取適法(下請法)における役務提供委託とは?契約の種類や注意点を解説

役務提供委託には取適法(下請法)が適用されるため、提供するサービスが役務提供委託に該当するのか、該当する場合にはどのような点に注意すべきかを確認しておきましょう。

本記事では、取適法(下請法)における役務提供委託の具体例や契約の種類、注意点について解説します。

1. 役務提供委託とは

役務提供委託とは、役務の提供を「業として行う」事業者が、「役務の提供の行為の全部または一部」を他の事業者に再委託することです。取適法第2条4項で以下のように定義されており、取適法(下請法)の資本金基準または従業員基準を満たす事業者が役務提供委託を行う場合には取適法(下請法)が適用されます。

 

この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。


引用:取適法第2条4項

 

具体的には、コンサルティング会社が請け負ったコンサルティング業務の全部または一部を他の事業者に委託する場合が、役務提供委託に該当します。

一方、コンサルティング会社が自社のために実施するコンサルティング業務を他の事業者に委託する場合は、役務提供委託には該当しません。

また、委託する取引が役務提供委託に該当する場合であっても、事業者が取適法(下請法)の資本金基準と従業員基準を満たしていない場合、取適法(下請法)は適用されません。

 

■「業として行う」とは

「業として行う」とは、反復継続的に事業を独立して行うことです。「業として行う」に該当するかどうかの判断基準には、事業の頻度や規模、収益性などが含まれます。例えば、週に数回のペースでサービスを提供し、それが一定の収入源となっている場合は「業として行う」と見なされることが多いです。

一方、自社で利用するためだけの目的(自家使用)で外部に委託する業務については、反復継続していても「業として行う」には該当しません。

 

■「役務の提供の行為の全部または一部」とは

「役務の提供の行為の全部または一部」とは、事業者が「業として行う」業務の全部または一部を、外部の事業者に委託することです。「役務」は特定の業務やサービスの提供を指します。

例えば、清掃業者が外部の事業者から業務を請け負った際に、自社で請け負った業務のすべてを行うのではなく、一部を別の事業者に委託した場合、役務提供委託に該当するわけです。

 

■再委託とは

再委託とは、元の契約者が受けた役務提供の一部または全部を、第三者に再び委託することを指します。つまり、元の契約者が自ら役務を提供せずに、他の業者にその役務を行わせるわけです。再委託が行われる背景には、専門的な技術・リソースが不足している場合や、プロジェクトの規模が大きく一社では対応しきれないといった状況があります。

再委託を行う場合には、一般的に元の契約者が最初の発注者に対して再委託の許可を得る必要があります。これは、発注者が再委託を望まない場合や、特定の条件下での再委託が禁止されている場合があるためです。無断で再委託を行ってしまうと、契約違反となる可能性があります。

 

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■取適法(下請法)が適用される取引のひとつ

役務提供委託は、取適法(下請法)が適用される取引のひとつです。取適法(下請法)が適用される取引には、役務提供委託以外にも製造委託や修理委託、情報成果物作成委託などがあります。

取適法(下請法)が適用される役務提供委託を行う事業者には、以下の4つの義務と11の禁止行為が定められています。

 

委託事業者の義務の4つの義務

  1. 発注内容等を明示する義務
  2. 取引に関する書類等を作成・保存する義務
  3. 支払期日を定める義務
  4. 遅延利息を支払う義務

委託事業者が遵守すべき以下の11の禁止行為

  1. 受領拒否
  2. 製造委託等代金の支払遅延
  3. 製造委託等代金の減額
  4. 返品
  5. 買いたたき
  6. 購入・利用の強制
  7. 報復措置
  8. 有償支給原材料等の対価の早期決済
  9. 不当な経済上の利益の提供要請
  10. 不当な給付内容の変更・やり直し
  11. 協議に応じない一方的な代金決定


2. 役務提供委託と製造委託・情報成果物作成委託との違い

役務提供委託は、運送や倉庫管理、情報処理などサービスの提供を他者に委託することを指します。一方、製造委託は物品の製造を他者に依頼する契約で、情報成果物作成委託はソフトウェアやデザインなどの成果物を作成する契約です。

