扱いのルールを知らないままでは、うっかりしたミスで個人情報保護法に違反してしまうかもしれません。
具体的な教育方法としては、最新の改正内容や実際の違反事例を共有できる、定期的な研修やセミナーの開催があります。また、従業員が自分のペースで学ぶことができる、eラーニングの導入も効果的ですさらに、日常業務に即した具体的なシナリオを用意し、実践的なトレーニングを行うことで、実際の業務においてどのように個人情報を扱うべきか、具体的なイメージを持つことができます。
■内部ルールの適切な設定
企業が取るべき2つ目の対策は、内部ルールの適切な設定です。
内部ルールを設定する際には、法令やガイドラインを基にした具体的な方針を明確にすることが求められます。また、従業員に対して定期的に周知し、全員が理解していることを確認することも重要です。
さらに、内部監査を定期的に実施し、ルールが適切に運用されているかをチェックすることも欠かせません。不備が見つかった場合は、速やかに改善策を講じるようにしましょう。
■セキュリティ対策の最新化
企業が取るべき3つ目の対策は、セキュリティ対策の最新化です。
個人情報を扱う企業にとって、セキュリティ対策の不備は情報漏えいのリスクを高め、法的な罰則や企業の信用失墜にもつながります。
個人情報保護法における罰則を回避するには、ファイアウォールやウイルス対策ソフトのアップデート、暗号化技術の導入など、最新のセキュリティ技術を積極的に導入することが欠かせません。クラウドサービスを利用している場合は、サービス提供者のセキュリティ体制も確認することも重要です。
■弁護士への相談
企業が取るべき4つ目の対策は、弁護士への相談です。
個人情報保護法は複雑であり、定期的に改正されることもあるため、専門家の助言を受けることで法令遵守を確実にし、罰則を回避することができます。弁護士に相談すれば、最新の法改正や判例を基に、企業の特性に合わせた具体的な対策を提案してもらえます。さらに、万が一情報漏えいが発生した場合でも、弁護士のサポートを受けることで迅速に対応でき、被害を最小限に抑えることができます。
6. まとめ
今回は、個人情報保護法に違反した際に適用される罰則と対策について解説しました。
個人情報保護法に違反した法人は、最大で1億円以下の罰金が科される場合があります。法令を遵守し、信頼を築くためには、どのような行動が法律違反になるのかを把握しておくことが重要です。本記事で解説した罰則と対策を参考に、定期的な情報管理の見直しや社内研修の実施を行いましょう。
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