この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくは専らこれらの製造に用いる金型、木型その他の物品の成形用の型若しくは工作物保持具その他の特殊な工具又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又は専らこれらの製造に用いる当該型若しくは工具の製造を他の事業者に委託することをいう。


引用:取適法第2条1項

 

この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。


引用:取適法第2条3項

 

製造委託や情報成果物作成委託との違いは、委託する内容が「物」なのか「サービス」なのかです。製造委託では具体的な製品が納品されるのに対し、役務提供委託ではサービスの提供が成果物となります。情報成果物作成委託では、物理的な製品ではなく、デジタルデータやデザインといった情報が成果物として納品されます。

 

例えば、データの入力を依頼する場合は役務提供委託に該当しますが、ソフトウェアやアプリの開発を依頼する場合は情報成果物作成委託に該当するわけです。

 

 

3. 役務提供委託の対象外になるケース

役務の提供を「業として行う」事業者が「役務の提供の行為の全部または一部」を他の事業者に委託する場合であっても、すべてが役務提供委託の対象となるわけではありません。

役務提供委託の対象外になるケースは以下の2つです。

  • 建設工事
  • 自家使用

それぞれのケースについて詳しく解説します。

 

■建設工事

建設業法第2条2項に規定された建設工事は、役務提供委託の対象外です。(取適法第2条4項)

 

この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。


引用:建設業法第2条2項

 

なぜなら、建設工事の下請については建設業法で保護されているからです。ただし、建設業法が適用されない建設工事の取引については、取適法が適用される場合があります。

 

■自家使用

自家使用を目的をとして外部に委託する業務については、役務提供委託の対象外です。

自家使用とは、企業や個人が自身のために業務やサービスを使用することを指します。

例えば、企業が自社内で使用するためにシステムを開発したり、社内の清掃を行ったりする場合が該当します。これらは、他者に役務を提供するのではなく、自社内で完結するため、役務提供委託の範疇には入りません。

 

 

4. 取引に取適法(下請法)が適用される基準

取引に取適法(下請法)が適用されるかどうかは、取引の性質や事業者の資本金、従業員数に基づいて判断されます。

 

■取引の性質

取適法(下請法)が適用される取引は以下の5つです。

  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託
  • 役務提供委託
  • 特定運送委託

2026年1月に施行された下請法改正で特定運送委託が取適法(下請法)の対象取引となり、金型の製造委託だけでなく木型や治具などの製造委託も対象取引となっています。

建設工事や自家使用目的の委託は役務提供委託に該当しないため、取適法(下請法)が適用されないわけです。

 

■資本金要件

資本金要件とは、親事業者と下請事業者の資本金の額に基づいて、取適法(下請法)の適用対象かどうかを判定する基準です。

取適法(下請法)の適用基準は以下の通りです。

 

製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に係るものの場合

委託事業者

中小受託事業者

  • 資本金3億円超
  • 資本金1,000万円超3億円以下
  • 資本金3億円以下の法人
  • 資本金1,000万円以下

 

情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、上記以外の場合

委託事業者

中小受託事業者

  • 資本金5,000万円超
  • 資本金1,000万円超5,000万円以下
  • 資本金5,000万円以下
  • 資本金1,000万円以下

 

■従業員数基準

2026年1月に施行された下請法改正で、資本金に加え従業員数も基準として追加されました。取適法(下請法)の適用基準は以下の通りです。

 

製造委託・修理委託・特定運送委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に係るものの場合

委託事業者

中小受託事業者

常時使用する従業員300人超

常時使用する従業員数が300人以下

 

情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、上記以外の場合

委託事業者

中小受託事業者

常時使用する従業員100人超

常時使用する従業員100人以下

 

 

5. まとめ

今回は、取適法(下請法)における役務提供委託の具体例や契約の種類、注意点について解説しました。

役務提供委託は、取適法(下請法)が適用される契約形態です。役務提供委託を締結している委託事業者は、取適法(下請法)で要求される義務と禁止行為を正しく理解し、適切に対応することが求められます。

 

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